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ネットフリックス「極悪女王」 感想 すべてが最高!!(個人的に)日本のドラマで数10年ぶりに感動した9つのポイント

どうも。

今、日本でこれ、話題ですよね。そして、僕もこれ、早速見ました。

もちろんこれです!

はい。Netflixの大ヒット作ですね。「極悪女王」。これ、見ましたけど

もう、めっちゃくちゃ、面白すぎる(笑)!!!


いや〜。これ、金曜の夜から日曜の朝にかけて一気に全5話、畳み掛けて見たんですけど、「もう1回見ろ」と言われたら喜んでやりたいくらい好きですね。ものすごく中毒性ありますよ、これ!

たぶん、これを読んでいる方のなかには、普段洋楽とか海外カルチャーの話しかしてない僕が日本のドラマについて語ることについてのギャップを感じるかたもいらっしゃるかもしれません。何を隠そう、このnoteで日本のドラマについて語るのはこれがはじめてです。その僕がなぜ「極悪女王」にハマったか。これについて、ここでは語っていくことにしましょう。

僕はですね、もとはといえば映画よりテレビドラマ、しかも日本のテレビドラマの大ファンだったんですよ。就職も音楽よりもテレビドラマ作りたかったくらいに、実は。で、ドラマの製作会社の内定もいただいていたりしたほどだったりするんですよ。それがどこかは、この中で語っていきますけどね。

で就職先もテレビ局だったんですけど、配属先がFMになってから音楽ベッタリになった、というのもあるんですけど、ドラマが非常にダメな時代でね。90年代前半のトレンディ大全盛で。僕が70~80年代に憧れたような日本のドラマ作るような感じなんてあのときどこにもなかった。それで興味失って全然見なくなって。テレビ局にいた時代にテレビ見なくなったって皮肉なんですけど、それくらい僕には芸能界とかドラマとか魅力的に映らなくなってて、それは会社辞めたあとの00年代も全く一緒で。2010年にブラジル移ってからは日本のテレビを見る機会さえ全くなかったから、もう完全なる浦島太郎ですよ。

ただ、その間、日本の映画を見る機会が少しだけあって、それが「万引き家族」と「ドライブ・マイ・カー」だったんですけど、素直にすごくいいなと思ったんですね。特に浜口竜介さんにはすごくハマって、その前の「スパイの妻」やそのあとの「悪は存在しない」も見て、「すごく題材になりにくいものを作る斬新な人なんだな」と感心すると同時に、そこにドラマツルギーを見いだしてしっかり普遍的な劇にしてしまうのがなんか素敵だなあなんて思って。それで、ちょっと見直してたとこだったんですね。

ただ、「日本のドラマ」ってそれでも見る気しなかったんですよね。なんでかというと、もう直感的に「シノシプス聞いただけで見たいと思わない」。もう、これがズバリなんですよ。「日本のドラマ関係者の人って、今のアメリカの映画とかドラマでどういうのが作られてるのか知ってる?なんか僕自身が見たいと思うような映画と全く接点がないんだけど」と思っていたら

ネットフリックスでダンプ松本とクラッシュ・ギャルズを描いたドラマをやる


と聞いたときに、「あっ、そういうこと。見たかったのはそういうんだよ!」と思ったんですよね。

というのは、ここ10数年のアメリカの映画、ドラマの傾向なんですけど

①ポップ・カルチャー的によく覚えられて語られる出来事は洋画や海外ドラマの題材的に人気


スポーツだけでもざっとこれくらい思いつきますもんね。あと、エマ・ストーンがテニスのビリー・ジーン・キングやったやつとか、ウイル・スミスのヴィーナス・ウイリアムズの親父のやつとか。

で、こういうのの音楽版が「ボヘミアン・ラプソディー」だったりするわけですよ。その他にも音楽ものの伝記もたくさんあるでしょ?

日本だってスポーツとか音楽の有名なアイコンなんてたくさんいるし、それの中からドラマ作れば面白そうな話たくさんあるのになぜ作らないんだろう。そんな風に僕はずっと疑問に思ってきてました。「そういうのは、それに興味のある人しか見ない」。製作現場やプロデューサーたちはそんな風に思い込んでいたのではないでしょうか。でも、それは大きな間違いなんですよね。マニアしか知らないからこそこれからもっと有名にできるポテンシャルがあるのであって、それをわかりやすく紹介できればできるほどヒットにつながるじゃないか。僕はそんな風に思っていました。日本からそういうものが出てこないことにイライラを感じていたこと。これは事実でした。

「これはやり方によっちゃ大ヒットするぞ」。そう思ったからこそ、配信が始まるタイミングから、これ、楽しみだったんです。

で、金曜に早速見たという投稿を見て「プロレス・ファンの自分でもこれはかなり行けた」というのを見たときに「こういう意見が出るということは期待できるな」と思ってみたら

②クレジット見たときに信頼できた

ここが大きかったんですよね。

はっきりいって、これは映画でもそうなんですけど、僕は日本のドラマ、浦島太郎なのでキャスト言われてもほとんどわからないんですね。ぶっちゃけ今回のも事前に知ってた役者さん、現役復帰してたの知らなかった仙道敦子と、UAの元夫の村上淳しか知りませんでした。だから、役者での先入観はほぼゼロでした。

でクレジットを見たときに「監督. 白石和彌」と見たときに「あっ!」と思ったんです。

この人って、僕が浜口竜介を知った際、「今の日本の若手監督で知るべき人、他にいるかな?」と思って検索してるうちに、よくおすすめで出てくる人だったのでメモして残してた人の一人だったんですよね。

「ああ、こういう人が監督してるんだったら良さそうだな」と思って、見るのを進めました。そうしているうちに

③時代描写がかなり正確


ここも感心しましたね。

こういうのをしっかり再現してたでしょ?

こういうのも、アメリカの映画、ドラマでの大定番です。ファッションとか髪型とか曲とか、見たり聞いたりするのだけでも楽しいんです。こういうの欧米の映画ファン、エンジョイするんです。しかもそれがマニアックなものであればあるほど、感性が鋭い人が反応するから、知的なカルト度が上がるんです。ビューティ・ペアなんてもう、ポップ・カルチャーのある意味重箱なんですけど、そういうところがそそるんですよ(笑)。

 しかも出てくる人たちの髪型とか、街並みとか、使ってる小物、ここでは伊東博文の1000円札ですね、かかる曲とか、こういうのに間違いがない。そこも感心したんですよね。だって、そこ、日本の映画、ドラマのすごく弱いとこだから。

なんでか知らないですけど、日本の地上波でやってるドラマなんて特に、「ちょっと前の時代を描いたレトロなドラマ」とかって得意じゃないんですよね。NHKのドラマとかでも古い時代設定は置くけど、カルチャーに焦点を定めたものって少ない。僕は見たことないんですけど、「あまちゃん」というのにそのエッセンスあったようで、その話聞いた時も「だからやればいいのに」と思うんですよね。60年代以降のそういうレトロ・カルチャー、どんどん入れればいいんですよ。人々のカルチャーに関しての教養だって養われるんだから。

今年の初め頃、「不適切にもほどがある」というドラマを見ようとしたんですけど、これがあまりに時代描写に間違いが多すぎて15分と見る気が起きなかった。それもあっただけに「日本はレトロ題材下手くそ」の印象あったんですけど、「極悪女王」はその点、合格なんですよね。

④ストーリーに感じた、まさかのヒップホップ的要素


そして、案の定、「マニアじゃないとよく知らない」題材なわけですから、「へえ〜、そうなんだ〜」という話が知れて面白いわけです。

で、特に僕の興味をそそったのは、ダンプ松本と化す前の松本香と長与千種が最初は親友だったっということですね。で、その二人を結びつけていたのが、家庭崩壊の中で生きてるのも嫌になるような絶望的な生い立ちを背負ってきた者同士だった、ということですよね。

そういうハングリーで絶望的な設定、日本のドラマで昔もありそうで実はあんまりなかったんですよね。よく、「こういう育ちのバックグラウンドが恵まれすぎてるからヒップホップが根付きにくいんだ」みたいなことを言われがちな日本ですが、それを考えるにこれ、女子プロレスの映画ながら、珍しくアメリカのヒップホップのリリックにもハマるようなバックボーンをメインの2人が持っていた、ということにもなるんです。

だから僕、これ見ながら「ああ、まんまヒップホップのリリックで行けるな、これ」と、そういうとこに感心しながら、これを見続けたんですよね。

⑤出演者のわかりやすすぎるキャラ設定


あと、登場キャラクターのキャラ設定。この色分けがめちゃくちゃわかりやすくて、初めて見る人にも、それだけで当時の女子プロレス界を理解したような気にさせるんですよね。

例えばクラッシュ・ギャルズだったらライオネス飛鳥は同期入団者の中では圧倒的に実力的にも優等生で、理性的判断で「正しいもの」を求めるお姉さんタイプで、長与千種は曲がった事が大嫌いな一本気で純粋。それがゆえに対立も多いんだけど、結局はその熱意で理解させ、それが人気を呼ぶことにもなる。

ビューティペアのジャッキー佐藤は、神聖不可侵な、けだかく優しい女王様。今の感覚で言うならビヨンセみたいな感じです。

ビューティとクラッシュの間の時期に挟まれた、実は本当は一番強いかもしれないのにキャラが地味なゆえに損をした悲運のジャガー横田。

女子プロレス界が一般に持たれがちなオラオラした不良っぽさのある意味象徴でもあった、ダンプの悪役の先輩でもあるデビル雅美。これ演じた人、すごくうまかったですね。

松本香同様、同期の中で遅れをとっていた立場から、ダンプ覚醒で取り残されたような複雑な立場に追い込まれてしまったクレーン・ユウ。この人の演技も良かったんですよね。

こういうキャラ設定があるから、知らない人でも「自分だったらこの人」という、いわば推しを作りやすい。この感じなんて、まさに推し文化の今らしくていいじゃないですか。

さらに扱い小さいんですけど、のちに大物になるブル中野が「実はこんな人だった」というネタみたいな出方してるのもトリビア的で面白いです。僕はたまたま知ってましたが、知らない人からすれば結構衝撃的な話ではありますからね。

⑥ゆりやんの歴史的大変身

そしてなんと言っても、主演のゆりやんですよね。

何せ

この変貌ですからね!!

これに関しては写真でもある程度は変化わかりますけど、こればっかりはもうどれくらい変わったかは見てみないとわかりません。

僕は実はゆりやんはこのドラマ見るまで全く知らなかったんですね。お笑いの人と聞いて幾つか動画見たんですけど、この変身前のイメージしかない。まさかこの人がダンプ松本を演じられるか、疑問だった人、多かったんじゃないでしょうか。

だけど、それをものすごい再現度で実現させてしまった。何の先入観もないんですけど、もう、この演技見るだけで、この人の才能が普通じゃないことはしっかりわかりました。というか、これがなかったらこのドラマ、全て成立しなくなる肝の部分だったのに、あまりに完璧に演じすぎて、実世界でのダンプ同様、彼女が食ってしまっているのはそれだけで大成功ですね。

⑦だんだんリアルさが増してくるプロレス・シーン


そして、見れば見るほど、世間的な注目度の高い試合になっていき、その都度リアリティと臨場感がグイグイ上がっていくのがこのドラマの真骨頂でもあります。

そこの盛り上げは

本家に本当にそっくりに演じてしまったクラッシュ・ギャルズですね。彼女たちの演技がものすごくリアルだったんですよね。

演じた剛力彩芽も唐田えりかも、「なんでこんな細身の人たちが」と言われてて、さらにスキャンダル持ちで立場は苦しかったとか。そこを、これは非常に多くの人が皆指摘するんですけど、しっかりプロレス演技になってましたからね。僕なんて素人だから何の違和感もなく見入ってしまいましたよ。

とりわけ唐田さんはみんなビックリだと言いますね。一番評価が上がったとも。確かにクラッシュの2人、さらにダンプとの2人と、2つケミストリーを起こさねばならなかった立場ですからね。彼女がうまく機能したのも大きかったと思います。

そして

実況の役の人が、あの当時に実況していた志生野アナウンサーの完璧なモノマネしてたのもツボだったんですよね。僕はプロレスより「ビックリ日本新記録」の実況での方が馴染みあったんですけど、すごく上品な語り口でよく覚えてます。この丁寧な語り口と流血シーンのギャップが激しいのが笑えてね(笑)。「昭和って、こうだったんだな」と云う気づきにもなりましたね。

⑧松永兄弟のいかがわしさと、それに対しての決着


あと、このドラマはすごくフェミニズム観点からも見れます。時代設定ってまだ男女雇用機会均等法の前の時代に、そこで強い女子レスラーってことで人気が出た要素もあったような気もします。

ただ、そんな産業を支えていたのが

この松永3兄弟。これがロクでもない上に、とにかくいかがわしい(笑)。とにかく女子レスラーたちを自分たちのビジネスにすることしか考えてなく、とても女性に気を使ってるなどとも言えない。一番ひどいのは、一番下の弟の俊国ですね。まあ、最初の女性パンクバンドのランナウェイズにもキム・フォーリーってロクでもないマネージャーいましたけど、「女性最初の」でビジネスする男って悲しいけど、こういうものなんですよね。

そういう環境の中、全日本女子プロレスの所属レスラーたちもどんなに強くても「いつかは捨てられる」と明るい未来を持てないままでいる。このドラマは、そこのところにもしっかりと答えを出してるんですよね。そこの糸口の見せ方がすごくフェミニスト的で、今に、とりわけ女性にアピールするものになっています。

ただ、この兄弟の中で一人だけリスペクトをもって描かれてる人がいます。そこんとこは監修に当たった彼女たちの本音が出たか。この3兄弟がみんな今はこの世にいないことでできたことだとも思いますけどね。

あと

当時は悪役レフェリーとして嫌われたはずの阿部四郎さんが実はダンプの早くからのよき理解者で、人生にとって重要なアドバイスを送ってた人だった、というのも結構泣かせるポイントでもあるんですよね。

⑨やはり思い出すのは大映テレビ

そして、全体を見て、やはりどうしても思い出すのはこれですよ

大映テレビ!!

これ、絶対、製作者、意識にあったと思いますよ。それこそダンプやクラッシュが活躍したのが1984年から5年くらい。大映テレビのドラマの全盛期とそっくりそのまま重なるんだもん(笑)。

すごくオラオラで荒れる中、悲しい境遇で育ったヒロインたちが熾烈ないじめにも合いながら成長し、最後には花を咲かせる。これが大映テレビおきまりのパターンでしたけど、極悪女子もストーリー、そのまま合致するんですよね。言うなれば、スクール・ウォーズを不良少女と呼ばれてで性的スワップしてできたような作品というかね。

ちなみに、最初の方で僕が言ってた、「内定もらってたドラマの制作会社」、大映テレビです(笑)。僕が嫌いなはず、ないですよ(笑)。

でも、スレッズで同じく大映に似てると指摘された方がいらっしゃって、その方が言うには日本のNetflixのドラマ、大映カラーがすごく強いんですって。大映の場合は勢いつんのめったシュールな台詞回しとか行き過ぎた誇張もあったりしたものですけど、ただ、主人公の気持ちの推移の丁寧な追い方や、愛憎や友情、逆境からの克己心など、教育的、文学的要素も含んだストーリーの芯の強さはブレずにしっかりしてましたからね。そこをへらへらした世の風潮なんかで消し去ることなどしないでしっかり継承されていくというのはすごくいいことだと僕は思います。









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