見出し画像

視点をズラすことで見える世界 / 対談 with 西田二郎 # 2

平良 真人( @TylerMasato ) の対談シリーズ。
今回のお相手も読売テレビ放送チーフプロデューサーである西田二郎さん。

画像1

西田二郎(にしだじろう)
1965年生まれ。大阪私立大学経済学部卒。読売テレビ放送株式会社入社。「11pm」「EXテレビ」を経て「ダウンタウンDX」を演出。
タレントに頼らないバラエティ「 西田二郎の無添加ですよ!」では民放連盟賞優秀賞。2015年より営業企画開発部長、編成企画部長を経て編成局チーフプロデューサー。
NJ名義にて日本クラウンにも所属し、音楽家としてFM OH!にて自身のラジオも持つ。会社員の枠に囚われずパラレルに活動を繰り広げる演出家。
一般社団法人 未来のテレビを考える会 理事代表幹事。
NPO法人 京都フィルハーモニー室内合奏団 副理事長。

前回# 1は西田さんが読売テレビに入るきっかけから、自分らしさを見つけるまでの葛藤を伺ってきました。今回も西田さん流のアイデアの生み出し方を更に深掘りしていきます。

ダウンタウンを知らないディレクター

平良真人(以下、平良):前回平均的に点数を取るタイプじゃ無いと仰っていましたけど、他にも特徴的なエピソードはありますか?

西田二郎氏(以下、西田氏):
周りの理解のおかげで面白い環境を作っていただけたことは多くて、「 ダウンタウンDX 」がはじまる時もスタッフの 1 人として任命していただきました。

平良:やっぱりダウンタウンさんの番組が持てることは嬉しいことだったわけですよね。

西田氏:
それが僕はちょっとへそ曲がりで、当時からダウンタウンさんは誰もが面白いと言う大スターでみんながダウンタウンさんの話をする。だったらもう僕がその面白さを理解する必要は無いなと。わざわざ共通感覚持つ必要も無いと思って敢えて避けていたんです。
だから、最初は無理だと断ったんですけど、寧ろこの時代でダウンタウンさんのことを知らない人なんて他にいないからそれがええんちゃうかと。もう今後もダウンタウンさんのことを知らないまま貫き通した方が良いと言われて担当に任命されました。

平良:ディレクターなのにタレントのこと何も知らない状況はなかなかスリルですね。

西田氏:
何を言って良くて何が悪いかもわからない。最初は怖くて怖くて言葉もあまり交わせないような状態でしたね。
しばらくして、読売テレビと吉本興業が一緒に制作会社を作ることになった関係で、松本人志さんのコントのビデオを撮ることになって、流石にその時は松本さんの番組を見たことがないので出来ませんとも言えず、これは撃沈レースだと割り切って挑もうと思いました。

平良:これが最後かもしれないから。

西田氏:
本当にこれで最後だなと思いながら会議室に向かったのを覚えています。
会議がはじまると周りのスタッフもよく笑いをわかっているから盛り上がるんですけど僕はやっぱり少し遅れる。
それで、ふと、今までのスタッフさんが思いつかないようなセットでコントを演じて欲しいなと思いついたんです。そのアイデアを会議の場で主張すると他の笑いを否定することにもなり兼ねないからもう勝手に決めてしまおうと、撮影当日松本さんと長く一緒に仕事していたスタッフが大勢いる中で、何も知らない僕が全然違う世界観の指示をしはじめたんです。
もう全員が不安そうで、1回作り変えたら戻せないですよと言われたり。とにかく怖かったんですけど、ここは自分の思いを貫き通そうと周りのスタッフ全員にお願いをして自分の中で完璧な状態にしてもらいました。
その後、松本さんが来られて、物凄い緊張感の中一通り見渡した後、「おお〜ええやんけ!」と想像もしなかった一言をいただいたんです。華麗に散るはずが一瞬で状況が変わった瞬間でしたね。

平良:とても西田さんらしいエピソードですね。

画像2

ユーザー目線を意識して考える

平良:面白いアイデアはどんな風に考えて出しているのか認識できていますか?

西田氏:
全てはユーザー目線だと思います。
松本さんの世界観を今まで見てきた人達の中にも、新たな松本人志像を見たいと思ってる人はいるだろうなと。僕はそこにフォーカスしたいと思って、それを考えることに気持ちを集中させました。その結果がセットを変えて新しいフィールドでチャレンジしてもらうことになった。
そうしないと僕が起用されている意味が無いよなと思った所もあります。わざわざ自分を選んでもらったからには、自分らしいやり方で覚悟を持って取り組んで、あかんかったら潔く散ろうと思いましたね。

平良:
さっきからお話を聴きながら感じているのは、ちょっとズラすんですね。
それは意識してやられているのですか?

西田氏:
無意識ですね。自分では言語化できていなかったですけど、確かにやっていることはズラすことですね。

平良:
行動も含め全部ズラしている。それが西田さんらしさですよね。

西田氏:
最初の頃は恐かったですけど回数が続くと、成功体験によって自分を信じられるようになり、周りにも求められるようになる。その繰り返しでどんどんズラし方が力強くなっていきました。

画像3

大切なのは自分を信じる力

平良:力強くズラすようになった成功体験としては何が大きかったのですか?

西田氏:
「 ダウンタウンDX 」を 22 年程演出していて、ゴールデンタイムの番組が20年続くことは自分の中だけでも金字塔やなあと。その経験が 1 番大きいとは思います。

平良:本当に凄いことですよね。

西田氏:
みなさんが思っている以上に自分のことをめちゃくちゃ褒めました。
もし同じ偉業をやろうと思ったら、ここからまた 20 年かかるわけで、それはそうそう塗り替えられ無いから、今はもっと開放的にエネルギッシュにやっていこうと思っています。

平良:なるほど。力強くズラすが象徴されている本が、『 バカでも許して 』ですね。

西田氏:
思いっきりズラしてますよね。
よく大学などで若者にもお伝えしますけど、脳みそのアイデアは難しいことを考えるためだけでなく、どうでもええような人の心を揺さぶるアイデアを作ることもできる。だから、自分の脳みそを信じてあげて欲しいと思っています。

つづく

< 過去の記事 >
アイデアが生まれる瞬間を紐解く 西田二郎氏 対談  # 1


fanicon は、アーティストやタレント、インスタグラマー・ユーチューバーなどのインフルエンサー( アイコン)の活動を、コアなファン( コアファン )と一緒に盛り上げていく会員制のファンコミュニティ アプリです。


いいなと思ったら応援しよう!