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サッカークラブは「豊かな社会創り」に貢献する


「お金を払って働く場所」

オンラインサロンを表現するときに
よく使う言葉です。

もちろん、この一言で
すべてを言い表せているわけではありませんが、

常識的な考えに立脚すると
異質

というイメージを与える意味では
効果的な伝え方だと思っています。

ここでいう「常識」は、
現代の常識であって、

これからの常識ではありません。

現代の非常識が
未来の常識に取って代わることは、

ニュートンの万有引力や、
コペルニクスの地動説が、

半世紀以上の時を経て認められる
といった歴史が証明済み。

しかしながら
オンラインサロンや共創の概念しかり、

サッカー界においては(今のところ)
非常識であり、

なじみにくい考え方だと言えます。


■コミュニティをマネジメントする

なんでも安く手に入る世の中。

いかに「差別化」できるかが
企業にとっての生命線になります。

細部にこだわった
高品質な製品をつくれば売れる時代は過ぎ去り、

商品やサービスではないところで、

どのように価値を創造するかが
競争優位の源泉になりました。

商品の背後にある、作り手の想いや、
製造過程における試行錯誤などのストーリーや、

オンラインサロンのように、

サービスを軸に形成されたコミュニティ
「価値」として評価されることがあります。

強烈なビジョンにひかれた顧客が
商品を支え、SNSで口コミを拡散する

という構図は、

お金が価値を媒介する唯一の手段
ではなくなった
ことを示唆しています。

お金自体がコモディティ化し、

人々の関心は、お金という手段から、
より根源的な「価値」に向けられるようになりました。

サッカークラブも違わず、

「サッカーを売る」

だけでは経営しづらい時代
に足を踏み入れています。

興奮や熱狂、憧れといった
人間的な感情を喚起したり、

共感や信頼という観念的なものなど、

クラブがどんなビジョンを表明し、
どんな社会を作っていくのか
を訴え、

賛同してくれるファンが、クラブと、
もしくはファン同士で語り合う場所を、

いかにマネジメントできるか
が問われています。


■多様な価値観が尊重される世界

クラブのビジョン、
そして顧客はそれをどう捉えるのか。

サッカーの場合で言うと、


予算の許す範囲で、質の高い選手をそろえ、
試合を行って勝利を追求することが

「絶対的な価値」

であることに、現時点に限って言うと
ことさらに異論を唱えるつもりはありません。

どのクラブも多寡はあれど

共通した価値観で
経営しているように見受けられます。

一方、

交流や体験の価値

を訴求し、それを評価する人が集まる世界
があってもいいと思っています。

試合を「数あるコンテンツのひとつ
として捉え、

クラブが企画するあらゆるイベントで

人々の交流を促し、
かけがえのない体験を提供することで、

「人間関係の希薄化」

という社会問題を打ち破る決意で経営する。

そんなサッカークラブが
多くのファンを獲得してもいいはずです。

何が正しいか?

という議論ではなく、

何か好きか?


正しいか正しくないかは
人それぞれです。

正解は人によって違って当然。

職業、宗教、政治に
個人の自由が約束されているのと同様、

「価値」や「コミュニティ」にも、
選択肢がたくさんあって不思議ではありません。

どこにいるのが心地いいのか。
誰と一緒にいることが楽しいのか。

心が豊かになって、

生きていてよかったという
人生への肯定感を感じられるような場所

画一的な価値観に縛られることなく、
多様性を楽しむことができる環境を、

サッカー界でも
整えていくべきだと思っています。


■予定調和より不確実性を楽しむ

Jリーグ発足から
30年近い歴史を重ね、

いたるところに蓄積された
経験や知見が各クラブにしみわたり、

経営に活かされている。

顧客データは
数年にわたってトレースされ、

どんなグッズをつくり、
どんな企画を、

いつ、どのタイミングでリリースすれば
数字が見込めるのか。

確度高い予測が
できるようになったのかもしれません。

しかしながら、

今の常識や枠組みで歩き続けた先にあるのは、
今の延長線上を歩いているサッカークラブ

しかありえません。

アプリの精度が上がったり、
デザインの質が洗練されたり、

それら細かい「戦術」
を改良する、ということは、

たとえていうなら、
「靴を履き替える」ようなもの。

しかしながら靴を履き替えたところで、

パラダイムシフトを起こすような変化
には至りません。

その道を飛び出して、
道なき道を突き進まなければ

あたらしい世界を
手に入れることはできないのです。


データや経験則によらないことはつまり、
不確実性に挑むということ。

人は不確実なものに対して
ドーパミン(欲求系)が作動し、

必死に探し続けた先に
求めていたものがあれば、

オピオイドという快楽が
全身に行きわたるようになっています。

クラブだけではなくファンも、

「非常識」に直面して
戸惑うかもしれませんが、

予測が難しい、
リスクある不確実な環境で獲得する「価値」に、

人はより多くの快楽を感じやすい
ものです。


■確固たるビジョンで豊かな社会を

あらゆるものが満たされた現代社会。

企業をつかさどるリーダーは、

自分の言葉で、
自分の心が震えるような意義を感じて、

なぜ経営するのか

という問いに
答えられなければなりません。

誰もが理解できる明確なビジョンは、
社会の課題を解決するものであり、

社員や顧客の、
生きる意味を表わすものでもあります。

年間の収支をきれいにそろえるためにがんばる
サッカークラブの経営者より、

日々、ビジョンを熱く語り、ファンと共有しながら、
自らやるべきことに没頭する経営者
と、

どちらを応援するか。


サッカークラブの経営者は、
自分の情熱がどこにあるのかを

徹底的に探り、深掘りして、

サッカー界の枠組みの中で競うのではなく、
自ら枠組みそのものをつくり

ファンとつながり、
独自性に磨きをかける。


日本中のサッカークラブが、
独自の価値観をもち、

独自のコミュニティをつくって
共感の輪を全国に広げていけば、

サッカークラブが、
多くの人々にとって欠かすことのできない

楽しみになり、心のより所になり、
プライドになり、街のシンボルになり、
大切な産業になる。

それが「人々の心をゆたかに

厳しく、不安定で
予測不能なこれからの世の中を

前向きにあかるく楽しく、
生き生きと過ごしていく源

になるのです。


※本稿は以下文献を参考にしました。
お金2.0 新しい経済のルールと生き方
(佐藤航陽)



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