あんなにほしかったモノでも、飽きてしまう
限界効用逓減の法則
という経済用語があります。ビールが大好きな人にとって、居酒屋での一杯目、その満足度(効用①)はかなりのもの。真夏の蒸し暑い夜、のどがからからに渇いていて、疲れ切った身体に染み渡るようなビールは最高です。
食事をとりながら二杯目。一杯目のほろ酔い気分も手伝って満足度は上がります(効用②)。酔いが回ってくると脂っこいものが食べたくなって、同時にのどが渇くので三杯目を注文したくなります。唐揚げと一緒に飲むビールは最高ですね(効用③)。お腹ものども満たされてきて、酔いにまかせて最後の一杯。四杯目ももちろん美味しくいただき(効用④)ここでお開きになりました。
効用①で満足度は30になり、
効用②で満足度は40に
効用③で満足度は45に
効用④で満足度は47まで上がりました。
こうして全体の満足度(総効用)は増加し続け、楽しい思い出として記憶されます(二日酔いになると話は変わりますが)
そしてこのとき、全体の満足度は上がり続ける反面、ビール一杯あたりの満足度は実は減少している、ということに気づかされます。
効用①の満足度は30
効用②の満足度は10
効用③の満足度は5
効用④の満足度は2
一つ消費するごとに、得られる満足度は徐々に下がっていく。これが限界効用逓減の法則です。追加1単位あたりの効用(満足度)はだんだん減って(逓減)いきます。初めて営業で契約をとったときの達成感は言葉で言い表せないものでしたが、2つ目、3つ目と成果を積み上げていくごとに、その感動の度合いは確かに減っていく感覚はあります。
これは例えば「時間」にも当てはまります。久しぶりにゆっくりできる時間がわずかしかない場合、1分1秒を大切に味わうようにして過ごし充実感を得られる一方で、一日中休める時間があれば、だらだら過ごし時間はいつの間にかなくなってしまいます。部屋がひとつしかなければ、スペースは貴重ですが、使える部屋がいくつもあれば、その限界はあまり問題になりません。
私たち人間は、残念ながらどんなに欲していたものでも飽きる生き物。他者を喜ばせるために同じことを繰り返し続けることは、四杯目のビールのように満足度が下がってしまうことを忘れないようにしたいです。クライアントから契約を取るために、驚きや感動を逓減させないように、常に工夫と改善を忘れないようにしたいですね。
久保大輔