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バーベンハイマーの原爆ミームへの抗議は、アメリカ人側となぜ全く噛み合っていなかったのか

どうも。

なんか日本で話題になってましたね。

このブログでも7月20日の週あたりから報じていました「バーベンハイマー」。「バービー」と「オッペンハイマー」、この2つの批評的評価の高い映画で、アヴェンジャーズの「エンドゲーム」以来の興行的大成功を得たという話。続編映画しか当たらないハリウッドの状況に一石を投じるすごくポジティヴなものとして世界の映画ファンの間ではかなり好意的な感じで受け止められてました。

ところが

こうした原爆を茶化しているのかと思えるミームが出回りまして、これに対してワーナーの「バービー」の公式が「忘れられない夏になる」、あるいはキノコ雲を髪型にして「いかしたスタイリスト」なるレスをやっちゃったんですね。

 これが日本人の逆鱗に触れて猛抗議が起きまして、「バービー」の公式が日本人の投稿で荒れまして、日本の公式、さらにアメリカのワーナー本社が謝罪するという事態に出て、

こういう風に海外でのメディアもニュースとして取り上げました。

こういう流れから、「ほらみろ!アメリカなんてポリこれ言うけど大したことないじゃないか!」「日本人をバカにしやがって。世界的な問題だ!」とかとなってる日本の人もネット越しに結構見ました。

が!

海外では、これ、ほとんど話題になってません!

というのは、「ニュースになった」というだけで、反応している人があまりいません。ブラジルでも一つだけ出ましたが、ほとんどスルーの状態でしたから。この抗議をきっかけに、「アメリカの戦争意識はおかしい!」「人でなしなことをする!」なんて世界の人たちが問題意識持って立ち上がるなんてことはなく、ニュースの書き込み欄見ても、日本人が英語の書き込みをしては日本人だけが反応するみたいな空回った光景だけが見られました。

それどころか

反応も、日本の抗議に対して否定的なものが過半数でした・・・。

そう聞くと、「なんだ世界は。白人社会はそんなに人種差別的なのか」と思われるかもしれません。しかし、僕がこれらの反応を分析するに、そんな単純なものではありません。これらの反応を見て、僕自身、すごく学びは多かったものです。

では、なぜこの件がアメリカをはじめとした海外でウケが悪かったのか、そのことに関して語っていこうと思います。

①原爆被害に関してアメリカ政府が国民に徹底して見せないようにしていた


 僕自身、本当は長崎の代わりに二つ目の原爆が落ちるはずだった北九州の出身なので、幼い頃から原爆への意識は高いつもりでいます。なので、今回のミームに日本人が怒り出してからは気になっていました。

 ただですね、別に気になることがあったんですよね。「アメリカ人たちは、なんでこんなに原爆ミームを問題にしないんだろう」という疑問だ。これがもし、日本みたいな原爆教育を施されていたのなら、国内世論でも少しは話題になるでしょうに、そういうのが全くなく、ものすごく気楽にこのミームを楽しんでる感じがしたから。「これ、社会背景に何があるのかな」と思って調べてみたんですよね。

そうしたらですね

ニューズウィークでこんな記事を見つけたんですね。つまり戦後約80年にわたって、アメリカ政府は被曝のイメージを国民に見せないようにし続けていたわけです。

 それに加えて

肌感覚ではありますが、このように、アメリカのほとんどの人たちが、「原爆は戦争を終わらせるために必要だった」と考えていることもわかりました。

 これに関しては、僕自身は必ずしも正しくはないと思っていて。というのは、第二次大戦のそもそもの大敵であったはずのナチスはもう降伏していて、残っていたのは弱りはてた日本だけだったでしょ。もう、敗戦が目の前にあったにも関わらず、効果を知らなかったとはいえ、危険な形で追い打ちをかけて不必要な死者を出した。やっぱ、ここは後世にちゃんと検証しないといけないところです。ただ、さっきも言ったように、政府が徹底して教育レベルで統制しているので、「原爆を受けた状況」というものがわかってないんです。グーグルなどで調べればいいんでしょうけど、そういうのもアメリカではコントロールされてるのかなあ。そこまではわかんないんですけど。

 ただ、さすがにこの教育のされ方だと、アメリカで差別意識なく原爆が扱われるのも無理はないのかなとは思いますね。

騒動になる前、エンターテイメント・ウィークリーみたいな大手エンタメ・メディアまで普通に原爆ミームを記事のサムネに使っていて、それが本国で何の話題にもなってなかったわけですからね。これが普通に国民の意識になってたんですね。

②「ファシズムへの勝利」を優先するアメリカ


あと、日本人だとどうしても第二次世界大戦を日本中心に見る癖があるんですけど、世界全体にしてみたら、中心となるのはやはりナチス・ドイツなんですよね。それはどこの国でもそうで、僕の住んでるブラジルでも同様です。日本を中心に語る第二次世界大戦の本なんてこっちでは見たことないです。欧米基準なら、それが当たり前です。

 ということもあり、世界中にとって、思い出されるのはドイツが真っ先であり、日本を思うことは二の次なんですよね、どうしても。それが国際的に、日本の原爆被害について欧米の人が思うことを減らす一因にもなってますね。だって、他の国の人に日本の原爆被害のイメージあったら、「アメリカは日本になんて酷いことをしたんだ!」と騒いでもおかしくないでしょ。そんな話は聞かないですから。

 とりわけ「打倒ナチス、ファシズム」「地球をファシズムから救った」の意識はアメリカでは強いです。おそらく教育でもそこを優先しているでしょう。そのことは当時の日本に対しても同様です。ドイツ、イタリアと同盟国だったわけですからね。日本人がどんなに「大日本帝國はファシズムとは違う」と主張したところでそれは海外の人には全く通用しません。そしてそれが、「原爆の使用は必要だった」の論につながっているのだと思います。

③日本人の抗議に冷ややかだったアメリカ人の反応の仕方


そして、これが大事だと思うんですけど、原爆ミームに関しての日本人の抗議、これにアメリカ人たちはどう返したか例を見せようと思います。


これが散々です。日本人の書き込み以外はほぼ批判です。たまに「確か終戦近いだろ。思い出してナーヴァスになってるんだよ」とか「わかる」とかは見るんですけど、アメリカを批判する内容のものはほとんど見ません。イギリスのガーディアンの書き込みだと多少「同情」は見られるんですが、それでも積極的に日本を支持するものは見ないですね。

 一番象徴的だったのは、ニューヨーク・タイムスへの、スクショが全部埋まってしまった批判ですね。上から言っていくと「戦争中に日本が俺らにしたことでアメリカは怒ることいっぱいあるぞ。80年も前の話だけどな」「日本はナチスみたいな体制、とらなきゃよかったんだ」「オッペンハイマーが日本に爆弾を落とした?731部隊について聞きたいくらいだな」「オーケー、じゃあ日本兵がアジアに残した傷跡について話すとするか」と、こんな感じです。

 つまり、彼らにとっては「自分たちが戦争を仕掛け、戦争の間酷いこともしておいて、被害だけ声高に叫ぶって何事だ」という心境ですね。

 確かにこれ、気をつけなくてはならないことです。「ナチスの同盟国は世界に迷惑かけた」、これが国際的な共通認識です。だから、基本的にドイツ、イタリア、日本からは第二次大戦に関して、謝ることしか聞きたくない。これが現実のようです。

 だから、日本が自分たちの戦争犯罪を認めた上で、その上でかつ、「それでもあの原爆でウケた日本の傷は大きかったのだよ」という風に言っていくのでないと、相手の神経を逆なでてしまうのです。

あるイギリス人のガーディアンへの投稿でも「日本のホテルで読んだ本では、日本は完全なる戦争の犠牲者みたいなことが書いてあるし、原爆記念館も被害にあったことばかり主張するんだけど、自分たちがしたことには全く触れないんだよな」というのがありました。運悪くAPAホテルに泊まったのだと思うのですが。

 今回の抗議みたいに、怒った調子で食ってかかったりすると、「お前、自分のことを棚に置いて、まだ戦争の反省してないのか。ドイツでもナチスの非を認めてるんだぞ」となってしまい、誤解されてしまいます。いろいろやりとり見てて、ここが最大のすれ違いの要因になっていた気がします。

 アメリカ人たち、「仕方なかった」との教育もされている代わりに、現代史に関しては、下手したら、高校の社会科で現代史教えない日本よりも上手かもしれないレベルです。

④極右による抗議と勘違いされた


 ここも大きいと思います。

 さっきも言ったように、第二次大戦に関しての反省なく、ましてや怒って被害だけを言うと、「ナチの同盟国の大日本帝國を擁護した」となって、即座に極右認定されます。

 ましてや、今、「バービー」というのはアメリカだけでなく、全世界的に進歩的、wokeカルチャーの象徴のように言われている映画です。アンチもいますが、これ、そのほとんどが極右なんですよ。ミソジニーの強いマッチョやインセル、宗教関係者にすごく嫌いな人が多いです。一方でバービーの支持者には女性だけでなく強固なLGBTもついています。

 そういう状態だったので、「バービー」のファンからしてみたら、「抗議をする」というのは「どうせまた極右が言ってんだろ」という風にしかならないんです。それが習慣化してるので。

⑤ミーム文化の理解の問題


あと、今回の騒動に対して「日本人のミーム・カルチャーへの無理解」をあげる人もいますね。

 僕もミームはたまに使いますけど、そんなに詳しいわけではないです。ただ、いろいろな話を総合するに、ミーム、かなりどぎついカルチャーなんですよね。そのきつさが基本、みたいなところがあるようです。

「バービーを911と絡めたら、アメリカ人だって怒るはずだ」と挑発した日本人のミームがあったんですね。

 それに対し、その話題をニュースにした投稿に対し、アメリカのミームやってる人たちから、反応があったんですね。別になんとも思われてなかったのが現実です。その中でウケてた投稿に「これはオフェンシヴ(ムカつかせる)なレベルじゃないな」「日本人が俺らにミームで対抗しようとしてるけど、それはアイルランド人に飲みで対抗しようとするみたいなものだ」というのがありましたね。

 他にも「911でミームを一番作ってるのはアメリカ人だぜ」とか、「違うな。こういう風に作るんだよ」とか見本を見せる人などもいました。

 ここの世界はポリコレ、ほとんど関係なかったようです。

バーベンハイマーのミームに関しては、この方のnoteがすごく的確です。読まれることをお勧めします。

⑥日本の反ポリコレ者たちが焦点をおかしくした


 あと、最近のこのテの話題に共通の現象なんですけど、洋楽とか洋画に対し、こういう「ポリコレ、コンプライアンスの問題」が生じた際に、「アメリカ憎し」の感情だけをぶつけて過剰に騒ぐだけの連中がいて、それが騒ぎを本来の趣旨からそれたおかしな者にしてるんですよね。

特に投稿などを見てても、漫画のエロ表現を保持したい人などにその傾向が強いようですね。

 だから、ネタなんて本当はどうでもよくて、アメリカのポリコレの矛盾を指摘するためには何でもよくてとにかく騒いでやれ、という感じ。それだと話が本筋からずれていくのは目に見えてますよね。


・・という感じですね。

まあ、騒動を通して、いろいろ学びは多かったです。今後、原爆に関して国際的に日本人はどうしていけばいいのかも見えた気がするし。これ、すぐには解決できない問題です。焦って感情的に分からせようとすればするほど、全く逆の印象さえ持たれかねません。「向こうの言いなりになるなんて」みたいな感覚だと、国際的に孤立するだけです。時間をかけて慎重に扱うべき話です。

 そのためには「オッペンハイマー」みたいな反核映画の存在は必要だし、

「戦後78年も経って、初めてなのかよ!」と驚かれるかもしれませんがスミソニアン博物館でも原爆の写真展がようやく初公開されるような段階です。こういうところから徐々に意識が変わるのを待つしかないのかなと思ってます。

 また、それとは別に

バービー、最高の映画ですからね!


 これに関しては、誰がなんと言おうと主張していきます。これを気持ち良くやりたいので、今回の記事で一旦整理して、そこからゴーしようと思っていました。
 




















































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