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次世代の音楽家に伝えたいこと / 対談 with 今井了介 # 3

平良 真人( @TylerMasato ) の対談シリーズ。
引き続き音楽プロデューサー今井了介さん( @ryosukeimai )にお話を伺います。

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今井了介(いまいりょうすけ)
音楽プロデューサー・作曲家。
1999年 DOUBLEの「 Shake 」のヒット以降、安室奈美恵「 Hero 」、
TEE / Che'Nelle「 ベイビー・アイラブユー 」など多くのアーティストの楽曲・プロデュースを手がける。
2019年には楽曲「 Hero 」でJASRAC賞金賞を受賞。
またW杯ラグビーNHK公式テーマソング Little Glee Monster「 ECHO 」の作詞・作曲・Prod.も手掛けた。

これまで 2 回に亘って、音楽作りの極意から音楽の聴かれ方の変化までお話しを伺ってきました。(# 1 )( # 2
今回は音楽業界の課題とこれからへの期待をお話しいただきました。

楽曲がお茶の間に浸透していくまで

平良真人(以下、平良):マーケットやテクノロジーが変化していく中で、音楽家として今後更に届けていきたものや、チャレンジしたいことはありますか?

今井了介氏(以下、今井氏):
まずはやはり僕は新しいことを生み出すことが好きな人間で、今やっている「 ごちめし 」というサービスもそうなのですが、自分が欲しいなと思ったものをこれからも作り続けていきたいなと思っています。
もちろん音楽も同じで、時代感はプロの音楽家として気にしながらも、みんなが好きな曲やヒット曲にばかり囚われることなく自分の世界観を大事にしながらヒット曲を作っていけたら良いなと思っています。

平良:今井さん自身が届けたいものを届けていきたいということですよね。

今井氏:そうですね。

平良:最近驚いたことがあって、今の若い子達にヒップホップがすごく聴かれているんですよね。

今井氏:ヒップホップは今ワールドトレンドで Spotify のチャートの約 8 割がヒップホップですよね。

平良:でもその若い子達は Beastie Boys みたいなヒップホップを築いてきたような人の音楽は知らないんですよ。

今井氏:なるほど。あまり掘らなくなっているんですね。

平良:
そうなんですよね。日本語のラップがこんなに聴かれていることに正直驚いていて、恐らく作っている人達は海外のヒップホップの曲も含めて沢山聴いて知識がある上で作られているはずなんですけど、ファンの人たちは全くそれを知らず聴いている状態になっている。

今井氏:それが市民権を得るということですよね。

平良:そういうことなのかなと。

今井氏:
「 Shake 」が音楽好きの人に刺さって「 ベイビー・アイラブユー 」更には「 Hero 」が、音楽好きじゃない人にも聴かれるような曲になったみたいに、ヒップホップを作っている人達からしたら歴史やサンプリングソースなどを含めた音楽的関連性は大事だけど、聴く人はそれを意識していない。それがマーケットとしては熟成している状態でお茶の間レベルに到達したみたいな言い方になるのかなと思いますね。

平良:そうやってまた新しいイノベーションが起きていくんだなとお話しを聞きながら納得しました。今井さんはそのイノベーションを常に起こしていけたらと考えているわけですね。

今井氏:そうですね。

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海外マーケットを視野に入れた活動の必要性

平良:先日、プロデューサー論について語られた『 さよなら、ヒット曲 』も発売されていたと思うのですが、今井さんはこれからの世代の人達のために何かできないかと考えられていることは多いですよね。

今井氏:
そうですね。作曲家に限らずアーティストも含め日本で生まれてくる新しい才能がもっともっと活躍の場を増やせる環境づくりをしていきたいという思いは強いです。

本を出版したのも音楽家という仕事や楽しさについて知ってもらいたい気持ちもありましたし、コンテンツ作りのノウハウなども含めて僕が伝えられることは伝えていきたいなと思っていますね。

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あとは、今はインターネットで世界中と繋がることができる時代になって、ワールドワイドに良いものを作れば、言語を越えて聴いてもらえるチャンスが沢山あると思うんですよ。

それにも関わらずまだまだ日本は世界を見据えたブランディングがあまり出来ておらず、海外の YouTube で聞けない日本の音楽が本当に沢山あったり、そういう状態が勿体ないなと思っています。
僕はラグビーワールドカップのテーマソングでもある Little Glee Monster の「 ECHO 」もプロデュースしているのですが、Facebook にリンクを貼るとアメリカの人から見られないって連絡が来たりして。レギュレーション上の問題など難しいことはわかるものの、折角なら聴いてもらえるチャンスをどんどん増やして、日本人の音楽家の才能がもっと世界に出て行けたら良いなとは思いますね。

韓国の人達が初めから海外のマーケットを目指して活躍しているように、日本の産業がシュリンクしたとしても、世界に目を向けてメインマーケットを増やせれば、より多くの人に聴いてもらえるようになるわけで、もっと音楽業界全体でグローバルにチャレンジするような風潮を作っていきたいと思っています。
日本で音楽を聞いてくれる人が 3 分の 1 になったとしても、提供できる国を3 ヶ国増やせば結果として同じ数だけ聴かれる若しくはもっと増やせることもあり得るわけですから。

どうやったら海外とリンクしやすいかはまだまだ僕自身も模索中ではあるのですが、映像とシンクロさせるのが良いのかなとか…最近は考えたりもしています。

平良:音楽と映像のシンクロですか?

今井氏:
そうですね。それも 1 つの形としてはあり得るのかなと思っています。
例えばキアヌ・リーブス主演の映画『 ジョン・ウィック 』の 3 作目できゃりーぱみゅぱみゅの曲が使われているんですよね。
日本はタイアップとか色んな古き悪しき習慣が残っていて使用料を少しでも安く使おうとする風習が残っているのですが、アメリカなどは楽曲の使用料がしっかり支払われる文化が出来ている。
そう考えると、海外の映画やテレビなどに使用されることでマネタイズできる可能性があるのかなと思っていたり。
音楽がもっと収益を得られるはずのポイントを自分も体験している最中ではあるのですが、音楽家が自分の音楽をマネタイズする方法が日本以外でもあるんだよってことを次世代の子に残して、音楽に携わって幸せな人生だったなと思える人が 1 人でも増えるといいなと思っています。

僕は有難いことに運と縁もあって日本中のみんなに聴いていただけるような曲を書かせていただいていると思うので、次は、日本の音楽家が作った音楽を世界中の人が当たり前のように聴いている状態になるように、少しでも準備をしそのノウハウを伝えていけたらなと思っています。


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< 過去の記事 >
音楽をつくるということ           今井了介氏 対談 # 1
リスナーが聞きたい音楽を選べる時代     今井了介氏 対談 # 2


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