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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第23回)イギー・ポップ/ザ・ストゥージズ (その2)10位〜1位

どうも。

では、昨日の続き、行きましょう。

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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト、今回はイギー・ポップ/ザ・ストゥージズでお送りしています。今回はいよいよトップ10です。10位から見てみましょう。

10.New Values(1979 US#180 UK#60)

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10位は「New Values」。ボウイのプロデュースでソロとして復活したイギーがボウイから離れて作ったソロの第1弾ですね。皮肉なことに、ここからが彼のスランプの始まりでもあったんですけど、ただ、このアルバムに関して言えば、やはり前2作で撮った杵柄が生きているというか、ライブ・レパートリーの定番の「Five Foot One」みたいな曲がちゃんとあるのがいいです。大傑作でこそありませんが、愛すべきロックンロール作。アフリカン・テイストなんかがひねりの要素としてあるのも良いです。あと、このジャケ写は歴代の彼のものでも、「らしさ」で言えばトップクラスなのも見逃せない要素ですね。

9.American Caesar(1993 UK#43)

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イギーは90sに、とりわけグランジの時代に「パンクのゴッドファーザー」としてかなり再評価が進んだんですが、その真っ只中に出たのがコレですね。このアルバム最大の代表曲である「Wild America」のヒリヒリするような疾走感と叩きつけるような衝動性。そして、かつて「Raw Power」と銘打たれた生々しさといったら!僕はこの曲が、とりわけ90sを過ぎてからの彼最大のロックンロール・アンセムだと信じてます。そうでありながらも、このアルバムがそれ以上に評価できるのは、同時にかなりフォーキーな作品でもあり、ロックンロール一辺倒だけでも必ずしもないこと。でも、ガレージロックにせよフォークにせよ、「余計なものを取り払った素のままのイギー」を映し出されています。「生身のイギーを感じたい向き」にはオススメです。

8.Blah Blah Blah(1986 US#75 UK#43)

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8位は「Blah Blah Blah」。このアルバム、昔は嫌いだったんですよ。「何、このバリッバリッのエイティーズ・サウンドの全開ぶりは!」と、まんまエイティーズを10代で過ごした僕でさえも思いますもん。ただ現在、もうエイティーズ再評価も進んであの当時のアレンジがそれほどダサく響かなくなった今聴くと、いいですよ、これ。確かにプロデュースに当たったボウイもこの時期、「Tonight」と「Never Let Me Down」の間の時期なので、調子いい時期ではないんですけど、ズッシンバッタンのアレンジに目をつぶって曲そのものを聞くと、イギー本来のバリトン・ヴォーカルの深みを生かしたソングライティングのメリハリが効いてて、「ポップなヴォーカル・アルバム」して聞くといいんですよ。その典型が「Cry For Love」ですね。曲そのものは「ビリー・アイドル?」という感じのシンセ・ポップ・ハードロックなんですけど、ここでの厳かで存在感の大きなヴォーカルは、イギーの曲でも、そんなに聞ける瞬間ではありません。あと、カバーではありながらも、イギーのライブの定番となった「Real Cool Child」があるところも見逃せません。

7.Brick By Brick(1990 US#90 UK#50)

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これも傑作ですね。1990年発表のアルバム。これは、この時期売れっ子で勝つ、「渋好み」でありながら「エッジ」も求めるタイプのリスナーに人気のドン・ウォズのプロデュースなんですけど、彼、すごくイギーのアーティストとしての特性、理解してる感じがしますね。まず、ギターの音を前作「Instinct」みたいな密閉感のあるメタル・ギターから引き離して、リズム楽器との間にあるスカスカ感を生かしたものに変えたことがまず一つ。それから、今日まで唯一のイギーの全米ヒットとなった「Candy」ですね。イギーの声の持つセクシーさを引き出して、女性、この場合はB52sのケイト・ピアソンですけど、うっとりするようなロックンロール・ロマンスを聞かせてくれています。イギー、そのあともデボラ・ハリーとかピーチズとか、「パンク女子の理想的なハートスロブ」みたいな感じでデュエット増えるんですけど、これも立派なイギーのポテンシャルです。全体的に無理な誇張もなく、「素のイギー」をナチュラルに伝えた充実作だと思います。

6.Post Pop Depression(2016 US#17 UK#5)

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これは記憶に新しい前作ですね。「こんなにいいイギーは、もう何10年ぶり?」なんて言われ方もされた作品だし、イギー史上、最大のヒット作になりました。それを支えたのがクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョッシュ・ホーミで、彼のプロデュース手腕がすごく巧みなんですよね。QOTSAといえばヘヴィなロックンロールが思い浮かばれがちなんですが、ここでジョッシュが施したのは、ボウイとの共演で生まれた「Te Idiot」の現代版であり、あのアルバムでエレクトロで表現していたところを現在のベースのサウンドで置き換えて、ボウイが乱したイギーの深いヴォーカルによる歌唱はちゃんと生きている。それでいて、ギター・ロックとしてのエッジもちゃんとあって。これ、リリースがボウイの死になったこともあって「葬い作」のイメージも強いんですが、レコーディングそのものはボウイの死の前。「虫が知らせた」という感じなのでしょうか。

5.Fun House/The Stooges(1970)

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もう、上位五枚に関して言えば、順位はあって、ないようなものです。歴史に残ってる名盤ばかりですしね。とりあえず、今の気分で5位はストゥージズのセカンド・アルバムですね。ストゥージズの最初の三枚のアルバムは、ニック・ドレイク最初の三枚と同じくらい、どれがベストかを選ぶのが極めて難しいものではあるんですけどね。このアルバムでは、ファーストにあったサイケなドロドロさをとって、よりストレートな「パンクの原型」を繰り出していますね。それゆえ、より60sのガレージ・ロックから離れてより、その後のパンクに近づいたと見ることは可能だとは思うんですけど、僕が60sのガレージ・ロックのファンなので、その論法はここでは効きません(笑)。でも、これも何度聞いたかわからない愛聴盤。「TV Eye」はいつ聴いても最高です。

4.Lust For Life(1977 US#120 UK#28)

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4位には、今やタイトル曲があまりにもレジェンドになってしまっている、イギーのソロ2作目。この前のアルバムで、エレクトロとロックンロールの融合を狙ったイギーとボウイですが、このアルバムでは、より人間本来の肉感性に迫ったロックンロールを展開してますね。しかもそれは、イギーがストゥージズの頃から展開しているガレージロックではなく、60sのソウル・ミュージックのダイナミズム。ビートのうねりが大きいんですよね。その典型がタイトル曲で、、イントロの「ドンドンドンッ」というティンパニーの音聞くだけでもアガるんですけど、「Some Wired Sin」の、耳にいつまでも残る、フットワークの軽い軽妙なリフもカッコいいんですよね。あと、イギー、そしてボウイにとっての名曲の連打ですね。「Passenger」もあれば、「Tonight」もあってね。

3.Raw Power/Iggy & The Stooges(1973 US#182 UK#44)

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3位は「Raw Power」。これも「爆裂ロックンロール」の代名詞みたいなアルバムですね。これは、1973年当時、「グラムロックの寵児」としてロックシーンで最も熱い視線を受けていたボウイが、不遇な低迷にあえいでいたストゥージズをアメリカで見だしてプロデュース。そこでイギーは、これまで以上に疾走感と破壊力のあるロックンロールを展開。ここでのミキシングをめぐってイギーの不満がくすぶり、のちに修正ミックスが出たことでも伝説化されています。グラムの時代って、3コードのロックンロールの宝庫でもあるんですけど、その時代に出たそれらのものの中でも、これ、やっぱり光りますよ。これが結果的に、この翌年からのニューヨーク・ドールズとかラモーンズにつながること考えても、「パンクの雛形」ですね。曲としても完成度が高く「Search And Destroy」もタイトル曲もあり、その一方でちょっとクールに抑えた「Gimme Danger」みたいな名曲もあるし。

2.The Idiot(1977 US#72 UK#30)

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そして2位は、イギーのソロ名義としてはやっぱりこれになっちゃうかな。ソロ第1弾にして、ボウイとの共作になる「The Idiot」。これは、「ロウ」からいわゆる「ベルリン三部作」という、ボウイのキャリア史上でも最も重要な時期に手掛けたイギーのアルバムで、その影響もあって、エレクトロな音処理をロックンロールに施した、のちのインダストリアル・ロックの先駆けにもなったアルバムです。僕もナイン・インチ・ネールズから遡ってこのアルバムを聴いたクチですけど、その時ほどにはギターの攻撃性などはないものの、逆にアナログ・シンセの生々しい常たいエッジが感じられて、そこに刺激を覚えたものです。加えて、このアルバムから、ボウイがこれまでイギーが生かしきれて中った「低音の美声」を生かすようなプロデュースを初めて、イギーのその後のキャリアにもつながるようなヴォーカル表現を見だしたことでも非常に重要です。あと、名曲の宝庫ですね。「Nightclubbing」’「Fun Time」あたりは何度もカバーされてますし、ボウイ自身がその後に自らカバーしビッグヒットさせた「China Girl」まで、名盤にふさわしい名曲が並んでいます。

1. The Stooges/The Stooges(1969 US#106)

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と、いろいろあるんですが、1位はやっぱり、コレですかね。ロックンロール永遠の名盤、ザ・ストゥージズのファースト・アルバムです。そこの順位のところにも記してますけど、発売当時の最高位は全米106位。あの当時の、ロックの燃え盛った時期においては完全なるアンダードッグ。でも、今や、その当時に脚光浴びたどのアーティストよりもピンピンに健在でライブをし、「ロック界のゴッドファーザー」として君臨できているのは一体誰なのかな?そして、曲が現在に聞かれているのは誰なのかな?と考えると、このアルバムは時代の先を行く、将来のロックの形を予見した名作なのです。あの当時のサイケデリック・ロックに共通していた混沌とした闇をおまといながらも、ストレートに、かつグルーヴィー(ハンドクラップが効いてるんです!)で切れ味も鋭いロックンロール。「I Wanna Be Your Dog」も「No Fun」も、今となっては、「パンク第一のステップ」とでもいうべき、基本中の基本のクラシックです。ピストルズだって、ソニック・ユースだって、ホワイト・ストライプスだってやってるんだから。そう思うと、このアルバムの影響力から逃れられるロックの作品というのは今日、そう多くはないとも思います。


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