それはただの「進歩」に過ぎない
From 安永周平
以前、名著『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』の監訳者である楠木建さんの講演に参加したことがあります。一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授である楠木さん、講演テーマは『イノベーションの本質とは』です。これがとても面白くてですね…
ちなみに、この本の著者であるアダム・グラント氏は、ペンシルバニア大学ウォートン校で最年少で組織心理学の終身教授となった天才です。なんでもボブの『THE GO-GIVER』シリーズの大ファンで、それに影響を受けてこの本を書いたのだとか。
「イノベーション」って、結局なんなの?
話を戻しますが、ここ数年でよく聞く「イノベーション」という言葉。ただ、実はその本質を説明できる人って少ないんじゃないでしょうか。初代iPhoneがそうだったように、なんだか全く新しいものを創り出すこと…みたいなイメージがありますよね。あるいは、豊富な資金調達に成功したスタートアップ企業、ベンチャー企業に為せる業であり、自分には関係ないと思っている方も多いでしょう。
しかし、講演を聞いて私が思ったのは「イノベーションって誰でも起こせる可能性があるものだ」ということです。イノベーションは、よく日本語で「(技術)革新」なんて訳されますが、楠木さんによれば、イノベーションとは技術に限らず社会を変えるものであり、価値やパフォーマンスの「次元」が変わることだと。
イノベーションは「進歩」ではない
この”次元が変わる”とは、1つ分かりやすく言うと「進歩ではない」ということです。進歩というのは、既存の価値の延長線上にあるものであり、たとえばスマホのデータ容量が40GBから100GBになれば、それは「進歩」です。しかし、仮に容量が10000GB(10TB)になったとしても、それは”スゴい進歩”であってイノベーションではありません。そう、イノベーションに規模の大小は関係ないのです。
では、価値やパフォーマンスの次元が変わるイノベーションの例としては、どんなものがあるのでしょうか? 講演の中で1つ紹介されていたのは、ふとん専用の掃除機である「レイコップ」です。レイコップって、最初は「小型掃除機」として売り出されており、その当時は全く売れなくて在庫の山になっていたそうなんですね。小型掃除機の利点って、軽くて力がなくても持てるとか、場所を取らないとか…まぁそういったことですよね。
「小型」→「ふとん専用」というイノベーション
ところが、このレイコップをバカ売れさせた人物がいます。勘のいいあなたはお気づきかもしれませんが…ご存知、ジャパネットたかたの創業者である髙田さんです。彼があの甲高い声で「面倒なふとんの掃除が簡単にできる」という利点を打ち出したことで、レイコップはバカ売れするようになりました。つまり、商品はほとんど何も変わっていないのに、全く別の利点(面倒なふとん掃除が簡単になる)を伝えることで、消費者が認識する価値の次元が変わったのです。
これは1つのイノベーションであり、商品がイノベーションを起こしたのではなく、高田社長がイノベーターであったということ。こう考えると、商品の技術革新だけがイノベーションを起こせるわけではありません。私たち販売者やセールスパーソンだって、アイデア次第でイノベーションを起こせる(イノベーターになれる)可能性があるわけです。
「進歩」より現実的なイノベーション
「進歩」というのは、先のスマホの容量を増やすというように、企業の技術力や資金がものを言う世界で「できるかできないか?」が勝負となります。一方で、イノベーションというのは、先の高田社長の例のように「切り口」や「アイデア」によって可能になるケースも多いのです。つまり、できるできないではなく「思いつくかつかないか?」の勝負です。
だとしたら、私たちセールスを仕事にする人間にとっては、とても勇気付けられる話だと思いませんか?今、お客さんにアピールしている「利点」が、もしかしたらちょっとズレているかもしれない(自戒を込めてますw)。そして、その利点を別のアイデア(次元)で打ち出せば、お客さんの表面的な悩みよりも、もっと根本的な悩みを解決してあげられるかもしれない…そう思うと、なんだかわくわくしてきませんか?
イノベーションとは、豊富な資金や技術力がなければできないことではありません。私たちのアイデア1つで起こすことだってできるものです。そのアイデアが、お客さんに今までとは「別次元」の価値を与えるとしたら、これは改めて考えてみる価値があると私は思うのですが…さて、あなたはどう思いますか?
PS
テレアポで営業してる方からすれば、これもまたイノベーションになると言えそうですね
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