スタートアップ資金調達に困らない株式総数、創業者持株比率の考え方
ベストプラクティスまとめ
本記事の結論は以下になります。
発行済株式総数は1万株以上にする 🐣
発行可能株式総数は1,000万株にする 💥
共同創業者の持株比率は様々なケースを参照し、十分に納得感を持って決める 🙆♂️
Buildは、定款などの法人登記書類を簡単に作れる利用無料のサービスです。本記事で解説しているような資本金、事業年度、株式数などをあれこれ考えることなくスタートアップに最適な形で設立できます。
発行済株式総数、発行可能株式総数とは
発行済株式総数とは、実際に会社が発行している株式の数のことで、設立時の発行済株式総数は定款によって定めます。
発行可能株式総数は、その会社が発行することのできる株式数の上限のことです。なので発行可能株式総数を100株、発行済株式総数が100株になっていると、それ以上株式を発行することができません。
そうなるとスタートアップの場合、通常株式を発行して行う資金調達をすることができなくなってしまうので、定款を変更して発行可能株式総数を引き上げる必要性が出てきてしまいます。
株式総数、創業者間の持株比率を決めるポイント
(1) 発行株式数は1万株以上にして資金調達をスムーズに
結論からいうと、設立時の発行済株式総数は1万株以上にすることがオススメです。
例えば設立時の発行済株式総数を10株にしてしまうと、VCなどからPre評価額1億円で資金調達をする際に、1株あたりの株価が1,000万円になってしまいます。
こうなると、100万円だけ出資してもらいたい場合など、細かい調達額の調整ができなくなってしまい、資金調達の際に困ってしまうので、株式分割が必要になります。
また、ストックオプションを発行するとき、0.01%単位で渡したくても、最小単位である1株が1%になってしまう(発行済株式総数が100株だと)と渡せないので、こういう場合でも株式分割が必要になってしまいます。
しかしあらかじめ10,000株にしておけば、1株あたりの株価は1万円になるのでかなり自由度高く資金調達が可能になりますし、ストックオプション発行の際にも0.01%単位で渡せます。
したがって、細かい融通が効くように一定程度の発行済株式総数を確保して柔軟に対応できるようにしておくのが大切で、その目安として10,000株あれば十分と考えられるので、10,000株以上がオススメとなっています。
以前の資本金に関する記事「オススメは1万円以上?スタートアップ起業時の資本金の決め方」でも似たような現象について書いたので、資本金について気になる方はこちらも参照ください。
(2) 発行可能株式総数は1,000万株にしてIPOまでスムーズに
発行可能株式総数についても十分余裕を持って設定することが大切です。
こちらも例を出して考えてみます。極端に少ない発行可能株式総数にしてしまうと、発行できる株式数の上限に達してしまうことがあります。
通常資金調達は株式を発行し、それを新たな株主に割当てることでお金を集めるので、発行可能株式総数に達して「これ以上株式が発行できない!」という状況になってしまうと、定款を変更しなければなりません。
そして、その目安が1,000万株になります。1,000万株があれば上場・IPOの際の発行可能株式総数の見直しタイミングまで問題なくいけます。
(3) 共同創業者の持株比率の決め方
共同創業者の持株比率の決め方についてですが、これは全く正解がありません。
会社の成り立ち、創業者間の関係性、能力、コミット具合、会社としての考え方・カルチャーなど多様な論点によって構成されているため、創業者同士で十分に納得し合った上で決めることを推奨します。
ただ、様々なケースはあるのでパターンのみここでは紹介します。
(3-a)創業者1人に大きく寄せるパターン
創業者1人が7-9割、場合によっては9.5割〜と大部分を持つパターンです。
スタートアップを起業する場面では、合意形成によって始まるというよりも誰か1人が旗揚げをし、中心的役割を担っていることが少なくないです。
会社を引っ張っていっているのは「この人だよね」という存在があり、コミット・仕事具合や広義の意味での能力において、均等ではなく大なり小なり偏っていることが現実でしょう。
そこで、その中心的な人物に大多数の株式を持ってもらうというパターンで、責任や意思決定の所在が明確になりスピーディーかつ独断的に進められるメリットがあります。
もちろん、経営において株式比率が全てでもないのでそんな簡単な話ではないですが、明確化されている事実はそういう空気を良くも悪くも育みやすいですし、社内も投資家も上場した際には株式市場も「この人が中心である」と受け取るでしょう。
ただ一方で、他の共同創業者との間でのインセンティブの不整合が生まれる可能性があります。
(3-b)均等に分けるパターン
こちらは創業者の間でほぼ同じ比率になるように分けるパターンで、トップアクセラレーターのY Combinatorでは、均等に分けることを推奨しています。
主な理由は
とあるように、初期のリスクテイクや貢献よりも長い目で見た将来的な仕事に目を向けることを推奨しているからです。
より詳細に見てみると下記を理由にあげています。
大きな価値のある会社を作るには、7年から10年かかること
エクイティが増える=モチベーションが上がる(失敗がデフォルトのスタートアップはモチベーションが成功を左右する)
あなたが共同創設者を評価しなければ、他の誰も評価しない
スタートアップは、アイデアではなく実行が重要
さらに踏み込んで↓のようなことも言っており、自分と同じ分け前を渡したくなるような人じゃないなら、そもそもパートナー選びが間違っているんじゃないのか?という厳しい指摘も。
ただ、初期のスタートアップでは現実的にそのような優れた人材と一緒にやれることは稀で、多くの場合は後になる方が優秀な人材が入ってきます。
また、初期に求められる能力と会社が成長していく過程で求められる能力は変化していくため、共同創業者が常にそれに対してベストな存在であり続けられるかは分かりません。
つまり、一旦のマイルストーンであるIPOまで初期のパートナー(共同創業者)が最初のポジションで活躍し続けるかは不透明であり、途中で配置が変わっていったり、辞める可能性も当然あるわけです。(べスティング等の方法でヘッジは可能)
したがって、YCの言う理想はありつつも一概に「均等にしましょう」と言い切れないケース・バイ・ケースの現実があります。
そうなると、創業者間の持株比率を決める上で重要なのは、様々なケースを参照しながら、自社や創業者間の価値観・文化・状況に沿って納得感を持てる意思決定をすることです。
絶対的な正解はないので、自分たちにとっての正解を見つけましょう。
まとめ
「スタートアップの発行済株式総数、発行可能株式総数、創業者間の持株比率」を考えるにあたって重要な観点は以下の3つになります。
発行済株式総数は1万株以上にする
発行可能株式総数は1,000万株にする
共同創業者の持株比率は様々なケースを参照し、十分に納得感を持って決める
Buildは、定款などの法人登記書類を簡単に作れる利用無料のサービスです。本記事で解説しているような資本金、事業年度、株式数などをあれこれ考えることなくスタートアップに最適な形で設立できます。
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