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得ることより「失うこと」を過敏に恐れる
昨日は青山でランチをご馳走になりました。おそらく結構お高いイタリアンレストランだったと思います。トマトクリームパスタが絶品でした。
個人的になじみのあるサイゼリアだと、トマトクリームパスタは500円くらいです。高級店だと1500円くらいなんでしょうか?その差は3倍。お店の雰囲気、立地、客層、スタッフなど、料理に付随するすべての要素を変数として掛け合わせると、「3倍の価値」を十分に感じられそうです。
さて、行動経済学的には「人は失うことに過敏に恐れる」という考え方があります。この前提を踏まえて、次の実験を考えてみたいと思います。
高級店のパスタを格安の800円、サイゼリアも特価の300円で食べられるとしたら、皆さんはどちらを選びますでしょうか?実験では、73%が高級パスタを、27%が安い方を選びました。私も、昨日食べたあの味を800円で食べられるんだったら、そして2択でどちらかを選べと言われれば、高級店を指差す可能性が高いです。
では今度は、高級店がさらに値下げをして500円で、そしてサイゼリアが「無料!」と聞かされるとどんな心理になるでしょうか?値下げ額は同じ300円。ですがおよそ69%のお客さんが無料のサイゼリアを選び、超格安の高級パスタを食べるチャンスを逃してしまったのです。
「失うことを恐れる」私たちは、「無料」に過剰に反応してしまうことが少なくありません。値段ゼロ!は単なる値引きではないということでしょうか?ゼロは全く別の価格であると考えていいかもしれませんね。社会科学では「出費の痛み」と呼ばれ、私たちの多くは苦労して手に入れた現金をどんな状況であれ手放すときに不快さを感じます。集客したり、売上をあげようと思えば、この人間心理を活用した無料施策が有効だと言えるでしょう。
利益から得る効用よりも、損失から得る負の効用のほうが大きいとは、株式投資の世界でもよく言われていることです。利が乗っているときはすぐに利食い、損が出ているときは損切りできずに抱え込む。心理学的にも「サンクコスト」という概念があって、今まで費やしてきた時間、お金、労力を「失う」ことを恐れて「やめられない」こともしばしばです。
経路依存のバイアス。将来のことを決定するときも、私たちは過去の行為に縛られることが非常に多いです。含み損を確定するかしないか、というのは「どう運用していくか?」もしくは「何に投資するか?」という本当の目的に付随する従属的な要素に過ぎません。「私は一体何がしたいのか?」今抱えている仕事ややるべきことを整理できずにいましたが、トマトクリームパスタを食べながら考えをまとめることができました。
久保大輔