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映画「Booksmart」感想 ティーン・ムーヴィーの新たなマスターピース!そして、女性コメディの進化の到達点
どうも。
では、お約束通り、映画評シリーズ、行きましょう。
まず最初の映画はこれです!
このブログでもすでに何度か「きになる」と言い続けていた映画です。「Booksmart」、これのレヴュー、行きましょう。これ、もう公開前から大絶賛だった映画で、「女の子の友情のハチャメチャなティーン・コメディ」で、関わった人脈的にもかなりそそるものだったんで、かなりの期待を抱いていました。
どんな映画なんでしょうか。早速、あらすじから見てみましょう。
主役は、モリー(ビーニー・フェルドスタイン)とエイミー(ケイトリン・デヴァー)。2人は明日に高校卒業を控えていました。
容姿をはじめコンプレックスの多かったモリーは「なんとかそれを見返そう」と、家にミシェル・オバマやルース・ベイダー・ギンズバーグのポスターを貼って、自己啓発のテープを毎朝聞いて「デキる女」を目指して勉強してイエール大学への入学を決め、おとなしいレズビアンのエイミーは、卒業後のアフリカへの長期旅行を決めていました。学校内では完全なアウトサイダーの2人は固い友情で結ばれていましたが、恋愛感情はありません。
モリーはその晩に、学校一チャラい男、ニックのパーティに行くことを強く主張します。それは彼女が、見下していたタイプの、表面上は軽いタイプのクラスメートも同様にいい大学に進学するのを知ってジェラシーを抱き、「私だって、パーティでイケてる女になれるもん!」と対抗心を燃やしたからでした。
元から他人には興味のなかったエイミーにはどうでもいいことでした。ですが、そのパーティに、レズビアンとしてのハートがときめいてしまった女の子ライアンが参加すると聞いて、行く気になりました。
しかし、パーティに行こうにも、クラスで外れものだった2人には連絡網がいかず、どこに行けば良いのかわからない始末。モリーは思いつくままに、この日、別にパーティをやっているクラスメートのパーティに出向き、そこでニックのパーティの手がかりを掴もうとしますが
そのクラスメートは変人だらけで、モリーが兼ねてからムチャしてハメを外そうとしていたことも手伝って、そこで彼女たちは変な体験をたくさんします。
そしてなんとかパーティ会場にたどり着けはしましたが、そこでも・・・。
・・と、ここまでにしておきましょう。
この映画はですね
その内容から2007年の大ヒットおバカ青春コメディ「スーパーバッド」と比較されることが多いんですけど、これ
「スーパーバッド」のジョナ・ヒルと、今作のビーニー・フェルドスタインは実の兄妹です!
いやあ、ビーニー、才能はちゃんと血を引いてますよ。
彼女のことは「レディバード」で知った人も少なくないんじゃないかと思います。シアーシャ・ローナン扮するヒロインの、言いたいことをなんでも言える、優しく正直で、ちょっと笑えもする愛すべきキャラクター。今回もこの雰囲気は十分に引きずりつつも、より兄ジョナ譲りのハメを外したコメディ演技を披露しています。
ビーニーの声って高くてよく通って、感情表現も豊かだから、シーンを奪う演技をしばし見せることができます。この子はこれからまだまだ注目されていくと思います。
だけど、僕的に今回気になったのは
レイチェル役を演じたケイトリン・デヴァーの方ですね。彼女、風貌はいかにもティーンの、どっちかというとコメディとかよりもミステリーが絡むようなタイプの学園モノとかに出てきそうなタイプの、「ちょっと影のある美少女」っぽい雰囲気なんですけど、そうした正統派っぽい演技ができつつも、しっかり笑いでも貢献できる器用さを感じましたね。彼女もこの後、引っ張りだこになっていくような気がしましたね。
後、この映画、彼女たちだけじゃなくて、サブ・キャラもすごく見せるんです。
とりわけ、この”ジジ”っていう、ヒロイン二人のパーティの道中に登場してくる、美人なんだけど、言動がとにかく変人そのもののジャンキーの変な女の子、このコがすごく変でおかしいです。これを演じているビリー・ロードってコは、かの「レイア姫」ことキャリー・フィッシャーの娘さんなんですね。これを機に、彼女の出演も増えそうな気がしてます。
あと
後半にホープって役名のすっごい謎の美少女が出てくるんですけど、このダイアナ・シルヴァーズって女の子も、もう結構、引っ張りだこになり始めているみたいですよ。こういう、これから期待のヤング・ハリウッドの有望な卵たちがここまでフィーチャーされているだけでも、これ見事です。
あと、脇固めてる人もこれ、見どころ多いんです。例えば
エイミーの、かなり変わった両親には、「サタディ・ナイト・ライブ」というよりはアレクサンダー・ペインの「ネブラスカ」でのブルース・ダーンの息子役で知ってる人の方が多そうなウィル・フォルテ、そして「フレンズ」のフィービーとして有名なリサ・クドロウが扮しています。
そしてプロデュースに、我が愛しのウィル・フェレルと、「俺たちニュースキャスター」の、というより、最近では「マネーショート」「バイス」の監督でオスカーにまでノミネートされてしまっているアダム・マッケイのコンビ。
そして監督を務めたのは
なんとオリヴィア・ワイルドなんですよ!その昔、2010年くらいかな、「TRONレガシー」で注目された、あの当時は期待の美人女優だったんですけど、まさかなあ、こんなにお笑いの才能があったとはなあ。
彼女が監督であるという都合上
彼女の夫である、これまた「サタディ・ナイト・ライブ」出身のジェイソン・スデイキスが、「変な校長先生」の役で出てくるんですよ。これは見事な夫婦共演だと思いましたね。
これ、もともとはですね、ハリウッドで「ブラック・リスト」と呼ばれる、有望な脚本に入っていた作品だったんですってね。それは、サラ・ハスキンズというコメディアンと、女性監督のスザンヌ・フォーゲルという人が書いた脚本が元だったみたいなんですね。おそらく脚本としても優秀だったとは思うんですけど、オリヴィアの監督としての才能、見事ですよ!
変キャラを巧みにたくさん出すところはコメディの基本できてるなとまず思ったし、それだけでなく、やっぱりレズビアンが話の主題にもなるので、PG16食らうほど過激なシーンもあるし、それから
「これは一体、何なんだ??」って感じですよね(笑)。
こういうシュールなギャグのセンスと、こういうアヴァンギャルドなものがサラリとワンシーンに入れられるところは、オリヴィア、かなりぶっ飛んでますよ。これだと、確かに正統派の女優さんとしてはあまり成功しなかったの、わかるかも(笑)。でも、脳の中でこんなこと考えられる人だったのかと思うと、才能やっぱタダモノじゃないですね。
そして、これ、ただハチャメチャなだけじゃなくて、ストーリーそのものも深いんですよね。どんなにフェミニズムとかLGBTが理解されてそれを強く主張できる世の中になったと言っても、やっぱりそれでもまだ、とりわけスクール・カーストの強いような世の中では「勉強ができてもイケてない女の子はダメだ」だとか、レズビアンもやっぱりアウトサイダーになりがちなわけで。それプラス、ここではゲイ青少年の悲哀も描かれてもいますしね。で、そうでありながらもこの映画は同時に、「イケてると思われているタイプが内面で抱えるコンプレックス」もちゃんと描かれていてね。そういう悩めるキッズたちに対して、ちょっとした答えの提案みたいなものができているのも立派です。
その意味でこれは本当によく考えられています。これって
「青春コメディ」ってだけではなく、2011年の「ブライズメイズ」から脈々と続いている、「女性コメディ映画」の一つの流れの頂点にもなっているような気がします。それをティーンでやりきったところがまたすごいとも思うんですけど。
これ、日本でもDVDスルーじゃなくて、ちゃんと公開して欲しいんですけどねえ。これはカルト化して、長く残るような気がしてるので。