【めくるめく】八甲田山死の彷徨を思い出した
寒くなりましたね。
寒いといえば、寒さで死にそうになったことが一度だけあります。
かれこれ20年近く前になりますが、お仕事でウクライナのキーウにひとりで訪れたことがあります。
ホテルに着いた翌日に政府の中央省庁を訪ねることになっていたのですが、まずは今日のうちに下見しておこうと考えました。街中にあるサインはすべてウクライナの言葉で何が書いてあるかさーーっぱりわからんし、でも翌日にアポイントメントがあるかぎりは、時間と場所を守らねばならんし・・・ってことで、今日のうちに下見をしておくのはとってもよい考えのように思いました。
ホテルのスタッフは英語が通じたので、その人に省庁の場所をきいて、どのバスに乗ればよいのかを訊ねました。
ー バスで行くのですか?!
ホテルの人は驚き、タクシーをすすめましたが、今日は下見。時間もあるし、どっちみち街を通るのであればタクシーだと味気ないのでバスに乗りたいと思ったのです。バスだと行けないわけではなく、特段危険というわけでもないとのことでした。
当時はまだスマートフォンが普及していなかった時代。ホテルでもらった地図を手に、ホテルのすぐ前の広場のバス停に行きました。
ほどなくやってきたバスに乗りました。しばらくすると住宅街。さらに進むと建物がまばらになり、どんどん寂しくなってきました。
え?え?
日本でいうたら霞が関に向かってるんちゃうのん?なんでこんなに町並みが寂しいのん??
バスがバス停に停まり、発車し、またバス停に停まるたびに、ますます寂しい景色に。全然霞が関っぽくならないので不安がずんずん膨らんでいきました。
あかん。
もう降りよ。今日は諦めて反対向きのバスに乗ってホテルに帰ろ。
そう思って次のバス停で降りたのですが、その日は実は真冬の2月。道路のほかには雪以外なんにもみえません。車道は除雪してあったのですが、歩道には腰のあたりまで雪が積もっていてうまく歩けません。
道路の反対側にはきっとバス停のサインがあるはずですが、まーったくなんにもありそうにありません。
いうても一国の首都やで。なんでこんなになにもないのん?
歩道は歩けないので車道の端っこをとぼとぼと歩いてバス停を探すことにしました。あたりを見渡せど、車も人も通っていません。そうこうするうちに身体が芯から冷え切ってしまいました。このまま寒さで意識が朦朧となり、歩道に積もった雪に倒れ込んでこのまま天国に行くんやないかしらん。
絶望が込み上げてきたとき、ふと目の前に建物がみえました。
ぜんぜん頑丈そうでない簡易な建物でした。近づいてみるとコンビニのようなお店でした。
ドアを押して中に入ると。
あたたかい!
お店の中はパンやらお菓子やら、棚にたくさん並んでいました。お店の人に話しかけてみようとしましたが、ウクライナの言葉を知らないのでまったく会話ができませんでした。とにかく店の中は寒くはないので、再びこのお店から出るのは勇気のいることでしたが、結局おそらくは30分ほどお店の中であたたまったのちに、また外に出て歩き始めました。
今度こそ死ぬんちゃうやろかと思いつつ歩いていると、そうこうするうちにバス停らしきサインを見つけました。言葉がわからないので、それがほんとにバス停なのか確信は持てませんでしたが、もう歩くことも限界にきていたのでしばらくそこでバスを待つことにしました。
結局その後バスがきて無事にホテルに帰り着くことができました。またその帰りのバスでもいろいろなできごとがあったのですが、長くなるのでそれはまた別の機会に投稿することにします。
外国でバスに乗ってえらい目にあったことは実はほかにもあります。
世界はますます物騒になってきているし、もうこんな軽はずみなことはしないでおこうと自戒の念を新たにした今日この頃でした。