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アラブ諸国によるシリア・アサド政権の包摂
2月6日のトルコ・シリア地震を契機として、国際社会によるシリアへの支援に加え、アラブ諸国によるシリア・アサド政権との関係正常化に向けた取り組みが加速している。
震災を契機にヨルダン・エジプトの外相が2011年以来初となるシリア訪問をそれぞれ果たした他、2月26日にはアラブ連盟の立法府であるアラブ議会の代表団がバグダードでの会合後、ダマスカスを訪問した。イラクのハルブーシー国会議長を代表とする一行はアサド大統領と談笑している様子も公開され(上写真)、アサド政権がアラブ諸国に包摂されようとしている現在の状況を雄弁に表している。
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(出所:筆者作成)
また、2月20日にアサド大統領はオマーンを訪問した。アサド大統領によるオマーン訪問も2011年以降初のことであるが、震災から2週間という時期に外遊に出る決断をしたことは、アサド政権としても重い判断だったものと思われる。ハイサム国王との会談では、オマーンの長年のバランス外交に対して謝意が表され、アラブ諸国との関係強化においてオマーンの役割に期待していることが表明された。
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(出所:オマーン国営放送)
欧米諸国は、アサド政権の存続をなし崩し的に受け入れる状況が形成されつつあることに警戒感を募らせており、アサド政権との関係を正常化させることなく人道支援を実施することは可能であると主張している。
しかし、アラブ諸国の中でアサド政権の孤立化を主導してきたサウジアラビアは、今回の震災ではアサド政権経由での人道支援を実施するとともに、2月18日にはファイサル外相が「アラブ世界では現状維持は機能しないというコンセンサスが広がっている」と述べ、アサド政権との対話の必要性を認めた。カタールとクウェートは震災後もアサド政権と距離を置く姿勢を維持しているが、サウジアラビアがアサド政権を包摂していく方針に舵を切れば、強く反対することはできないだろう。