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追悼・佐藤忠男氏

 映画評論家の佐藤忠男氏が、三月十七日、91歳で亡くなられたそうだ。

 新潟市出身で、父と同じ国鉄で働いていたという。新潟から上京し、よく映画評論家として大成したものだ。

 2020年に、佐藤忠男・著「小津安二郎の芸術 上・下 」( 朝日新聞社 )を読み、これが本当の映画評論家だ、と感動した。

 何故、あそこまで深い洞察力があるのか。しかも、特定のイデオロギーに傾くことなく、常識人としてのバランス感覚の上に立った視点だった。

 実は、一度だけ電話でお話ししたことがある。放送作家時代、日本テレビの「アメリカ横断ウルトラクイズ」という番組のリサーチをしていた時、映画に関する問題の裏を取るために、お電話したのだ。

 昔は、個人情報はメチャクチャで、文化人の住所や電話番号が載った電話帳が、普通に売られていた。

 電話をすると、テレビ業界の失礼な電話はもう慣れてる、という諦めた感じで、質問に丁寧に答えてくれたのを覚えている。

 不躾な電話、申し訳ありませんでした!

 また一人、本物の映画評論家がいなくなった。

 御冥福をお祈りします。

( 2022.3.21.記 )

次回作の製作費として、大切に使わせて頂きます。