展示会にいるちゃんねーの話

地獄の展示会シーズンが終わった。

展示会は終わってからが始まり、ここから有望な商談のフォローが始まる。
とはいえ、フォロー先が振り分けられるまではひとときの凪という訳だ。

今年入った新人に展示会はどうだったかと問うと、彼は少し神妙な顔をしてから
「僕思うんですけど…」
と切り出した。いわく、

ウチの会社もコンパニオンを雇った方が客が入るのではないか

だそうだ。
ちなみにこの場合のコンパニオンとは、ちょっと露出度の高い服装で笑顔を振りまくお姉さん方の事を指す。
予想外の意見ではあったが、その真意を聞いてみるとただお姉さんが見たいという訳ではないようで、

展示会は企業に興味を持ってもらう場なのだから、来場者を呼び寄せる役割としてコンパニオンのお姉さんを配置するのが有用だろう

という意見らしい。
なるほど確かに最もらしいが、話を聞きながら全く同意できない自分がいる事に気づく。

今まで表面化していなかった(スルーしていた)自分の中にある
「展示会にいるコンパニオンのお姉さんへの違和感」
を知覚した瞬間だった。

相当数の会社が展示会でブースにコンパニオンを配置しているので、それにより来客が増える事は恐らく間違いないのだろう。
その点に於いて彼の意見は正しそうだが、いった何が引っかかるのか。そのポイントは恐らく、「何故客が集まるのか」にある。

「何故客が集まるのか」この点で彼と私の意見は一致した。

「メイン顧客層である男性が、露出の多いコンパニオンを見たいという下心を持つから」

である。
要するに、コンパニオンという存在は男性客鼻の下を伸ばし、そこに釣り針を引っ掛けているのだろう。

この辺りで自分の中の違和感にフォーカスがあって明確になってきた。自分は
「エッチじゃない時にエッチなものが苦手」
なのだ。
いや、これでは意味不明だ。

「展示会という真剣なビジネス(情報収集・商談)の場で、性的な感情を呼び起こさせようとするものが苦手」
なんだと思う。
凄くミスマッチに感じる。あんな場所でどうやって鼻の下を伸ばせというのだろうか?

私は彼に疑問を提起する。

おねーさんに釣られてきた客は、ウチの製品に興味があって来たわけではないのだから有効商談のマッチング率は低いのでは?

彼曰く

展示会では名前が売れる事も大事なので、コンパニオンの存在がきっかけでも来場に繋がれば意味はある

なるほど、この辺は出展者の戦略によるだろう。続けて、

彼女らは、職業として自分の魅力で稼いでいるのであって後ろめたい事ではない(ので、我々も堂々とコンパニオンを活用すればよい)

と来る。

これは若干複雑な三体問題の様な様相を呈してくる。

まず、企業は自社の商品を知ってもらう為に展示会での来場者を増やしたい。多くの来場者候補は(依然として)男性であり、男性をターゲットとした集客力を求めている。
一方でコンパニオンは自身の魅力で男性に対するアテンションを得る事ができる。ここに対価が発生すればそれは真っ当な商売だろう。

一見すると成立している様で、やっぱり大事な事が抜け落ちている気がする。大事な事とは、前述の通り

コンパニオンの魅力で集客された客が、雇い元の企業やその製品にも興味を持つか、プラスイメージを持つか

だろうと思う。
どうにも私個人としてはこの点を懐疑的に考えている様だ。おっぱいに引っ張られてきたおっさんが次の瞬間に画期的な製品のPRを読み込めると思わないのだ。そこには気持ちの切り替え的なギャップがある。少なくとも自分にはある。

ここまで読んでくださった方にひとつハッキリさせておきたいのは、私が決して禁欲の聖人ではないという事だ。

普通に女性から性的な魅力を感じるし、それは当たり前だと思っているので後ろめたさはない。もちろん感情を抱く事と、発言や行動は切り離されるべきものとして認識している。
それが現代社会での真っ当な倫理観であり、その線引き無しに適切な人間関係は存在し得ない。

色々理屈を並べ立てたが結局、私は心を乱されたくないだけなのかもしれない。
展示会でコンパニオンのちゃんねーを見て、エッチですね〜という馬鹿もおらんやろ。

思っても仕方ないし、そもそもそういう気分になる場所でもないし、邪魔しないでくれ!

という事なのかもしれない。

中々解せないな、自分。

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