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映画「バービー」感想 多分、思っていたものと違うはず!本来、「局部ウケ」だったはずの愛すべきカルト・コメディ

どうも。

というわけで、やっとこの映画のレビュー、行きましょう!

はい。昨日からの流れでもちろん「バービー」です。日本でも公開直前なので、今のタイミングにアップするのが良いと思いました。

ちなみに僕はですね、7月20日、27日の2回、見に行きました。僕が同じ映画、映画館に観に行くの珍しいんですけどね。

では、あらすじから行きましょう。

舞台となるのはバービーランド。そこにはバービーと名のつく女性ばかりが住んでいて

大統領からお医者さんから人気作家まで、社会的地位の高い人はみんな女性で、自信に満ち溢れていました。

ヒロインのステレオティピカル・バービー(マーゴ・ロビー)も、そういう世界での暮らしを当たり前と思ってエンジョイしてました。ここでは誰もが日中は誇り高い仕事をし、夜になるとガールズ・パーティ。

一方では無数のケンも存在します。ステレオティピカル・バービーと付き合ってるケン(ライアン・ゴスリング)はサーフィンばかりやっていて、自分の仕事を「ビーチ」と言ってしまうような感じです。

ただ、バービーはある日、バービーランドの女性が考えてはいけないネガティヴな考え方にとらわれてしまい、それで日常がおかしく感じられるようになります。

そこで彼女は

かなりいかれたバービー、ウィアード・バービー(ケイト・マッキノン)に相談したところ、「それはリアル・ワールド(現実世界)であなたで遊んでいた人に異常が生じた証拠だ」として、その人物に会いに行くように指導されます。

そこでバービーは

いざ、カリフォルニアまで向かうことになりますが、そこに勝手にケンもついていくことになります。

 そのリアル・ワールドで、バービーとケンは今まで味わったことのないような体験をしカルチャー・ショックを受けます。

その一方で、バービーのそもそもの製造元「マッテル社」は、バービーとケンがリアル・ワールドに来たことに激しく動揺し、

その話は、マッテルのデザイナー、グロリア(アメリカ・フェレラ)にも伝わります。

その一方で

リアル・ワールドの男性の暮らしにケンは感化され、おかしなことになっていき・・・

・・と、ここまでにしておきましょう。

で、ですね、

こういう話だと思ってなかったでしょ?


 これ、みんな最初勘違いするんですよね。

Netflixでもやってる、アニメの「バービー」。こういうストーリーを予想している人が多いんです。実はうちの娘のリーナもこういう話だと思い込んでて、「連れてって」とも言われてるんですけど、うちの妻が「絶対意味わかんないからやめとけ」と言ってオッケーだしません(笑)。

 だけど、考えてもみてください。そんな、7歳児向けのものの実写版だったら、そんなに絶賛とか世界的な大ヒット、するわけないでしょ? 

これですね、話の基本線は大まかに2つあります。まず一つが

①ジェンダー・バトル


ここが一つの大きなポイントです。

冒頭の紹介でなんとなく気がついた人もいるんじゃないかとは思うんですけど、これ、バービーランドでは

男性と、女性のステレオタイプのイメージが全く逆なんですよ。女性が世の中のメインの仕事や地位を支配し、男たちが女性たちにとっての、あたかも付随した存在であるかのような存在で、恋愛が一番の関心ごとみたいなね。

そこに対してケンが違和感を感じだして目覚めるんですけど、実はこれ、男が逆の意味でwokeする映画でもあるんですよね。そこのところは映画を見てのお楽しみなんですけど、ここの風刺がすごく笑えます。いわば、今風の表現で言えば「ガールズ・エンパワメント対トキシック・マスキュリニティ」ですね、まさに。

だけど、今、

現実世界がこれに近くなってることの暗示でもあるんですよね。

例えばですよ

音楽の世界でも、例えばビヨンセやテイラー・スウィフトが女性たちを鼓舞するエンパワメントな曲を歌って、そういう曲がヒットチャートを独占したりすると、それに対して揶揄したり、反フェミ叫んだりする人たちがいるわけじゃないですか。

そして、偶然なことに

まさに現在、バービーがアメリカで映画や音楽で話題をかっさらっている最中に、チャートのトップを占めてるのがアメリカのすごくコンサバなカントリーだったりするじゃないですか。実は、「ケンの反乱」みたいなものは、もう現実に起こっていることなんですよね。だからこれ、今、やたらと「ポリコレガー」みたいな突き上げやろうとしている人もいるように、エンパワメント叫ぶ人たちは気をつけないと、という暗示にはなっています。

でも、だからと言って、この映画が「フェミニズムやエンパワメントの限界を描いた映画か」となると、それも全く違います。この辺りは突っつきすぎると完全にネタバレになってしまうので言えませんけど、要は「男も女側の意見や自由を認めないと、同じような不満を持たれ、失敗もするよ」というようなことです。

 そして、もう一つ大事なポイントは

②製造社の歴史を借りた、バービーの自分探し


ここが大事かつ、大胆なんです。

だって、普通ないですよ。主人公が自分探しするのに、製造元の会社の内輪ネタのオンパレード展開するのって(笑)。今回この、マッテル社の社史がすごく映画のキーポイントになってます。そんなこと、マーヴェルはたまにしますけど、DCとかしないでしょ?そこんとこのユーモアにキレがあります。

 では、なんでそういうことをするのか。それはバービーという存在が、歴史によって、あるいは見方によって全然イメージが違うから。

映画の最初の方でも語られるんですけど、バービーって、世に出始めた時は、これまでの人形にない画期的な意味を持つものだったようです。しかし、作られたモデルが当初はこの「金髪白人」だったから、むしろ「コンサバのアメリカの象徴」と見る人がいる。今も、このモデルしか知らない人は、そういうイメージ持ってる人も少なくありません。

しかし

実際には、こんな風にいろんな人種や特徴を持ったバービーを製作してるんですよね。各人種にタイプしてるのはもちろん、僕、この写真見るまで気づいてなかったんですけど、障害者バービーまで存在するんですね!こういう人たちが、特に女の子でみんなが輝く世界。これがバービー人表の世界観で、それがバービーランドでは描かれているわけです。

だけど、「みんなが自信に満ち溢れてる世の中なんて、それはそれで不自然じゃない?」というのもありますよね。この映画はそこに対し、「そうじゃなくていいんだよ」と、いわば「傷つく」ことの人間らしさ、尊さも表現した映画になってたりもします。そして、時代の変遷でいろんな意義を持ってきたことで生じる人形のアイデンティティ・クライシスを描くという、心理的、哲学的な内容にもなっていて、そこも興味深いです。

中でも

今はもう亡くなってしまっている創業者のルース・ハンドラーも絡んできます。ここも非常に大事なポイントなんですが、そういういわばスタン・リー的な裏ネタもあるわけでう。

 また、マッテルがこれまで製作した人形のトリビア、あと会社の秘密まで抜け目なく描いていたりします。うちの妻が「よく、そこまでやらせるよね」と言ってましたが、その通りだと思います(笑)。

あとですね、楽しむためのポイントをもうすこしあげようと思いますが

③アメリカン・ギャグのオンパレード


ここもすごく、この映画、目立ってますね。

そもそも

監督のグレタ・ガーウィグ自身が本来、根っからのコメディの人です。大学時代にコロンビア大学のコメディ・グループのメンバーだったんですが、

その時代に、今回のウィアード・バービー役のケイト・マッキノンと同窓になってます。このケイトに関してはいろんな映画にも出てますけど、元は、何年か前までアメリカのコメディの老舗番組「サタディ・ナイト・ライヴ」でエース格だった人です。そういう人が主要キャストで入ってるところがミソです。

あと、随所にサタディ・ナイト・ライヴ的な笑い感覚が溢れています。

その中に「コマーシャル・パロディ」という定番中の定番ネタがあるんですけど、バービー使ってこれをやったりもしています。

④洋楽マニアを突く要素も満載


あと、実はこの点でもこの映画、一部ですけどかなり喜ばれてます。

これはあまりにマニアックなのでネタバレしてもいいかなと思うんですけど、例えばですね、台詞の中に「スティーヴン・マルクマス」「ルー・リード」「ザ・フォール」「ワイアー」という単語が出てくると盛り上がってる人、かなり見てます。

さらにですね、キーになる曲がありまして。それが


この、マッチボックス20というバンドの曲です。90年代終わりころから2000sの前半までかなりの人気のあったアメリカのバンドですけどね。彼らの90年代の代表曲がこれでもかと流れてきて、これがおかしかったですね。

⑤注目すべき役者

あと、僕、この映画、配役も好きでね。

ヒロインのマーゴ、最後のTはサイレントで発音しないのでそう呼ばせてもらいますが、彼女はバービーで大正解、というか、他にこれやれる人、いないと思います。

 当初これが

エイミー・シューマーだったというから驚きですけどね。彼女がもしこの役だったらこの映画、そもそもヒットしてないでしょう(笑)。それこそ、小さな次元のアメリカのコメディ・ファンにしかウケなかったと思うし、
全世界同時公開されるような大ヒット作には程遠かったと思います。

 この辺りのセンスがねえ、やっぱグレタの本来のコメディ・センスなんですよ(笑)。やっぱ、根がインディの人というか、バービーに、みんながコメディエンヌとして知ってる人を配役しようとしていたところを見るとね。

 ここにマーゴが来たことでこれ、起こった、本来カルト作だったはずの映画が間違って大ブレイクしてしまったケミストリーになったんだと僕は思ってます。急にメジャー感、増すでしょ、彼女が入ったことで。

 実際、それによく応える演技だったと思うんですよね。彼女、演じれる幅がすごく広い。これまでで一番コメディ寄りの演技だと思うんですけど、コメディ需要、これでこの人、出ると思います。これがジェニファー・ローレンスやエマ・ストーンだと、ある程度、予想できるラインがあるし手堅かったとも思うんですけど、そこをいい意味裏切ってて良かったです。

ただ、この映画、僕がベストだと思ったのはこの二人ですね

ライアン・ゴスリングとアメリカ・フェレラ、この二人が圧倒的でした!


ライアンはですねえ、最初、配役された時に「ケンやるのに40代って無理あるだろ!」とか、散々言われてたんですよ。でも、いざ映画始まると、不思議なくらい、ものすごく自然なんですよね。しかもいちいちが笑えます(笑)。コメディの才能、大アリです、この人。

特に

この映画、後半が思い切りケイオスなんですけど、ミュージカルでの才能は「ララ・ランド」以上に発揮されています。そして、この曲がもう、バカバカしくて涙出るくらい最高です(笑)。

グレタ曰く、ケンはもう最初からライアンしかなかったようでして、「以前にサタディ・ナイト・ライブにゲスト出演したのを見たときにすごく好きだったから」と語ってます。やっぱ、コメディ目線で見る目あるんですよね、グレタって。

あと、アメリカ・フェレラは、実はこの映画の裏主役かな。彼女に言いたいメッセージ、全部託してますね。この際の体当たり的演技が、この人、「アグリー・ベティ」の時から本当に得意なんですけど、ここに関しては
想像以上に効果ある配役だったんじゃないかな。

ライアン、アメリカは助演でオスカーのバズが高まってます。マーゴよりも確率高いんじゃないかな。

それから個人的にツボだったのは

まずはウィル・フェレルですね。マッテルの社長役。彼と言えば

ジェンダー・バトル・コメディのクラシック「俺たちニュースキャスター」のロン・バーガンディですけど、その約20年後に違うジェンダー・バトル・クラシックに脇役で出てるのも何かの縁ですね。

あと、マイケル・セラですね。懐かしい!久々にメインの役どころでみましたね、この人。彼と言えば

童貞青春コメディの金字塔「スーパーバッド」の主人公なんですけど、そこでも内気な青年役でしたけど、男性陣の中で唯一ケンじゃない「アラン」という人形の役です。だけど、このアランの存在こそが世の中に必要だとグレタが考えているんじゃないかなとすごく思えるので、これまた重要な役ですよ。

⑥エンディングにも注目

 
と語っていけば、これ実は、かなりコアなコメディ映画だということはわかると思うのですが(笑)、これ、最後の最後まで注目です。

えっ、締め、それなの(笑)!


という感じで終わります。なかなかないエンディングですよ。

・・・ということでお楽しみください!



























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