仕事でのBurn Out(燃え尽き)とGood Job(良い仕事)とは?
The UK(イギリス、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの連合4か国)では、11月2日は、Stress Awareness Day(ストレスへの意識を向ける日)でした。
職場や働く際の問題(ハラスメントや紛争等)の相談を無料で受け付けている政府機関のACAS(エイカス the Advisory, Conciliation and Arbitration Service)では、仕事でのBurn out(燃え尽き)について、経営者は、働く人々の仕事に関連したストレスを健康の一貫として、気にかける必要があるとしていました。
Burn outの症状は以下の3つのステップを上げていました。
ここ からACASの短いビデオを見ることができます。
常に仕事上のプレッシャーを感じる
スイッチオフができない。例)常に仕事のメールやテキストをチェックせずにはいられない。仕事中でなくても。身体的な症状が始まる(腹痛、頭痛がする)
身体的な症状が増し(腹痛や頭痛がひどくなる、回数が増える)、常に疲れている、いつもイライラとした気持、自分が空っぽな気がする、友人や家族と話すのがおっくうになる。
この中で、最終の3の段階では、医療のサポートが必要で、NHS(National Health Service - かかりつけ医)にすぐ行くようアドヴァイスしていました。
一般的には、よく眠ること、栄養バランスの良い食事をとること、友人や家族との時間を大切にすること等もあがっていましたが、ヨーロッパだと、会社がEmployer Management Program(エンプロイヤー・マネジメント・プログラム)のような、仕事を行う上で、少し問題を感じたときに、訓練されている相談員や、働く時間の調整等を行える仕組みをもっている場合もあります。また、日本とは大きく違い、個人の健康は、会社の利益よりも優先されるので、直属のマネージャー、或いは専門の役職の人に相談して、何が必要なのかを話し合い、解決策を探るのは、ごく普通のことです。人間なので、常に健康100パーセントとはいかないのが当然で、誰かが心身の調子が悪くなったり、彼らの家族に何かが起こった場合に、どう対応するかは、通常既にプロセスが存在しています。日本のように、「誰もが仕事のために人生を捧げていて、どんなに体調が悪くても仕事に穴をあけない」という非人間的で非効率的で非現実的な考えは存在しません。
予測不可能なことが起きたときに備えているのはビジネスとして当然だし、健康が損なわれることは誰にでもあることで、そういった際のプロセスも明確だし、周りの人々の理解も深いです。
誰かが突然仕事で穴をあけても、チームメンバーが無理をしてその穴を埋めるのではなく、マネージャーが他部門や顧客と調整して、スケジュールを遅らせるなり、一部のプロジェクトをキャンセルする等、無理が生じないように調整します。誰かが抜けたからといって、他の人々の仕事量が増えるわけではありません。必要であれば、一時的にテンプで専門家にきてもらうこともあるでしょうが、日本のように、マネージャーや経営者が無能で、現在いる人に無理な量の仕事をさせるということはないので、調子が悪くなって一時的に働けなくなった人々に不必要で非情な怒りが向くことはありません。こういったことは日本では普通なようですが、怒りの向け先はマネージャーと経営者であり、自分より弱い状態の人に矛先を向けるのは間違っているし、なんの解決にもなりません。イギリスで、もしこういったことが起これば、働く人々は、団結してマネージャーと経営者に交渉します。そこも、ヨーロッパと日本の違いかもしれません。ヨーロッパが日本よりずっと働く人にとってよい環境なのは、強い立場にある会社側の態度ややり方の違いもありますが、弱い立場にいる働く人々も、本当の問題を見抜いて、弱い立場の人同士が団結して、強い立場の会社へ必要な変化を起こさせる努力も怠りません。
一人で悩まず、適切な部門、担当者に相談することが大切です。
The UKでは、多くのニュース・アンカーやスポーツ選手、ジャーナリスト等も自分が鬱病であることを公表していて、メンタルヘルスへの理解と共感も大きいです。
「仕事」や「会社」に対する概念は、ヨーロッパと日本では大きな隔たりがありますが、Hirary Cottam(ヒラリー・コッタム)さんは、「社会の変革」として、「Good work(良い仕事)とは何か?私たちはどう生きたいのか?」ということをイギリスや他の国々でのワークショップを通して探っています。
「良い仕事」とは、なんでしょう?
恐らく、先進国であるイギリスと、他の国々もそう変わらないのではないかと思います。
まともな賃金:働いていれば、衣食住の心配をせずに暮らせ、緊急の場合に備えて十分な貯金もできる
※働けない事情がある場合は、当然国が基本的な生活を保障。予期できる/計画できる: 給料はいつ、どれだけ支払われるかが明確で数年にわたって計画ができる、働く時間も前もって明確であり、子供のピックアップや老人や病人のケア等の予定との調整が容易につけられる
目的意識 :自分自身よりももっと大きな目的ー社会の役に立っている等)
「監視」から自由であること:工場等での監視カメラ、マネージャーからの絶え間ない監視、仕事時間でない時間や仕事場でない場所への干渉、ウーバーのように不透明なアルゴリズムで管理され突然理由も与えられず仕事を失うようなことがないこと
所属している意識 : 地域、仲間、友人、地球環境
余白時間がある :子供や老人、病人をケアする時間、何かを学ぶ時間(必ずしも仕事やお金を稼ぐことに結びついているわけではない)、遊ぶ時間。現在は、仕事と子供や老人のケア等で分刻みで忙しく、ケアもアウトソースすることが多い。余白時間、例えば、本を読んだり、ぼんやりとしたり、地域での行事に参加したり、家族でゆっくり話したり等の時間を作ることがとても難しいけど、とても大事で必要なもの。大体、ケアは子供も老人も家族もそれがないと生死に関る大事なもので、仕事とケアの関係性は問い直されないといけないもの。
ヒラリーさんのワークショップは、イギリスのロンドンを含む地域や、過去に炭鉱で栄えたもののその後は非常に貧しくなった地域等のかなり違ったグループの人々が住む地域で行われました。それでも、共通しているのは、多くの人々は、自分ではどう使ってよいか分からないような高額なサラリーや、高額なブランド品を手に入れたいわけではなく、子供たちがやりたいこと(ボクシングや水泳等)をできる限りサポートしたい、Rainy days(雨の日=突然、職を失ったり、離婚等で一時的な困難があるとき)に備えて貯金ができる生活を望んでいます。
また、イギリス国内でも、住んでいる場所によって、どのような仕事があるのかは、大きく違い、田舎の貧しい地域に住んでいれば、良い仕事の機会も非常に少なく、これらの地方では「良い仕事(安定した収入もあり、社会の役に立っているという尊厳もある仕事)」は、往々にして、非常に限られた数の公務員職になることが多いそうです。ただ、イギリスでは現在の主要政党である保守派は「小さな政府」というイデオロギーで、公共サービスへの予算を削り続けており、公務員でも職を失うのは珍しいことではありません。大学を卒業した人々は、ロンドンやマンチェスターといった大都市で仕事をすることが多く、田舎に残りたくても残れず、ますます町が寂れて貧しくなるという状況は続いています。でも、これも、住んでいる場所で、自分たちの才能をはばたかせることが可能なように変えていくことが必要であり、可能です。そのためには、現在のシステム(教育や福祉、政治)は大きく変わらなくてはなりません。これには、すべての人々の協力が必要です。
「余白時間」というと、日本では少し分かりにくいかもしれないですが、ヨーロッパでは残業は基本的にありません。サービス残業は違法であり、サービス残業を強要すれば確実に会社側が訴えられます。労働者も、違法移民として働いていて訴えると自分が強制送還される可能性がある、という特殊な場合を除いては、黙って違法行為を受け入れることはありません。自分の当然の人権を守るためには、闘う必要があることも人々はよく理解していて、必要があれば行使もするし、共闘します。また、サービス残業を行わせる会社は、資本主義での原則「Level Playing Field=同じ土俵で勝負する」に背いて、労働者を不当に安い値段で働かせているという大きな「ずる」を行っています。そういった会社が堂々と存在すると、そういった歪んだ市場で競争するために、さらに悪い条件で労働者を働かせる会社が出没するのは自明でしょう。会社が違法行為を行った場合の中立的な通報システム(被害者/通報者は、経済的・身体的・法律的にきちんと守られている)は明確に示され機能しており、違法行為を行った会社はきちんと罰せられます。
給料は通常年棒制です。
パートタイムであれば、フルタイムで働いている人と同じ時給が支払われ、ホリデーも働いている日数に応じてあります(例/フルタイムの人のホリデーが30日で、パートタイムでの勤務時間がフルタイムの人の3分の2であれば、20日のホリデー)。当然、Bank Holiday(バンク・ホリデー)と呼ばれる国民の休日と合わせて2週間程度休むのも、ごく普通です。
また、特殊な働き方(個人事業主としてプロジェクト単位で働く等)でなければ、働く時間に関わらず、社会保険料等にも会社が加入させないといけません。日本のような、正社員/非正規のような歪な仕組みは存在しません。
ビジネスに必要とされる仕事(とても明細なJob Description)に応じて、人々が雇用されるため、どんな仕事の役割でも、みんな対等です。だからこそ、フルタイムだろうとパートタイムだろうと、時給は同じなのが法律で定められています。
誰もがビジネスにとって必要な仕事をしています。
この状況でも、仕事をしていれば、通勤時間や通勤準備時間もいれると、週日は、多くの人々は8~10時間は仕事に関係した時間を費やし、家族との時間やコミュニティーでの時間はなかなか取れないのが事実でしょう。週4日勤務(給料は週5日勤務のときと同じ)の大きな実験はイギリスで行われていますが、これも、一つの解決方法ではあるでしょう。ただ、もっと包括的な解決方法も求められています。
あなたが望む「Good Job(良い仕事)」とは、どのようなものでしょう?
現在のシステムの縛りを超えて、想像の翼を羽ばたかせ、周りの人たちとも話し合ってみるのも興味深いでしょう。
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