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「批評的絶賛が理解できないアルバム」って、誰にでも、たまにあったりしないか?

どうも。

今日はこういう話をしましょう。

みなさんには、「批評的には絶賛されてるみたいだけど、自分には何が何でそんなに褒められるのかがわからない」ってアルバムだったり、映画だったりって、あったりしませんか?

僕の場合はですね、「売れてるアルバム」にはそれがたくさんあるんですけど、「批評家が絶賛するアルバム」というのには、実はそれがあまりないんですよね。

なぜかというと、僕の場合、仕事柄、「絶賛されているアルバムの何がいいのかを理解する」という作業を数10年やってきてるので。ヒットしてる作品には、あまりやろうとしませんけどね。ヒットしてるものの場合は、「たまに人々は悪いチョイスをする」と思ってるし、そういう作品は案の定、何年かすれば一気に風化してきています。ただ、「批評的に絶賛の作品」の場合には、それを理解しておかないと、案外それが時代の変換点を表すものだったりする場合があるし、それを理解することで自分の音楽性を広げることができるものだったりします。なので、「自分のためにもなる」と思って、特に20代の時には「理解する」ことを重点的にやってたし、それで広げてきています。30代に入ってもやってましたよ。そういうことを習慣的にやってきてるので、長年のコツでだいぶ「聞き方のポイント」もできてくるんですよね。そういうこともあって、ある時期から、「批評的に絶賛されてて、自分が理解できないアルバム」って、あんまり出てこなくなってたんですよね。「中途半端に評判が高いアルバム」でくらいなら多少はあったんですけどね。ただ、そういうアルバムだと別に、批評媒体の年間ベストの上位に入ってくるようなものではないし、別に良さがわかってなくても問題なかったようなものなので、特に気にしてません。「本当に、その年に凄まじく絶賛されたアルバム」にはわからないアルバムって、ここしばらくなかったんですよね。

それが、つい最近、久々に出てきました。

これですね。

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はい。デュア・リパの「Future Nostalgia」です。

先に断っておきますが、これ、「嫌」ってことはないんです。普通に聴きやすいアルバムではあるかな、とは思うんですよ。でも、「音楽媒体の年間ベストに上がってくるアルバムとか、そういうのではないよな」とは思ってしまうんですね。

ただ、これが驚くほど、批評的評価がいいんですよ、このアルバム。レヴュー総合サイトで見ても、AOTYで86点、Metacriticで89点。

えっ!?

って、感じなんですよね。

僕、この人の場合、デビューの時から、違和感はありましたね。というのは、一見、本格派で売ってるようで、どういうアーティストなのか、いまひとつよくわからなかったから。ぶっちゃけた話、サウンド・プロダクションのどこからどこまでを自分で作ってるのか、それが見えてこないんですよね。

それ、アルバムのソングライティング・クレジットを見ても思うんですけど、彼女の場合、一曲に5人から10人、名前のクレジットがあるんですよね。こういう作品自体は珍しくないんですけど、でも、同じそんな作りでも、例えばビヨンセだと、彼女らしい、一発で聞いて彼女とわかる歌い回しと声がある。テイラー・スウィフトも、初期はそこまで外部で作り込んでもなかったから、彼女らしい曲ってわかる。ガガも、はっきり彼女とわかる曲調がある。あまり上等なものではないですが、ケイティ・ペリーだってセカンド・アルバムは奇跡的にいいいアルバムだったし、そのアルバムじゃなくても「彼女の個性」はわかるんです。

最近ヒットしてるアルバムで見ても、例えばハリー・スタイルズだと、「イギリスの国民的アイドルからロックに脱皮」というポイントで、アイドル・ポップの良さを残しながら、アダルトなロックに移行しようとするアプローチをセカンド・アルバムでしっかり訴えた。そして、他にそんなアプローチをしてる人もいないので、差別化もしっかりできた。だから僕も気に入りました。僕がやたら絶賛したBTSも、曲調は今様のアメリカの流行り物には手を出したけど、それでも3人ラッパーの個性も、タイプの違うヴォーカリストたちの「個人技の良さ」をしっかり殺さないで表現できていたから、「なぜ、彼らがKpopで特別なのか」もはっきりわかるんです。

ただ、デュアの今回のアルバムの場合、そういう「ここが聞くべきポイント」というものがハッキリ見えてこないんですよね。

それを把握しようと思って、絶賛されたレヴュー、英語で読んでみるんですが、これがますますわからない。「優れたコンセプト・アルバムを作った」「レトロなディスコで、この辛い世の中を陶酔的に忘れさせた」みたいなこと書いてあるんですけど、「えっ、そんなアルバム、普通にゴロゴロない?」とか、「他と違って、何がそんなに特別なの?」というポイントが、読んでも全く釈然としないんですよ。

僕が、このように思うのには、この人のバックグラウンドがあまり好きじゃない、というのがあります。それは、この人の所属しているマネージメントですね。この人、NEXTってモデルもマネージメントしている、セレブなとこに所属してます。まあ、それ言ったら、ラナ・デル・レイもビリー・アイリッシュも、そこのLAだったかな、アメリカのブランチに所属してるのでアレなんですが、ラナとかビリーだったら、才能なんて疑いようがないし、アーティスト個性を云々論じる必要がないくらい確立されてるじゃないですか。

ただ、この事務所のロンドン支部が出してきたアーティストのイメージが良くない。この人たちですからね。

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ジェシーJとエリー・ゴールディングですね。彼女たち、このブログの全英、全米チャートを前から読んでる方ならもしかしてわかるかと思うんですけど、チクッとしてきた人たちです(笑)。だって、事務所のゴリ押し以外で売れる理由がわかんない人たちだったんだもん。ジェシーなんて、ロンドン五輪の開会式でのあの目立ち方なんて、「キャリアそんなにないのに、なんで??」だったし、エリーもデパートの年末キャンペーンとか、売れそうなハリウッド映画のタイアップとか、そういうのがなんでか転がり込んでのヒットが目立ってた。いわゆる事務所パワーっていうのがわかりやすく先行してました。デュアは、彼女たちのオシャレ・ヴァージョンみたいな感じなんですけど、匂いが共通してるんですよね。

あと、デュアの経歴もあんまり感心しなくてですね。彼女、youtubeで歌を発表したところからスカウトされて業界入ってるんですけど、そこで歌ってたのがクリスティーナ・アギレラとネリー・フルタードなんですよね。アギレラもネリーも評価はしてるのでアレなんですが、アーティスト・プロフィールにあげるようなタイプのアーティストじゃないじゃないですか。Jポップで言ったら「好きなのは、あゆとaiko」みたいな感じとそんなに変わらないというか。これ、アイドル的なセレブよりも、あわよくば自作自演系のイメージで見せたいタイプのアーティストのプロフィールとしてはなあ。だったら、インディで、自分一人で曲書いてきた才能あふれる女性アーティストを支持しますよ。そんな人、本当にゴロゴロ、たくさんいますからね。

まあ、先ほども言ったように、「今年のワースト」とか、そういう作品ではないんですけどね。「良いと思わない作品」だったら、もっとたくさんあるので。歌に安定感があるだけ、セレーナ・ゴメスのアルバム聴いた時のガッカリ感みたいなものとか、そういうのはないですからね。

もちろん、「僕が気がついてないポイント」というものがある可能性も十分あるので、そこには謙虚でいたいとは思うんですけどね。

ただ、「理解できなかったアルバム」だと、思い返すにこれ以来ですね。

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はい。カーリー・レイ・ジェプセンの「Emotion」ですね。これも、出た時、ものすごい絶賛のされ方だったんだけど、わかんなかったなあ。いくら「アイドルが自作曲や優れた参加アーティストとともに覚醒した」とは言っても、そこまですごい作品だとは思わなかったので。

でも、こっちの方がまだ理解できたんですよね。この前の段階からの飛躍的成長もそうだし、カーリーらしいメロディや歌い回しははっきりわかるし、日本ではヒットしたそうですが、欧米圏ではあまり売れてないのでカルト化しやすいとか、そういうのは理解できますからね。

でも、あって、それくらいかなあ、「わかんない」と思った評価は。グライムスの声は苦手だったんですけど音楽に抵抗はなかったし、最新作はいいアルバムだと思ってるし、僕の専門外だと思ってる極端にエクスペリメンタルなやつとかコア対象のメタルとか(このあたりだと何が名盤なのかもよく知りません)を除けば、本当に絶賛アルバムで違和感感じたのって、そんなにないんですけどね。










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