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22年4〜6月から、もう10枚のアルバム

どうも。

恒例の3ヶ月に1度の10枚のアルバムは必ず10位圏外の作品をもう10枚紹介するんですが、今回もやります。

惜しくも10枚に入らなかったアルバムはこのあたりでした!


はい。漏れたとはいえ、いずれも素晴らしいアルバムばかりです。早速紹介していきましょう。

はい。まずはエンジェル・オルセンの「Big Time」。これ、真相明かすと、実は最初の段階では10枚に入ってました。60sのトラディショナルなカントリーのディテールまで凝りまくった再解釈は芸術的芸当で、しかも毎作違うテーマで完璧なアルバム作るから彼女好きなんですけど、ただ、問題は彼女が所属するレーベルなんですよね。彼女、それから同じく評判のアルバム出したシャロン・ヴァン・エッテン所属のジャグジャグワー。こが最近、アメリカ本国でのセールスが振るわないんですよ。2人とも評判の作品をここのところキープしてるのにその度にセールス落ちてて。彼女たちだけじゃなくモーゼス・サムニーとかジャミラ・ウッズもですからね。これだとどんなにいい作品出してもレーベルとのケミストリー起きないからどうしても空回る。もう悪いことはいいません。移籍するべきです。そうしないといい作品作っても大衆の印象に残らなくなるので。

続いてはノルウェーのインディ・ポップ期待の女性SSWシグリッド。彼女はBBCの新人発掘の「Sound Of」の2018年のウィナーだったのにアルバム・リリースが1年遅れて盛り下がった失敗があるんですね。ただ今回は、これまでの「エレクトロ・ポップ」のイメージをガラッと変えて、トラディショナルなロック、ソウルへのアプローチに広げてみたら、彼女のソングライティングがすごく生きたんですよね。中にはブリング・ミー・ザ・ホライゾンとの異色共演もあったりして。地力のあるすごく器用なタイプなのはわかったので、これ今後に期待していいと思います。

これもトップ10に余裕があれば入れたかった、Kポップなら今のところこれが’一番好きですね。TXTの「Thursday Child」。だんだんロック化しつつあったTXTですが、これの、その名も「Good Boy Gone Bad」という、リアーナみたいな曲名の曲でとうとうディストーション・ギター出してきてyungbludみたいな雰囲気出してますね。この曲の牽引力が強くはあるんですが、そこをアコースティック・ナンバーと、インディ・ポップが続くバランスもいいですよね。長らく「アメリカ型のR&B、ヒップホップ」のフォーマットゆえのKポップなりの制限から本格的に自由になり始めたようなそんな感じがするし、それは先輩のBTSでさえそこまではできなかったことですからね。BTSもグループとしてはしばらく不在になることもあり、王位不在の中のトップ争いに一気に名のり出そうな雰囲気あります。

このリアム・ギャラガーの「C'mon You Know」も好きなアルバムですね。オアシスを継承する路線を打ち出してからこれが3枚目なんですけど、しっかりオアシスらしいサウンドを鳴らしながらも、50を迎える体にムチ打つように従来より高い音域で歌ってみた中期オアシス以来の本格的なサイケデリック・ロックに挑んでみたり、自ら「リアム・ギャラガー」というキャラのコンフォート・ゾーンを楽しみながら広げていく努力が感じられるのが痛快です。90sのアリーナ級の大御所アーティストでここまで生き生きしてる例ってあんまりなくて、正直な話、今のレッチリやグリーン・デイよりは全然調子いいし、同じプロデューサー(グレッグ・カースティン)を起用しての路線でもリアムの方に分があると思います。ナメないでちゃんと聞いた方がいいと思いますよ。

このブロッサムズの「Ribbon Around The Bomb」もいいアルバムでしたね。彼らの場合、UKロックが底ついてた頃に出てきて売れたラッキーな面があったんですけど、そこで消えるどころかしっかりとクオリティあげてシーンに踏ん張り続けてここに来て2枚連続で全英1位出してます。とりわけシンセ・ポップ・サウンドが、ポール・さいもんのようなファンキーなアコースティック・サウンドへと徐々に進化を遂げ、ソングライティングの幅と地力が強化されているのは見逃せません。彼らはデビューの時からザ・コーラルのフロントマンのジェイムス・スケリーとの共同作業を続けているんですけど、その育成成果がしっかり出てきていると思います。なお、僕が足を滑らせて全治3ヶ月の骨折の重傷を追ったその瞬間に聞いてたのはこのアルバムだったりします(苦笑)。

続いては邦楽いきましょう。今年は邦楽、豊作みたいで、この3ヶ月も柴田聡子とか坂本慎太郎とか春ねむりとか、素敵なアルバム出してたと思うんですけど、僕の好みだと昨日あげた羊文学と、このゆうらん船のアルバム「My Revolution」ですね。僕のツイッターのTLが賑わっていたので聞いてみたんですけど、このバンド、素晴らしい個性してますね。たとえていうなら、フィッシュマンズがはっぴいえんどのバンド・フォーマットで歌って、そこにコーネリアスが少し混ざるような感じですね。そうツイートしたらものすごい数拡散されて僕もびっくりしたんですけどね。もう、今の時点でかなり高次元な音楽性は確立されていいると思います。あとはもう、何回もリピートして聴きたくなるような、説得力のある曲が書けてくるとかなりの存在になれる気がします。

続いてはこれも逸材ですね。アメリカ東海岸の真ん中らの州、メリーランド出身の弱冠18歳のラッパー、レッドヴェイルの「Learn To Swim」というアルバム。このアルバムで彼、すごいのは、ラップだけじゃなく、プロデュースも全部一人でやってるんですよね。18歳の若さで。しかもそれも70sソウルやジャズのテイストの強い、いわゆるニュー・ソウル系のトラックで、彼の言葉を拾うと、影響元となったのはケンドリック・ラマーやJコール、タイラー・ザ・クリエイターのようなんですが、2010sが生んだヒップホップ界のクリエイティヴな良心とも言えるラッパーたちがもう早速次の世代を生み出しつつあるのかと思って、これはすごく嬉しく、かつ頼もしいですね。彼も、この上のゆうらん船じゃないですけど、聴くものに訴えて離さないタイプの曲が出てくると、今後間違いないと思います。


続いてこちらは黒人の2人組女性アーティストです。パッと見はR&Bのヴォーカル・デュオみたいな感じもしますが、このノーヴァ・ツインズはロンドンを拠点とする、なんとラップ・メタルのデュオです。 しかも彼女たちの場合、2人してギターとベースを弾きながらラップするという、かなりロックな見せ方なんですよね。ただ、それでもサウンドの方は20年くらいまえのラップ・メタルと違って、よりヒップホップ風のトラックをベースにしたもので、そこにハードな生演奏が加わり、彼女たちが現在を生きる黒人女性たちの本音をぶつけるというスタイルです。マッチョ白人主体の暴力的なサウンド・イメージを持たれて終わってしまっていたラップ・メタルを、彼女たちは黒人、女性のフィルターを通して、このアルバム「Supernova」で新しい息吹を吹きかけ、ポジティヴに再生していますね。

続いて、この人も強烈な個性を持った逸材です。エセル・ケイン。彼女はトランスジェンダーで、保守的な南部育ちで男性から女性に性転換しています。そうした素性のことも話題を呼び、自主制作でかなり注目を浴び、このアルバム「Preacher's Daughter」もどマイナーな流通しかしていないはずなのに、もう絶賛続きでかなり知名度あげてましたね。インディの音楽メディアだけでなく、カルチャー誌も特集組み始めたりしています。こういうキャラクターゆえ、カルトな音楽性も予想したんですけど、これがいい意味で軽めのポップなのもすごく効果的なんですよね。路線的にはインディのアコースティックなSSWと、インディ・ギターポップの間くらいの路線で、クランベリーズとかエイミー・マンあたりが好きな人はハマると思います。ソングライティングに非凡なセンス感じるので、メジャー・ディールを手にできたら大化けする可能性もなきにしもあらずですね。

そしてシメはザ・スマイルの「A Light For Attracting Attention」。いうまでもなくレディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドがサンズ・オブ・ケメットのドラマーと組んだバンドです。僕は基本的にソロ活動というのはバンド本体と完全に切り離して考えるので、正直な所、そんなに興味を持たないんですね。ただ、そういう立場で、本家でやっても問題無いというか、むしろ本家の新作でこそやるべきことをされると、なんかそわそわ穏やかじゃなくなるんですよね。このスマイルがまさにそうで、「レディオヘッドで5年アルバム出してない状態で、トムとジョニーのバンド内二大巨頭がこういうもの出して、レディオヘッドは大丈夫なの?」。エドとコリンとフィルのことを考えると正直ショックだったし好きになれませんでした。最初はこの圏外にさえ入れないつもりでいました。ただ、とはいえ、「レディオヘッドのその後」の進化した姿はここでしっかり聴かせられているし、いざ聴き始めると楽曲の持つ説得力、すごいわけじゃないですか。しかも「In Rainbows」の頃より前のめりな力強さまで持ってたりもして。聴く回数増えるごとに抗えなくなってきているので、年間ベストの際はわからなくなってきています(笑)。
























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