コロナ体験記

コロナ感染で感じたこと

実は先日コロナに感染したんだけど、細かな点でネットで調べても生の情報がでてこなかったり、いろんな疑問があったのでニュースとは異なるコロナの実情をと思い筆をとることにしてみた。
幸い、軽症にすんだので全ての人が同じような感じではないかもしれないけど、多くの人は同じような形になるのではないかなと。読んでいただいた皆様の少しでも不安軽減の参考になれば。

某月初旬
なんだか今月入ってから体調があまり優れず、とにかく咳がひどい。でも、それは毎年恒例で特に今年だから、というわけではなかった。ただひとつ気がかりだったのは、今年はコロナが蔓延しているということ。それによって、いつもと同じ咳が続いているだけなのに、周りには嫌な目で見られることが多かった。
そんな背景もあって、年始に会社が始まって早々、病院に行った。診断はPCR検査もしないで血液検査や呼吸器能力の結果で「軽い咳喘息」と診断された。

そこからしばらく、薬を服用し、多少改善は見られるものの完全に咳が止まることがないまま、1週間弱が経過した。勤めている会社は「当たり前を疑え」と謳いながらもこのご時世にも関わらず原則出社という滑稽なことをしており、集団での打ち合わせ、会食が日常的に行われていた。
とある日は朝から終日20人以上が集まり打ち合わせを行ない、そして打ち合わせ後は緊急事態宣言で空いていないお店に無理やり潜り込ませてもらって複数人で飲み明かす、というある意味当たり前に捉われないこともやったりしていた。僕は咳がやはり続くものの、話の流れ的に「僕はやめておきます」ということもできず、医者からの「コロナではないでしょ」というなんの確証もない言葉を信じタダ飯につられて体に鞭を入れて飲み会に参加していた。

Day 0
体調の変化は飲み会に参加した数日後の夜に始まった。仕事からの帰り道、全身が筋肉痛のような、妙な倦怠感に追われ、家につくと同時に「何かおかしい」と思い体温を測定してみるとこのときはまだ36.5℃と平熱。しかし、そのまま寝て、1〜2時間経つと明らかに何かがおかしく、改めて熱を計ると38℃を越えていた。この時は、とにかく体がだるかった。そしてなぜか、これまで酷かった咳が一度ピタリと止まる。多分、これまで咳を引き起こしていた原因がこの熱で駆除されたのではないか、なんて本当かどうかもよくわからないことを妄想しながら、翌朝を迎えた。

Day 1
翌朝になっても熱が下がるわけもなく、最高体温は夜中の間に39.5℃を記録した。そこでまっていたのは倦怠感と頭痛、そして軽い咳。
そんな中ふと気になったのが味覚と嗅覚だった。残念ながらすぐに食べるものがみあたらなかったため手元のジャスミンティーを飲むとある程度味はわかるようだ。そもそも味覚にそこまでうるさくないので年中味覚障害かもしれない。中途半端な冗談さておき、ただ、嗅覚は違った。すぐに普段つけている香水の蓋を開け、匂いを嗅いでみるがそのままでは香りがよくわからなかった。試しに、ノズルの先を手で押さえながら軽くプッシュし、手についた香水の匂いを嗅いでも全く匂いがしなかった。

「やばいかもな」

そんな思いと共にまずは会社の規程で自分が感染疑いになったらどうすべきか、以前告知があったスレッドで確認したところ、上司への連絡と、地域の準備する発熱相談センターに相談する必要があるようだった。
時刻はまだ6時前だったが、発熱相談センターは24時間対応しているようだったので、とりあえず電話し、症状を伝えると「病院を紹介する必要があれば発熱外来が可能な病院を紹介します」との回答だった。え、この状況でも「病院に行って検査を受けろ」という指示はしないんだ、というのが正直な印象。だって、会社の規程がなかったら出勤もできるしどこに行っもよいってことだよね?幸い、僕はそんな迷惑なことをする気はなく、自宅の近くにある病院に連絡することにした。

病院に行く前に会社内の関係各所に連絡し、リモートワークにするのか欠勤にするのか、今住んでいるのが会社寮で、同じ部屋に同居人がいたのでその人をどうするのか、など検討してもらうこととした上で病院が開く時間を待った。

そして病院があいたところでいきなりいっても、門前払いを食らう可能性があったため、念のため紹介してもらった病院に電話で連絡すると「それでは9時30分〜10時までに病院に来て欲しい」と連絡があった。

正直、この時間帯が一番辛かった。熱がある中で関係各所への連絡。頭は痛いし朦朧とするし、周りには迷惑かけるし。

時間になったら病院に行って、しばらく隔離した部屋でぽつりと一人30分ほど待つと、先生が普段の白衣の上に感染防護のための不織布の前掛けをして現れて、「あぁ、リスクあるんだよな」と改めて自分が感染源の可能性を痛感する。症状の詳細などは事前に看護師さんにお伝えしていたため、先生からは簡単な問診と肺の音のチェックだけするとPCR検査を受けて、解熱剤を処方してもらってこの日の検査はおしまい。ちなみに、PCR検査は唾液を1〜2ml採取するって内容で、痛くはないけど15分くらいは時間かかったかな?そして、唾液を狙い通り試験管にいれるのが地味に難しい…

結果は早ければ翌日、だいたい2〜3日で出るとのことだったのでとりあえずは連絡待ちって形になった。

戻ってから、PCR検査を受けたこと、基本的には感染疑いが強いので隔離した生活をしてほしいと医師からは言われたことを会社に伝えると、会社からは同居人を極力減らすと言われた。しかしながら、同居人が複数人いたので、感染源である僕が移動すれば一番早いのでは?と僕から提案したものの、ここに一つ大きな障害が。こんなコロナに感染しているかもしれない人間をかくまってくれるホテルなんてないんですよね。いくつかホテルのホームページを見てみたものの基本的には入り口で体温チェックがあるし、ホームページに体温チェックの記載がないところに電話してみたところ「発熱している方はこの状況ですので申し訳ありませんがお断りしています」とご丁寧な回答。そりゃそうだ。というわけで、結局僕は行くあてがないので動けず、代わりに同居人の方々に動いてもらうことになった。そんなこんなを調整していたけど、やっぱり体調がだるすぎて、倦怠感がすごいのでそのままベッドでその日は死んでいた。

Day 2
この日は朝時点では37.5℃前後まで体温が落ちてて、多少倦怠感は残るものの、前日に比べたらだいぶましだな、というのが朝の印象だった。だから、リモートワークって形で業務をスタートさせてもらうことにした。ただ、正直仕事の効率が従来通りかっていわれると全然そんなことはなくて、やっぱり頭は朦朧とするし、集中が続かない感じ。そんなわけで仕事をしながら「検査結果こないかなー」と心待ちにしていたところ、今日はこないかなと諦めかけていた17時過ぎに病院の先生から連絡があり「陽性でした」との告知。てっきり直接でないと説明を受けられないのかと思っていたけど、あっさり。今後の動きとしては、先生から保健所に一度連絡が入ったあと、保健所から僕に連絡があるとのことだった。

そして保健所からの電話。コロナは発症の2日前から感染力を持つそうで、この2日間、どこにいたのか、誰と食事をしたのか、そのときの席位置はどうだったか、マスクをつけていないタイミングはなかったか、同居人はいるかなどなど、濃厚接触者を確認するためのヒアリングが続き、結局僕の場合は同居人1人が濃厚接触者として14日間の外出自粛が必要となった。

また、僕の居場所については、同居人がいることからできるだけホテルに移動できるよう手配してもらえることになった。一方で、感染者数がかなり増えていることもあり、調整後改めて連絡するとのことだった。

コロナの陽性になって初めてわかった辛さは「外出を完全に禁止されること」である。住んでいるところからコンビニまで50mもない区間だが、検査結果が出る前は行っても問題なかったコンビニが、検査結果が出て陽性だと判明したと同時に外出が一切できなくなる。だから、感染発覚後に何か欲しい場合は同居人の人やら、身近な人に買ってきてもらうしかないので、身近に人がいない場合は本当に苦労することになると感じた。(幸い、僕の場合はなんとかなったからよかった。)

Day 3
この日も体調は順調に回復しており、朝晩は多少熱が上がるものの、日中は36.5℃程度まで熱が下がってきていた。13日は夕方になると体がだるく、しんどかったが14日はかなり体力も戻ってきていた。そして、この日は翌日からホテルに入ることができる旨も正式に連絡を受け、ようやく今後の見通しがたった日だった。

Day 4
ホテルへの移動日、感染者は基本的に外に出てはダメなので朝10時過ぎに運転手さんが迎えにきてくれて、そのまますぐ近くのホテルに連れて行ってくれた。面白かった(と言ったら不謹慎かもしれないが)のは、車から降りる時に、車道に停車した車から、歩道を横切ってホテルに入る必要があったのだが、僕が降りるために歩道を歩く人を一度止めて、完全に通路を確保した状態でホテルまで案内されたということ。ホテルと住んでいたところは車で5分足らずだったらし、準備してもらった車で移動して、歩行者を止めてまで自分がどこかの施設に入るって、この部分だけをみると有名人か重要人になったような気分で少し不思議な感じだった。ただ、少し悲しかったのは、ホテルに入る時に歩行者を待たせていて申し訳ないな、と小走りしてホテルに入ろうとしたところ、ホテルの扉を開ける係の人が結構真剣に僕から逃げたこと。なんか小学校の頃のいじめにあったような気分だった。(半分冗談、半分本気。)

ホテルに入ると、受付なんてものはなくその代わりに机の上には自分の名前の書かれた封筒が一つだけ置かれており、その封筒に入った鍵の部屋にいけばよい、とのことだった。そして早速部屋に入ると内線電話で連絡があり、封筒の中身の説明や健康チェックの方法、ご飯の取り方などを20分くらいかけて説明された。

ホテルに入って一番の驚きだったのが、思いの外食事類が充実していたことだった。
おそらくホテルで準備されているのであろうお弁当と、デザート、インスタント味噌汁やおかゆ、カップ焼きそばといった食べ物や、インスタントコーヒー、パックのお茶、お水など、様々なものが準備されていて至れり尽くせりなのである。税金の恩恵だなぁと思う一方、病気になって迷惑かけてるのに更に税金使うのは申し訳ないなぁという複雑な心境だった。

Day 5
ホテルでの環境にも慣れ、体調もほぼ通常通りになってくると流石にホテルで何もない環境に飽きてきた。もちろん、パソコンで動画を見たり、仕事をしたりすることはできるが、ほぼ座りっぱなしなのでそこにストレスを感じるらしい。やはり人間は閉鎖的な空間につめこませておくっていうのはよくないんだなと実感した。

Day 6
食事類の充実に喜んだのは1、2日で、なぜか揚げ物が多いのでお弁当を手にするのは1日に1食程度で、あとはお粥やら、デザートやらでお腹を満たした。幸い、あまり動いていないのでそれでもお腹がいっぱいだし、なんなら満腹すぎてお腹周りのお肉が気になるくらい。ここからは特に至って変わらず、ホテルを出るまでの数日間、平穏な日々を過ごした。

Day 9
明日で長いようで短いようで長かったコロナによる隔離生活もおしまい。とりあえず、体調はほぼ元通り、ちょっとだけ食べすぎて体重が増えたかもしれないくらい。でも、今回の僕のコロナ感染をきっかけに、社内で片手で足りないくらいの人数が感染しているっぽくて、その影響もあってかリモートワークに切り替える動きがでてきるそうな。
そう考えると、新たなワークスタイルへの変化の兆しになったのかもな、なんて前向きに捉えてたり。そして、だれも重症化しないことを祈るばかり。