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天国の境界線

2019年11月29日、数年、ガンと闘っていた教会の牧師婦人が天国に召された。進行性の子宮ガンで脳や肝臓など他の臓器にも転移していた。彼女とは、夏に子ども達のバイブルスタディキャンプで一緒に奉仕をしていただけに信じられなかったが、確かにその時も時折苦しそうにしていた。彼女は手術、そしてあらゆるガンの治療を受けていたが、抗がん剤投与の度に副作用に苦しみ、教会では皆が彼女のためにお祈りしていた。


その週末、ご主人であるアメリカ人牧師は、泣き腫らし疲れきった様子で礼拝に来ていた。彼は私がガンの標準治療を拒否し、祈りと薬膳のみを実践していることを知っていた。私は、彼に何と声をかけて良いか分からずハグすると、私に "Be strong, stand firm in what you believe." (強くあれ。自分が信じることに固く立ちなさい) と言った。私は涙が溢れ、ただ彼をハグした。こんな状態にありながら、私を励ますことができる彼に感謝した。彼こそ、たった独りで日本に残され不安なことだらけだと思う。神様は、何故このタイミングで彼女を天に上げられたのか分からない。教会では、私の状況を知る何人かが私を気遣って声をかけてくれた。


数日後、教会で彼女の葬儀が行われた。参加者は皆、白い服装で来るよう予め連絡があった。葬儀は日本のお葬式とはかけ離れ、会堂は大人から子どもまで白い服の人々で埋めつくされ、地下1Fから2Fまで満席だった。私は彼女のことを詳しくは知らなかったが、彼女はインターナショナルスクールの幼稚園の先生もしていたこともあり、同僚や友人からの彼女とのエピソードやメッセージで、彼女が如何に素晴らしい人だったことを知った。そして、彼女はガンで亡くなったのではなく、この世で沢山の素晴らしい働きをしたので、神様が「もうこちらに来なさい」と、天国に連れて行かれたのだと感じた。この世に生まれるタイミングも、天国に行くタイミングも、自分の意思ではなく、全て神様のご計画によるものなのだ。この世にいる残された夫、私達には、まだこの世ですべき神様のご計画があるのだと感じた。そして、私はまだ天国に上げられるほどの働きはしていないとも感じた。


彼女の最期に立ち会った人のメッセージによると、彼女は、苦しみの中ではなく、夫に "I love you" と言って、静かに息を引き取った。まるで次の瞬間、彼女は天国に入ったかように。天国との境界線は、実はとても薄いものであり、恐れるものでもないのだと私は感じた。


彼女のCelebration of Lifeは、祝福に溢れていた。同じガン患者の死であるにも関わらず、私から死に対する恐怖を完全に取り去ってくれた。私も、神様の祝福溢れる最期を迎えることができるよう、神様に喜ばれる人生を歩みたいと思った。

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