オリヴィア・ロドリゴとパラモアとの間の論争で、改めて「パクリ」について考える
どうも。
今日はこういう話をしましょう。
つい先日、この曲
オリヴィア・ロドリゴのビッグヒット「good 4 u」に対し
パラモアの「Misery Business」を書いたヘイリー・ウイリアムズとジョッシュ・ファロのクレジットが書き加えられました。
この曲、出た当初から
こうやって比較マッシュアップが出て話題になるうちに「盗作だ」という盛り上がりになってしまいまして、こういう結果になってしまったんですが、これ
オリヴィア・サイドの完全な失敗だと思います!
「パクったから悪い」ではないです。「なんで認めちゃったのか!」です。
これ、はっきり言って「オマージュ捧げた程度」ですよ。意識はしたとは思うんですけど、曲そのものはそんなに似てません。こんなのがパクリ認定になるんだったら、過去の曲やアーティストを意識したオマージュなんてできなくなりますよ。オアシスなんて存在自体がアウトになっちゃうじゃないですか(笑)!
ポップ・ミュージックって、そういう引用を楽しんで、そこにセンスを見たりする世界でしょ?こんなものがパクリになるのだとしたら、そういうリスペクトから出たものもダメになる。そんなことしてたら、音楽そのもの、作れなくなりますよ。本当にこれ、ばかばかしいです。
これ、たぶんにオリヴィアに対しての妬み以外の何物でもないですね。
彼女、この他にも
「デジャブ」がテイラー・スウィフトの「Cruel Summer」の盗作だの
「Brutal」がエルヴィス・コステロの「Pump It Up」に似てるだの、かなり言いがかりつけられてます。
オリヴィアはテイラーの大ファンですから、意識したことは考えられるし、リズムとかサビ前のコーラス、似てはいるんですけど、パクリの基準になる「16小節がまるまる同じ」には抵触しないし、コステロなんてリフが少々似て聞こえるレベルですよ。
ただ、そこのところ、コステロはよくわかってて、オリヴィアに対し「気にすることないぜ」と言って意に介しませんでした。テイラー側はどうでるかはわかりませんけど。
ただ、コステロの言うように、ロックというのは、模倣からいろんな派生を生み出すようなものなんですよ。さっきも言いましたけど、その元ネタをなににするかで逆にセンスを見るものでもあるんです。
そして、そういうことを実践してきたアーティスト、でかいですよ。例を見ていきましょう。
そのひとりに、まずボブ・ディランがいます。
彼はジョニ・ミッチェルに「パクリ野郎」呼ばわりもされている人なんですが、実際、そういう作品は少なくなく、かの代表曲、「風に吹かれて」も民間伝承のフォークソングの歌詞を変えただけです、これ、実際。
この「くよくよするなよ」も、ポール・クレイトンなるフォークシンガーの盗作と言われています。
このパクリに関してディラン自身がドキュメンタリー映画の中で「ジャズにはアドリブの文化がある。元の曲から自分でどう変えていくかだが、フォークやブルースの世界にもそれがある」としてるんですよね。
僕もそれに思い当たる節はあるし、そういうことしてきたから、ロックなりポップスなりが、3〜4分という短いフォーマットの音楽で世界中で作られ続けているにもかかわらず枯渇せずにいきてこれたものだとも思っています。
ディランだけじゃないですよ。
ローリング・ストーンズだって代表曲の中でも有名な「サティスファクション」だって、モータウンの名女性グループ、マーサ&ザ・ヴァンデラスそのままですよ。オリヴィアへのクレームが基準ならこれだってクレジット変更ですよ。
まあ、実際にストーンズ、ブルースの巨人ロバート・ジョンソンの遺族から訴えられ、クレジット変更した過去さえありますけどね。
で、ディランやストーンズさえ上回るのがレッド・ツェッペリンでして
こんな風に「パクリ集」をYouTubeで拾われたりしてます。
フォークからブルースまで多彩にパクるツェッペリンですが、もろすぎて笑えるのがこれも代表曲の「胸いっぱいの愛を」。これ、スモール・フェイセズがリリースのほんの数年前に出してた曲の完全パクリなんですよ(笑)。これこそアウトですよ(笑)。
でも、こんなパクリ疑惑があったからって、ディランにストーンズにツェッペリンですよ。なんか、彼らのレガシーに影響、あります?ないでしょ?それどころか、それ以上のクリエイティヴィティで逆に後世に影響与えてるじゃないですか。ポップ・ミュージックはそれくらいがいいんですよ。
もともとこういう性質の音楽なのに、言いがかりつけることで、せっかく才能が世界に向けて開花しかかってる18歳の才能をつぶすことにもなりかねません。もっと、アーティストの将来を考えた行動をお願いしたいところですよ。
あと、逆に”パクられ王”という人もいまして、それが
トム・ペティなんですが、彼なんて
ストロークス、レッチリ、サム・スミスと、3度もパクられたんですが、ただの1回も訴えてないですよ。特にサム・スミスに関してはサビのメロディが完全に同じなので、訴えたら勝ててたのに、そういうことはしなかった。やはり彼も、ポップ・ソングの作り方の流儀を心得ていたから寛大だったのでしょう。
あと、日本でも洋楽パクったからって
筒美京平や山下達郎の価値が落ちましたか?
彼らなんて、逆に音楽マニアが元ネタ調べたくなるような存在じゃないですか。それでいいんでうよ。そのセンスに面白みがなくダサいときは僕もかなり不快なレベルで嫌なんですけど(笑)、元ネタを凌駕する場合だってあるわけですからね。いちがいに悪いとは言えないものだと思います。