【めくるめく】秋の気配
ようやく秋の気配が感じられるようになってきました。
秋といえば、大学の教養課程での英語の授業を思い出します。
リスニング専用教室で The Thanksgiving Treasure という米国のテレビドラマをみて会話をききとるという授業でした。少女が、自宅でつくったサンクスギビングの食事を、父と仲の悪いおじさんにもっていってあげる、それがきっかけとなって仲違いが解消する、という話だったと思います。
枯葉に覆われた小径、木もれ日にきらきら照らされた池の水面、風に揺れる小枝から舞い落ちる紅葉。
どの場面にも秋の空気に満ちた美しい自然が映されていました。
とてもロマンティックな気分でした。
時は流れ、わたしは就職し、その数年後に米国に滞在することになりました。
ダウンタウンから少し離れた住宅地に居を構えたのですが、秋になると、あのテレビドラマの画面そのままの美しい自然の風景をそこかしこにみることができました。
りんごの産地だったこともあり、自宅から遠くないところにアップルサイダーミルがいくつもありました。りんごジュース製造所なのですが、昔ながらの水車小屋でりんごを搾るのです。多くのアップルサイダーミルでは、秋になると週末には搾りたてのアップルサイダー(りんごジュース)とドーナツを販売していて、敷地内の紅葉とおだやかな木もれ陽のなかでわたしは心もおなかも甘いもので満たされていました。とても優雅なひとときでした。
帰国してからはずっと日本を離れずにいるのですが、あのときの風景を心に思い浮かべるだけで、心が溶けるような、とても幸せな満ち足りた気分になれます。
明日は飾らない素朴なドーナツとりんごジュースを買ってこよう。
なつかしい思い出とともにおいしくいただくことにしよう。
心おだやかに秋の気配を感じつつ。