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サッカークラブのポスターは「誰」に見せるべきなのか?


クラブにとって

サポーターがいかに
重要なステイクホルダーであるか、

そしてその重要性は、
クラブの「余白」によって際立つ。

高級レストランのように、
完成されたサービスを提供するのではなく、

魅力的な店長が経営する
小さな居酒屋につきものの、

ちょっとした「余白」をデザインする。

サッカークラブの戦略について
昨日は視点を変えてまとめてみました。

サポーターと一緒につくりあげる
コンテンツは、

あたらしいファンを開拓し、
サポーターの入り口に立ってもらうこと、
最終的にはサポーターになってもらうこと

を目的にする場合があります。

今日は、「広告」という側面から、

無関心層のレスポンスを獲得するための
考え方について考察してみます。


■Jリーグクラブの「ポスター」

こちらはJ1クラブの日程ポスターです。

名古屋

清水

湘南

北海道

以上、拙者の独断と偏見で選んだ
4クラブのポスターでしたが、

いかがでしたでしょうか?
何か感じませんでしたか?

私的にはサイコーにしびれるデザイン。

私のnoteを読んでくださる方々は、

サッカーファンばかりではなく、
むしろ「サッカー無関心層」の割合が高い。

そういった方々が上記クリエイティブに対して
ある種の「違和感」を覚えること、

ひょっとしたらあるかもしれません。

各クラブが、
誰をターゲットにポスターを作っているか?

によるので

「正解」か「不正解」を
ここで論じるのは適切ではないでしょう。

「好き」「嫌い」という文脈で語ることも
建設的ではありません。

冒頭記した通り、
無関心層のレスポンスを得る」ために、

という観点から考察すること
を前提に話を進めていきますので、

まずはその点、
ご了承いただければ幸いです。


■ポスターのターゲットは誰?

さて、

サッカー無関心層にとって、
Jクラブのポスターはどのように映るでしょうか?

選手の写真が目に飛び込んでくるか、
衝動に駆られてQRコードを読み込むか、

それともスルーするか、
そもそも気づかないか。

繰り返しますが、

あくまでも「無関心層」に限定した考察、
という前提でいくと、

ポスターが「風景の一部」として
脳内処理される確率は低くない。

クラブのロゴ、エンブレム、
選手写真や試合日程を

いかに魅力的に配置したとしても、

そもそも見てくれない可能性
十分に予測できます。


試合日程が掲載されたポスター
(の背後)には、

試合日を知ってもらい、
できればスタジアムに来てほしい

というクラブのメッセージ
が隠されていると思いますので、

そのメッセージが、

サッカー無関心層に向けられていない、
とは言い切れません。

ネットから拾ってきた上記ポスターは

「サポーター向け」来場者プレゼント
かもしれませんので断定はできませんが、

公共施設、駅やコンビニに掲出
されているのであれば、

クラブが意識するターゲットは
無関心層にも向けられてしかるべきです。

そしてその限りにおいて、
上記ポスターは

サッカーが好きな私にとってみると
「魅力的でかっこいい、ほしい!」

とうなるものですが、

それ以上でもそれ以下でもなく、

サッカー無関心層の
関心を引くクリエイティブである

という評価はしづらい
のが偽らざる、個人的な感想です。


■無関心層にとってサッカーとは?

そもそも、
新規顧客をターゲットにした広告の「目的」は、

情報を伝え、説得して、
注文を取り付けること、
でもあります。

掲載して終わり、ではなく、
掲載後が本当の勝負。

そしてとにもかくにも

「見てもらう、記憶してもらう」

ための初期設定
とても大事になります。


風景に埋もれてしまいがちのポスターは、

「これがほしかった!」

という無関心層の感情を刺激する
ビジュアルとコピーに彩られなければなりません。

極端に言えば、

ポスターに示される住所まで
グーグルマップに従って向かってみると

「なんかよく分からないけど、
サッカーやってた!?」

という、無関心層にとっては望外の結果
をもたらすようなデザインであっても、

新規顧客獲得戦略、
という大義名分があれば

むしろ実践的です。

スタジアムはどういう場所なのか。
クラブは人々を集めて何がしたいのか。
何を訴えたいのか。

そこにどんな喜びがあり、
人々の心を豊かに明るくしてくれるのか。

クラブが掲げる志、ビジョンと
その「世界観」が

ポスターに反映されていることが理想。

「サッカー」それ自体はあくまでも、
世界観を映し出す数多いコンテンツの中のひとつ

そんな割り切った姿勢が、

新規顧客の意識を突くポイント
になるのではないでしょうか。


■ポスターを起点にした全体構想

また、ポスターに掲載する情報は
できるだけ「最小限」に。

あれもこれも掲載したくなる、
不安だからとりあえず掲載しておこう

という気持ちは
分からないではありませんが、

伝えるべき情報」を優先したい。

そして伝えるべき情報も、
意図的に

「質問したくなるよう」工夫をして、
消費者の「問い合わせ」を喚起する
ことも効果的です。

クラブと消費者、双方向での
連続的なコミュニケーションとその反応によって、

一方的な情報提供ではない、

消費者の深い理解と納得感、
クラブとの距離を縮める
ことにつながるからです。

特に「ビジョン」という
抽象度の高い言葉に対する説明責任は、

十二分に果たされなければなりません。


ポスターを数多く、街中に張りめぐらせて
リーチを稼ぐことだけではなく、

レスポンスの量
重要なKPIになるでしょう。


ポスターのQRコードからウェブサイトへ。

ウェブサイトに掲載される
社長、GM、選手の言葉に加え、

サポーターの言葉でにぎわう
SNSへ誘導するなど、

消費者の関心、理解レベルに応じた
全体設計、組み合わせ
のデザインも大切な仕事です。


どういう組み合わせが最も効果的か。

数値結果(新規顧客獲得数)をもとに、
過去の成功体験を全否定するなど、

結果に対する検証と改善、
あらたな仮説立てもおろそかにできませんね。


■買い替え需要を喚起する

現代社会は、

「解決する課題がない時代」

と言われています。

ありとあらゆるモノが消費者に行きわたり、
もはや「不足を補うための消費はない

とさえ言われる豊かな社会。

消費者の購買は、
買い替え」という需要が大半を占めています。

であるならば売り手が、

買い替えの理由を説明し、
買い手の共感と納得を得る
という、

高度で知的なコミュニケーション
を行う必要があり、

サッカークラブも例外ではありません。


家族、友人、恋人同士が「集う場所
はたくさんありますが、

遊園地、公園、映画館、
ショッピングモールなどの選択肢に対する

「買い替え」として
サッカースタジアムを提案
する。

「サッカーを観る場所」ではなく
「人々が集う場所」という

スタジアムの「価値転換」を
たくみにデザインすることができれば、

あたらしいお客さんが
スタジアムに集まり、

時間の経過とともに

地元のサッカークラブを応援することが
日常になるのではないでしょうか。


※本稿は以下文献を参考にしました。
費用対効果が見える広告~レスポンス広告のすべて
(後藤一喜)



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