2021年、ロックは救われた・・よね? (根拠その3) 彗星の如く登場! 「もう出てこない」と思われていた奇跡のロックスター、マネスキン(Måneskin)
どうも。
お待たせしました。では、「ロック定点観測」シリーズ、「2021年、ロックは救われた・・よね?」の根拠第3弾にして、僕がもっともそう思っているものを紹介しましょう!
実は第1弾、第2弾、というのは、ここ1、2年の僕のブログで基本、ずっと書いてきたことなんで予想がつくんです。
しかしですよ!
この第3弾だけは、起こることを全く予期していなかったんです!僕自身、本当にびっくりしている、突然の出来事です!
それがなんなのか、ズバリ、これです!
いやあ〜、かっこいい!!
5月22日に決勝の行われたユーロヴィジョン・ソング・コンテストで優勝をさらった、イタリア代表のロックバンド、マネスキン!
もう、すでにこのブログでも、やや地味目ではありながら紹介してたんですけど、今日のこの記事に爆発させるためにあえて抑えてました(笑)。実際は、先週の土曜から毎日、マネスキンばかり聴いてました(笑)!
いや〜、もうやばかったんですよ。その自分内マネスキン・ブーム、グレイプバインの記事の前から起こっててですね、あやうくバインの記事、遅れそうになってたくらいですから。それくらい、突然、猛烈なブームが僕に襲いかかってきました。
だって、これ、もう見た目の華からすごいんですよ!
これがヴォーカルのダミアーノ・デヴィッドなんですけど、ちょっとハンパなく美形でしょ?
しかも、記者会見の席で、こういう挑発的なこと、やってしまえるこの感じ!
バンドのフロントマンにこういうカリスマ性がギャグでなく表現できてる例、いつ以来かわからないですね。
加えて
メンバーがこぞって美形揃いなんですよね。左から、ギターのトーマス・ラッジ、ドラムのエタン・トルキオ。この2人もダミアーノに負けずに華があるんですけど、そこに加えてブロンドの美少女、ベースのヴィクトリア・デ・アンジェリス。
もう、こんな、見てるだけでわくわくする、「ああ、バンドってかっこいいものだったんだな」と思わせるロックバンド見たの、本当にいつ以来かわかりません。
人々が彼らと比較してるの、まさにこれですよ!
クイーン!
僕もそれは見た瞬間に思ったし、クイーンでなくとも、あの70年代の時代に、それこそミュージック・ライフが真っ先にとりあげたタイプの、日本で先行して人気が出るタイプの、キッズがロックバンドに手の届かないような憧れを抱いていた時代のロックスター。それを思い出させますよ。
そしてユーロヴィジョンで圧倒的なパフォーマンスだったわけでしょ。これ、ユーロでの優勝後、ニュースが世界にかけまわったんです。
僕の住むブラジルでも「ロックなのに、ユーロヴィジョンに勝った!」という記事が出たくらいですからね。ユーロヴィジョンって、ヨーロッパでは今頃の季節に毎年やってる音楽コンテストですけど、勝つのっていつも軽めのポップだったんですよ。ABBAの輩出で有名なコンテストでしたからね。それがいきなり本格派のロックが勝ったことに衝撃を覚えた人が多かったわけです。
そしたら、まあ〜、起こりえないような現象が次々起きたんですよ!
これまでセレブ、アイドル、トラップ、レゲトンしか入ったことのなかったような、Spotifyのグローバル・チャートで、上の「Zitti E Buoni」がいきなりトップ10に入ったんですよ!
これだけでも、ありえないことですよ。だってホント、Spotifyってロックとの相性が悪くて、ロック、絶滅状態だったんですから!そこを、たった一夜のパフォーマンスだけで変えてしまったんですよ。
それだけじゃなく
イタリアで今年出たセカンド・アルバムの収録曲「I Wanna Be Your Slave」が英語曲で、しかもダミアーノのセクシーなルックスと相まってtikitok上でバカウケしまして、こちらも
こっちもグローバルで23位まで上がってきてます。
で、これ、どこもすごいんですよ。僕の見た感じだと本国イタリアだと、この2曲がともにトップ10だけでなくトップ50に4曲入ってて、ドイツでもトップ3に入ってて、ロシアをはじめ東欧ではほとんどの国が1位です!
南米だと、まだ国のトップ50にこそ入ってませんが、バイラルではもう勢いがすごくてブラジルで4位と5位、アルゼンチンでは1位です!
もう、南米在住長いんで断言できますけど、ウケないはずがありません!だって、南米、イタリア系移民、非常に多いから。これがもう、南米ツアーなんかやった日にゃ、もう大フィーヴァー、まちがいないでしょう。
そしてそして
日本のSpotifyでもバイラル5位ですよ!さっきも言ったように、70sの日本で先行して受けた洋楽、V系の先駆みたいなバンドに雰囲気似てるわけですよ、ウケないはずがないじゃないですか!これ、もっと盛り上がると思いますよ。
そしてインスタグラムでもマネスキンの公式、ダミアーノのアカウント、ともにフォロワー330万人ですよ!前回紹介したサウスロンドンのバンドのフォロワーがだいたい3万人です。桁がすでにふたつ違います。
だって、これだけじゃなく、ヴィクトリアのアカウントが170万人、エタンが100万人、トーマスが82万人。もう、バンドの各メンバーまですさまじい人気です。
そして、この前のブログでも言いましたけど、シングルが2曲トップ40入って、アルバムがフィジカルがなくサブスクだけで49位に入ってるわけでしょ?そして、アメリカではまだ紹介されていない。その状態で、これだけのことが起こってるわけです!
もう、これ、いつになるかわからないですけど、
アメリカの全国放送でパフォーマンスなんかやった日には、もっとすごいことになりますよ!
いやあ、それくらいのところまで来てますよ、これ。
本当に驚きますよ。だって、サブスクの時代になって以降、ロックって「瀕死の重傷」みたいな扱い方、受けてましたから。Spotifyのグローバル・チャートに入るような曲もほとんど皆無でね。それがここまでの逆転劇、生んだんだから、そりゃロック好きとしては興奮せずにいられませんよ!
これがユーロヴィジョン後のモネスキン現象ですけど、今度は、モネスキンがこれまでイタリアでどういう奇蹟をたどってきたか、語ることにしましょう。
拠点はローマです。メンバーの年齢はダミアーノが99年、ヴィクトリアとエタンが00年、トーマスが01年。つまり全員が22歳以下です。あれだけルックス揃ってるのにみんな中学の幼馴染で、意気投合してバンドやってたんですって。そこで、コンテストにでることになって、そこで名前を、ヴィクトリアがデンマークとのハーフだったんで、デンマーク語でつけよう、ということになって、「月光」を意味するMåneskinになった、ということです。
このMåneskinですが、いまだに読み方、日本でも混乱してます。「マネスキン」だ「モーネスキン」だと、いろいろあってですね。
でも僕は
この動画でメンバー全員が「マネスキン」と発音してるので、マネスキンでいきたいです。ほかの動画も見てますけど、あっても「モネスキン」で「モーネスキン」はないですね。
で、マネスキンですが、イタリアでのブームのきっかけはこれでした。
2017年9月にイタリアのオーディション番組「X Factor」に出演。このとき、ダミアーノ18歳で最年少のトーマスが16のときですよ。この番組はイギリスでワン・ダイレクションを産んだことで有名な番組ですけど、一番最初のオーディションなんてカバー曲であたりまえなんですよ。しかし、彼らはそこでいきなりオリジナル曲を披露し、圧倒的な演奏力で審査員を凍りつかせ、観客をコール&リスポンスで煽って立ち上がらせたんですよね。
これは僕も数日前に見て本当にびっくりしましたね。この2年半後にユーロヴィジョンですけど、最初から破格だったわけです。
で、さらに遡って探したんですけど、この「X Factor」出演の4ヶ月前、彼らは動画あげてて、そこでエイミー・ワインハウスの「Back To Black」をカバーしてるんですけど、ここでのダミアーノの歌いっぷりが信じられないんですよ!彼、声は低くてしゃがれてるんですけど、声の伸びと感情表現がすごいというか。その源泉がどこから来てるのか。女性で同じようなタイプの低くてしゃがれてことのほかエモーショナルなエイミーのこの曲のカバーでわかりましたね。
この「X Factor」という番組は、コンテスタントがお師匠さん(メンター)について指導を受けながらパフォーマンスを毎週披露していく番組なんですけど、彼らはここでも恵まれました。
マヌエル・アグネッリ。イタリアでもっともビッグで尊敬されているオルタナ・バンド、アフターアワーズのフロントマンです。
これ、なにがすごいかって
僕、アフターアワーズのアルバム、こないだ選んでここで紹介した「非英語圏100枚のアルバム」に選んでるんですよ。しかも、2018年のヴァージョンのときから。これで、個人的に「おっ!」と思ったんですよね。すごい人のお墨付き、もらっちゃったんだな、と思いました。
この「X Factor」でマネスキン、誰もが優勝すると思われたんですが2位で終わってしまいます。ただ、その方が良かったのか。
2017年の11月に出たデビューEP「Chosen」が国内チャートでいきなり2位になります。
ここでは「X Factor」出演時に歌った曲でカバー多めです。そこにはキラーズの「Somebody Told Me」やブラック・アイド・ピーズの「Let's Get Started」もあるんですけど、BEPのカバー聴いても、ダミアーノ、すごい高速ラップができるんですよ!実はこの特技が、ユーロヴィジョン優勝曲の「Zitti E Buoni」でも生きてるんです。ただのクラシック・ロック・リバイバリストじゃないんです!
実際問題、彼らは尊敬するバンドとしてフランツ・フェルディナンドの名前をあげてます。「Take Me Out」のカバーもライブでやってて、フランツ本人もそれを知ってます。ヴィクトリアのファンキーなベースラインの影響はこのあたりにあるようです。
この時点での人気曲は
この「Beggin'」という曲。これ、フォー・シーズンズのカバーなんですけど、知らなかったですね。なんかヨーロッパでリミックス・ヴァージョンが近年ヒットしてそれで知られてるようになったらしいんですけど、これ聴いてもそうとうファンキーでしょ?このあたりがマネスキンのもとにあるものみたいなんですよね。
そして2018年の秋には
デビュー・アルバムの「Il Ballo Della Vita」が出て、これが初登場1位になります。
こういった曲を5曲も国内でヒットさせてます。この時期になると、全部、彼らによるオリジナル曲です。
このときの彼らはファンキーなロックの曲が目立ちます。「Fear For Nobody」あたりはポストパンク調ですね。ただ、その一方で、イタリアのトラディショナルなバラードとか、アルバム収録曲ではレゲトンまでやってて。どうやら彼らの中では、ロックと、コンテンポラリーな要素のものを結びつけたかったみたいで、それでも結構な完成度でよくはあるんですけど、ただ、これ聴いて思うのは、「このままだったらユーロヴィジョンでのあそこまでの爆発はなかっただろうな」とも思いました。
が!
2021年3月に出たばかりのセカンド・アルバム「Teatro D'Ira Vol.1」、ここで彼らは一気にロックに振り切るわけです。
ここに「Zitti E Buoni」が入ってるわけですけど、これはもう、奇跡を可能にしたすごい曲だと思いますね。ネット上でもこれ、「今の時代のSmells Like Teen Spiritだ」と言ってる声を実際に目にしてますけど、1曲の与えたインパクトであらゆるものを変えてしまった大きさでいえば正しい比喩だと思います。だって、ロック、全然流行ってなかった状態で、上に書いたように、あそこまで国際的なリアクションがあったわけですからね。
これ、上の「I Wanna Be Your Slave」も入ってるんですけど、そのほかにもあってですね。
この2曲目の「Coraline」も国によってはヒットしかかってるし
彼ら、バラードもすごくいいんですけど、この「Vent'anni」っていうのがまた名曲なんですよ。なんかパールジャムの初期の曲みたいでね。ここでもダミアーノの存在感、光ります。これも国際的にヒットしないかなと思ってるんですけどね。
・・と、このような感じですけどね。
伝え聞いた話によると、マネスキンは4年間連れ添ったマネージメントを出たようです。これは賛否両論呼んでましたけどね。「ユーロのとき、マネージメントの女社長さんと一緒に喜んでたのに」というツイートも読みました。おそらく、これ、ソニー・イタリア側からの、インターナショナルに向けての指令だったんじゃないかなと思いますけどね。
そして、マネスキン、インスタで見る限り、もう新作のレコーディングに入ってるようです。これ、思うに、「新作出して、2022年にワールド・ツアー」という考えだと思うんですけど、そうなりゃもう、
来年はマネスキンのフェス席巻!
そういうことに確実になるような気がしてます。
今のところは年末のローマとミラノでのライブ、3月のイタリア国内ツアー、6月のドイツのロック・アム・リングの出演が決まってるんですけど、これ、まだ決まるでしょうね。多分、イギリスから攻めていくでしょうね。コーチェラとかはあるかな?やったら絶対ウケると思いますが。
それにしてもタイミングも絶妙なんですよね、これ。3年前、「ボヘミアン・ラプソディ」はやったじゃないですか。あの映画って、クイーンをたたえるとともに、「今はこういう輝かしいロックスターがいなくなってしまった」と、その不在を惜しむ映画でもあったと思うんですけど、人々の脳裏にそれが残っていたタイミングでマネスキンが出てきた。そこ、大きいと思うんですよね。
あと、サブスクの特性がいきましたよね。これがCDの時代だったら、ユーロで受けてもYouTubeで聞くだけ、それ以前だとそれさえもできなかったじゃないですか。でも、今はケータイのアプリで検索して探せばすぐに見つけて聞ける時代。その利便性があったがゆえのこのヒットですよ。BTSが大ブームになったあとならではのヒット現象だと思います。これからも、こういうヒット、でてくるでしょう。
あとは、「ロックスター」みたいなタイプのバンドにもう一度可能性がでてきた。これも大きいと思うんですよね。やっぱり90s以降って、ニルヴァーナでもオアシスでもウィーザーでもナンバーガールでもそうだと思うんですけど、「日常的な中に存在したロック・アイコン」の時代だったじゃないですか。でも、その方法論がかなりの限界にきていた、ということなんじゃないかな。
でも、同時にそれが「70s〜80sアリーナ・ロックのパロディ、クリシェ」というわけでもなく。2000sのダークネスなんて僕はかなり好きですけど、あれは三枚目っぽいからウケたわけだし(笑)、最近のグレタ・ヴァン・フリートに今回に似たロック復権のカタルシス覚えた人もいますけど、手本にしているツェッペリンに似すぎるあまりに嫌う人も多かったりするわけじゃないですか。そこのところにマネスキンが、音楽的な現代性をともなって、しっかり今の若者風情も持ちながら、古き黄金時代も同時に彷彿させるから、多くの人が納得してまう。ここがまた絶妙なんですよね。これがただのハードロック復古バンドってだけだったら、ここまでウケなかったでしょうしね。しかもポリコレの時代らしく、女の子もしっかり活躍しててね。
それが、誰もが全くノーマークだったイタリアから来たというのも大きいですね。だからなおさらミステリアスで面白がられてると思います。BTSで世界のポップ・ミュージックの言語の壁が壊れ始めてますしね。加えて、「イタリアの美少年たち」というところで、女性たちのハートわしづかみにできそうなところも大きいです。
本当にここからさらに何かが続いてくれたらうれしいなと思ってます。
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