バンドに「お客さんを呼べ!」と言っているけど、ライブハウス自体はお客さんは呼ばないのか?という話
前回、集客に関してへりくつをこねくりまわしてみました。
思いつき & いきおいで一気に書いたので、じぶんで読みかえしてみてもツッコミどころは多い。
ツッコミが入りそうなとこに先手をうってみよう。
2~3年に1回ぐらい「ライブハウスのノルマ制度があり?なし?論争」がツイッターでおきます(個人的には、あれもうあきましたが)
そんな時にみかける、こんな意見
なるほど。
ライブハウスって、そう見えてるか。
ただ、これって超簡単を解決できる方法ありますよね?
みなさん気づいてますよね。
気づいてるのに気づかないふりしてますよね。
そんなライブハウスなんて出なけりゃいいじゃん
「バンドに選ぶ権利がある」ってのを、そもそも忘れてないか?
なんで文句いいながら、そんなとこ出てるんだよ(笑)
…とかツイッターで書くと怒られそうなので、ここに書いてみました。
いろんなライブハウスがあります。
じぶんにあったライブハウスを探して、出演してほしいもんです。
さて、本題です。
「ライブハウスがお客さんを呼ぶべきか?」と聞かれたら、ぼくは「はい。呼ぶべきだと思います」と答えると思います。
なぜか?
お客さんがチケットを買ってくれて
ライブハウスで飲み食いしてくれないと
売り上げが出なくて、お店がつぶれちゃうから。
すごくシンプルな答え。
忘れられがちですけど、ライブハウスだって客商売です。
商売。つまり売り上げが出ないとつぶれます。
つぶれたくない。
みんなと楽しくライブしたり、イベントしたい。
だから、がんばる。
お客さんに来てもらえるように、日夜がんばってます。
じゃ実際にライブハウスは何をしてるのか?
ライブハウスによってそれぞれだと思いますが、いわゆる通常ブッキングイベントで集客に関連しそうな部分で、ぼくらがやってることを例に書いてみます。
●まずイベントを企画します。
●イベントのフライヤー画像を準備したり、SNSでの簡単な告知など。
●宣伝用に、お店にはりだしたり、フライヤーを織り込んでみたり。
●常連のお客さんなんかには、お店に別のイベントで来てくれたタイミングで、直接「〇日って遊びにきますか?今度でる〇〇〇ってバンドたぶん好きだと思いますよ!」もっとストレートになら「〇日、遊びにきてよー!!」などと声をかけたりします。
●例えば、ミナミホイールなどでビラ撒きなんかもします。
●場合によっては、音楽ニュースサイトにプレスリリースを送ってみたりもします。
こんなもんでしょうか。
もうちょっと出来ることもあるとは思いますが、寸止めてます。
個人的な方針ですが、ライブハウスとしての宣伝や告知、集客に関しては あえて 余白 を残してる場合も多いです。
これはじぶんの経験や体験をふまえて、このスタイルに落ち着きました。
では、なんで余白を残してるのか?という話を書いてみたいと思います。
結論から先に書いてみます
ライブハウスについたお客さんは、意外にバンドのお客さんにならない
衝撃的、事実。
これは、あくまでぼくの経験則ですが。
たとえばミナミホイールというイベントを例にして考えてみます。
(↑ちなみに今年のミナミホイールでがんばった話)
ミナミホイールは大阪で1年に一回、行われるサーキットイベント
ミナミホイールじたいは、毎年 大盛況
たくさんのお客さんが遊びにくるイベントです。
さながらバンドの試食会的なイベント
この機会にライブを見たことのないバンドをたくさん見よう!と楽しみにしているお客さんも多いと思います。
ミナミホイール、実は地元バンドにはちょっと怖いイベントです。
ちょっと怖いミナホマジックがおきます。
ミナホマジックとは何か?
普段のブッキングライブイベントで10人もお客さんを呼べないようなバンドでも、入場規制がかかるぐらいお客さんが来てくれることがある
これが、ぼくの思うちょっと怖いミナホマジック。
あれ?おれたち、こんなに人気者だったけ?みたいな。
ミナホ当日は、もちろんそれでいいんです。
バンドだって、たくさんのお客さんにライブを見てもらいたくて出演してるんだから、お客さんが満員のなかで良いライブができたなら、その日は大成功。
ただ、ミナミホイールが終わってからが問題
ミナホでライブを見てくれたお客さん何人ぐらいが
そのバンドの次のライブを見に来てくれてるでしょうか
もちろん、0人とはいいません
ミナミホイールではじめてライブを見て、バンドのファンになったという話も聞きますし、よくある話です。
でも、サーキットの入場時規制=バンドの人気につながる では、必ずしもないんです。
「そんなのバンドのライブが良くなかったからでしょ?」
と言われたら、そのとおり。
自分たちの次のライブにお客さんを誘導できてない、バンドのやり方が下手なのももちろん原因です。
でも、
でもその前に。
ミナミホイールのお客さんの素直な心理を考えてみましょう。
ミナホ終了後のお客さんの心理を想像で書いてみます
こんな感じじゃないですかね?
ミナミホイールのファンが次に楽しみにするのは、
〇〇の次のライブではなくて、来年のミナミホイールなんです。
もちろん全員がそうではないです。
ただ、
ミナミホイールのファンは、ミナミホイールのファンであってバンドのファンではない。
これ、けっこう真理だと思うんですが。
例外を書き出すとキリがないのではぶきますが、大雑把にこんな理論です。
これ、ミナミホイールという言葉をライブハウスという言葉にそのまま置き換えてみると
ライブハウスについたお客さんは、意外にバンドのお客さんにならない
の意味がなんとなくは伝わりますでしょうか。
10年ぐらいライブハウスで働かせてもらってるので、
過去に主催者としてお客さんをかき集めてみたり
バンドがいくつか集まったシーンをつくって、そこにうまくお客さんを意図的に誘導してみようとしたこともあります。
あんまりうまくいきませんでした。
「おまえの能力が低いからだろ!」と言われたら、そのとおりなのですが、とにかくあまりいいい結果にはなりませんでした。
ここでいういい結果というのは、それで集まった人たちがそれほど バンドのお客さんにならなかった という意味です。
意図的にしかけて、それなりに盛り上がってた時
うちで〇〇がライブをする時に、これだけお客さんが入ってるのだから
他のライブハウスで〇〇がライブをする時も、このお客さんの半分ぐらいは見にいってるのかな?と能天気に思っていました。
しかし、現実はそんなに甘くなかった。
実際は、うちのライブハウスでやる時しか見にこないお客さん になってたみたいです。(当時は大阪の堺 という少し特殊な場所だったので、そのせいもあるかとは思いますが)
もちろん、あくまで演奏しているバンドがメイン です。
ライブハウスというのはしょせん場所。
バンドをさしおいて場所がメインというのは有りえません。
もちろん「その場所でライブしてる〇〇が一番好き!」とお客さんに言ってもらえるのは嬉しいし、ライブハウス冥利につきます。
そんなお客さんを増やしたい!というつもりで、もちろん日夜ライブハウスを営業してます。
自分が働いているライブハウスをお客さんが好きと言ってくれる
めちゃくちゃ嬉しいです。
ただ、ここでひとつ
バンドはそのライブハウスだけでライブをし続けるわけではない。
いろんなライブハウスでライブをします。
つまり、うちでしかライブをしてるわけではない。
バンドがのちにつなげていくためには、これじゃ意味がないのではないか?
やり方を考えなおさなければいけないのかも…と、その時に思いました。
もちろん、これは極端な例です。
ライブハウスの仕事というのも、実はけっこうやること多いです。
たぶん思われているよりも忙しく働いてます
その合間をぬって、ぼくらが直接の集客作業に労力をつかうより、
その労力を使って、一緒に バンドの活動の仕方や、バンド自身が集客する方法を考える"ほうが効率がいいし、結果としてバンドのプラスになるのではないか?
というのが、じぶん的な結論です。
これが、つまり"余白を残す"の意味です。
偉そうに書けば
ヒントはやるから、あとは自分で考えてやって。自分で考えてやらないと意味ないから。困ったことがあったら相談して。頭ひねってみるわ。
ぐらいのスタンスで、ずっとやってます。
もちろん
●イベントとして集客しやすいためのひっかかるポイントを作る
●宣伝のためのフライヤーなどを用意する
など、ライブハウスとして、最低限できることをやっていくのは前提ではあります(このあたりが出来てない日も多いので精進したいです。すんません)
ただ、出演バンド5つ集めて仕事おわり!いえい!なんて、のんきに思ってるライブハウスなんて日本のどこにもないんじゃないかな?と思います。
仮想敵を設定すると楽ですが、思考が停止します。
"ライブハウスに搾取されてるバンドマン"というストーリーを作って、ライブハウスを悪の敵と設定する。
わかりやすい図式で、悪者に文句もいえて満足…で、思考が止まってしまうと根本的な解決にはならないのではないかな?と思います。
っていうか、
そもそも、うちノルマないしな。
搾取もなにも。
集客にもむきあっていかないと、お店つぶれちゃうから。
楽しく良い音楽の鳴る場所を続けたいもんです。
お客さんがこなければ大衆ミュージックをかなでるバンドが活動し続けていけないように、ライブハウスだって継続できないんです。
一緒にいい関係でつづけていきたい。
がんばろう。
ただ、このやり方にも弊害はあって、ライブハウスを商売として考えると致命的な欠陥があります。その致命的な欠陥に足をひっぱられながら、むきあい続けてるここ数年です。
この話はまたの機会に。
そして、10年ぐらいずっと後悔してて申し訳なく思ってる話がありまして、次回はその話を書いてみたいと思います。たぶん
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