全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第24回)カーティス・メイフィールド/ジ・インプレッションズ その1 30位-11位
どうも。
今日は久しぶりに、FromワーストToベスト、行きましょう。僕の40代では最後となるこの企画、選んだのは、このアーティストです。
ソウル・ミュージックの巨人のひとりですね。カーティス・メイフィールド。彼のキャリアを、60sの名バンド、ジ・インプレッションズ時代も含めてやろうと思います。
最近、若い音楽リスナーのツイッターなど読んでいますと、R&Bへの関心が高まっている感じがして、フランク・オーシャンとか、ディアンジェロとか、ブリタニー・ハワードの名前あたりがあがるのを見ていると、「じゃあ、この際、カーティスを聴くというのも良いのでは。つながるもの、必ずあるから」と思ったのと、サブスクに音源がほとんど揃ったのを見て、「よし、今がチャンス!」と思ったためです。
この人、かなりのアルバム数あるので結構大変でしたが、「これがオフィシャルのオリジナル・アルバムと呼べる」と思った29枚、これを対象にやっていこうかと思います。
では、早速行きます。
30.Do It All Night(1978)
ワースト29位は1978年作の「Do It All Night」。カーティスがこれまでのメッセージ色の強い作風をやめて、思いっきり、当時流行りのディスコに振り切って夜のロマンスをロングプレイで表した作品なんですけど、似合ってません。この時期、作品はたくさん出しているんですけど、一生懸命、元の路線から離れようとしてるんですよね。シリアスな黒人のメッセージが聞かれにくかった時代になってはいて、わかるんですけど、なんか寂しいです。
29.Give Get Take And Have(1976 US#171)
ワースト2も、ワーストと同様の作品。これも2作してセクシー美女がジャケ写で、一生懸命、セクシーなロマンス路線をディスコで作ろうとしてます。これもイメージダウンかなあ。
28.Honesty(1983)
27位は1983年作の「Honesty」。ディスコ路線の後はアーバン路線で、そっちのほうがカーティスには合ってるんですけど、これは曲の記憶が残らないインパクトの薄いアルバム。時代故に、シンセを使う場面が増えていきますね。
27.The Right Combination (1980 US#180)
1980年にリリースした2枚のアルバムのひとつは、カーティスのレーベル、カートム所属の女性シンガー、リンダ・クリフォードとのデュエット・アルバム。さっきまで知らなかったんですけど、この人、70年代に2枚の全米トップ40アルバムがあるくらいに期待されていたんですね。ただ、それがちょっと意外に思えるほどに存在感が微妙に薄く、このアルバムもアーバン・ロマンスを歌った作品なのに、そういう印象が今ひとつ残らないですね。
26.Take It To The Street (1990)
1990年作。この当時で5年ぶりのアルバムですね。ここでカーティスは、ヒップホップからの影響もあって、「ストリートに戻る」宣言していて、リリックも冒頭の「Homeless」はじめ、貧困にあえぐ黒人たちの姿を再び歌い、さらに久しぶりにギターもかなり弾いてはいるんですけど、ちょっと肩に力が入りすぎたか、いろんなことやろうとした上に、打ち込み音がカーティスに似合わないほどにオーヴァー・プロデュースでちょっと聞きづらいんですよね。さらにいうと、このアルバムが出た翌月の90年8月、カーティスはブルックリンでのライブ中に、照明が自分の上に落ちてきて、首から下の神経を麻痺する悲劇の大事故を起こしてしまいます。
25.One By One/The Impressions (1965 US #104 )
24位はインプレッションズ時代のアルバムで。このグループの作品ではこれが一番下になります。このアルバムですが、異色作で、スタンダード・ジャズっぽいアルバムです。マーヴィン・ゲイも初期にこの傾向のアルバムを数枚出してますけど、こういうものをリスナーとして聞いて育ったがための、夢なのかなあ、これ。
24.Never Say You Can't Survive (1977 US#173)
23位は1977年の「Never Say You Can'r Survive」。タイトルだけ見たら、メッセージ色強い、ソーシャルな作風なのかなと思わせるんですが、これも70s後半のカーティスの路線であるロマンス路線で、この前後ほどトゥーマッチなテイストではないんですが、アーバン・ディスコ系のサウンドですね。悪くはないんですが、印象には残らないです。
23.The Fabulous Impressions/The Impressions (1967 US#184)
22位はインプレッションズ1967年作。19位のアルバムと並んで、カーティスが次のフェーズに入る前段階の産みの苦しみのアルバムですね。決して悪くはないんですが、未完成の趣です。
22.Love is The Place (1982)
22位は1982年作。これもアーバン路線ですが、後にダンスホール・レゲエのチャカ・ディーマスにカバーされた「She Dont Let Nobody」のオリジナルが入ってます。あと、このアルバム、珍しくカントリー風味の曲もあったりします。メッセージ路線の曲がここから徐々に戻り始めもします。
21.We Come In Peace With A Message Of Love (1985)
80sがはじまってからのアーバン期の最後のアルバムですが、ここでリリックが社会派路線に戻ってきているのがうれしいところ。歌詞に関しては、続く2作でもそのあたりに一貫性が出てきているので、ここでの「社会愛」の路線は確信を持ったものだと僕は理解してます。シンセに移行してますけど、この当時のそうしたサウンドにありがちなゴテゴテした感じもないので、その点でも好感持てます。
20.Got To Find A Way (1974 US#76)
ちょうど70s前半の彼の全盛期が終わりを告げる感じの作品ですね。カーティスの場合、毎年のようにアルバムをリリースしてたんですけど、「次のアイデアが来るまで待つ」ということをしない人なので、アルバムを続けて聴くと、進歩がなく単調に聞こえる場合もあるんですが、これもその一例。なぜか、これだけサブスクから外れてるんですが、なぜなんでしょう。
19.Riding High/The Impressions (1966 US#79)
19位はインプレッションズ、66年のアルバム。60s前半はヒット・シングルの立て続いたインプレッションズなんですが、これと23位の次作はヒットなし。ちょっとゆったりとした60s前半のヒット曲から、ホーンやストリングスのアレンジを派手めにして、来るべき次のモードに備え始めてますね。ただ、移行期で、それが完成に至らなかったから「ああ、変わったな。でも・・・」と、サウンドが変わったことへのファンのガッカリ感の方が強く出てしまったのかもしれません。
18.Heartbeat (1979 US#42)
18位は「Heartbeat」。1968年から、当時のブラック・アーティストとしては珍しい、自身のレーベル「Curtom」からのリリースをしていたカーティスですが、70s半ばからの苦戦の理由にもなっていた「配給の弱さ」に対応すべく、当時、「サタディ・ナイト・フィーヴァー」でバカ売れだったレーベル、RSOに配給を助けてもらった結果、全米42位と久々のヒットとなったアルバムですね。まだ、趣味の決して良いとは言えないディスコ路線の曲が半分くらい目立つんですが、ちょっと地味にファンキーな抑えめの曲がいい味を出していまして、この中の「You're So Very Good To Me」はスマッシュ・ヒット。1994年にはメアリーJブライジのヒット「Be Happy」のサンプリングにも選ばれます。
17.This Is My Country/The Impressions (1968 US#107)
その「Custom」を設立して最初のアルバムですね。この当時のロックの進化だったりとか、スライ&ザ・ファミリー・ストーンを横目で意識したことが感じられるアルバム。これまでのスーツ姿をやめて、当時のストリート・ファッションで荒廃した廃屋の前に立ったジャケ写でも、彼らがどこに向かいたいことがわかるアルバムです。
16.Short Eyes/Soundtrack (1977)
16位は映画のサントラです。1974年からカーティスは3年連続で「Claudine」「Let's Do It Again」「Sparkle」とブラック・ムーヴィーのサントラを手がけているんですけど、それらはグラディス・ナイト&ザ・ピップス、ステイプル・シンガーズ、アレサ・フランクリンがどちらかというとメインなので割愛しました。これはカーティス単独のサントラで、ペドファイルの疑いをかけられてムショ入りした男が監獄で受ける仕打ちを描いた映画のサントラ。ディスコ期に移行していたカーティスですが、ここでは求められていたものを理解してたか、ファンキーでビターなアルバムになって、この時期では本来の彼らしさが楽しめるアルバムになっています。冒頭の「Doo Doo Wop Is Strong In Here」も彼の代表曲です。
15.The Never Ending Impressions/The Impressions (1964 US#52 )
これはインプレッションズのセカンド・アルバムですね。デビューでいきなりシングル・ヒットを連発させたインプレレッションズでしたけど、ここでもデビュー作の流れをくんだ音楽性でラヴ・バラード「I'm So Proud」をヒットさせています。1stのとこで詳しく書きますが、この頃はかなりゴスペル・テイストの強い作風ですね。
14.Check Out Your Mind/The Impressions (1970)
カーティスがソロに完全移行する前の最後のアルバムですね。ここからの曲はカーティスの初期のライブでも自分の曲のように歌われるので、もう、その気になってたのかな。後のトレードマークとなる、サイケデリックなワウワウ・ギターがまだフルに発揮されていないので、その分、まだファンキーさは弱いですが、そこ以外はもうソロへの準備ができた感じです。
13.Sweet Exorcist (1974 US#39)
13位は「Sweet Exorcist」。これもまだカーティスのヒット期の作品で、70s前半のファンキーでサイケデリックな持ち味が発揮されていますが、「エクソシスト」だったり「カンフー」だったりと、この当時のヒット映画を思わせるワードが散りばめられているので、勘違いする人も結構いるのですが、どちらとも荒廃したストリートで強く生きていく人間を描いた曲です。
12.Roots (1971 US#40)
12位はソロ第2弾のアルバム「Roots」。インプレッションズのアルバムを混ぜなければ、間違いなくトップ10に入れたし、人によってはもっと上位に入ります。全盛期の只中のアルバムですからね。ただ、これ、最高傑作だとも評されることの多いこれの前作にあまりに似てるので。さっきも言ったように、次のアイデアとか考えずに思いついた作品を出す感じの人ですので。それもカーティスらしいんですけど。
11.Keep On Pushing/The Impressions (1964 US #8)
11位はインプレッションズのサード・アルバム。これのタイトル曲と、シドニー・ポワチエが史上初の黒人の主演男優賞を獲得した映画「野のユリ」の挿入曲にもなった「Amen」で、本格的に社会的なメッセージ・ソング路線に舵をとったアルバムとしても、これは有名です。そのアプローチは社会的あインパクトもあったのか、当時の全米アルバム・チャートでも、これ、全米8位にヒットになっています。この2曲の出る前か、ほぼ同じ時期に、サム・クックの遺曲にして、ブラック・アーティスト初のプロテスト・ソングとも言われる「A Change Is Gonna Come」が出ているので、それをカーティスが継承した形になっています。