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音楽について

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#音楽レビュー

時を無視したサンプリングの道にしか見えない世界—DJイオ「Sampling Roads」(20221127)

mixやリミックス集などはコンスタントにリリースしているけれど、単独リリースとしては5年ぶりくらい? 2022年10月30日にLBTからリリースされたDJイオ/Sampling Roadsについて、初めて聞いた時の感想と受けた印象をつらつらと記してみました。イオくん自身による詳しい曲解説や紹介がされているようだし、リリースから約1カ月経った今だと私がなんやかんや言うのも少々今さら感があるかもしれませんが、よろしければどうぞ。 DJイオ/Sampling Roads http

踊りたくなるファンキーな魔法ー邂逅の日のホワイト盤2枚を手がかりに(20181010)

邂逅の日のCDはたいてい突発的につくられる。手に入らなければそのまま終わりになることが多い。だからこの文章は、今自分が聴くことができる音源と記憶で書こうと思う。 彼は、1990年代からテクノ系を中心に音源制作やライブ、DJ、そしてVJをしてきた。お客さんとしても人一倍楽しむ人で、難波ロケッツや祇園マッシュルームのイベントでよく一緒になり、デイヴ・クラークのRed2やジェフ・ミルズのChanges of Lifeなんかに歓声をあげていた。ごく個人的な話だが、私はその頃から他人

90'sレイヴと三拍子が出会う彼の地ではーJaermulk Manhattan「Thinner」(20181001)

Jaermulk Manhattanは、ヤーマルク・マンハッタンと読む。90年代から音楽制作を始め、現在も都内でライブやCDのリリースを続けるテクノアーティストだ。現在はTB-303などを使ったマシンライブを行うユニット、アシッド田宮三四郎のメンバーとしても活動している。 名前だけ見ると取っつきづらさを感じる人もいるかもしれないが、別に煙に巻こうという意図はなさそうだ。もし何かそう感じることがあるとすれば、名前よりも作品に込められる真意かもしれない。彼の活動を比較的昔から知っ

2018年に響くアシッドの音ーアシッド田宮三四郎に関する2、3の話(20180929)

ハードフロアのAcperienceを初めて聴いた時は「ようわからんけどなんかすごい」と思った。DJがかけるレコードでですら、TB-303の音はグルーヴ感があって有無を言わせない威力があった。90年代のクラブに通っていた30代後半から40代ならTB-303とハードフロアは切り離すことができない音だと思う。彼らのようなテクノアーティストが音とともに日本に伝えた90年代のDTM文化は、楽譜が読めなくても音楽をつくることができると教えてくれた。プログラミングによって旋律が生まれ、ビー