tari textile BOOK 後編 #6「I ♡ T」作品NO.15
作品NO.15
→経糸:落花生(石灰)、落花生(みょうばん)、落花生(おはぐろ)
緯糸:落花生(石灰)、落花生(みょうばん)、落花生(おはぐろ)
整経本数307本、半反
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「I ♡ T」展も残すところ最後の作品となりました。この作品は、落花生布の第2弾。昨年収穫した実を種にして育てた、自家製落花生としては2世の落花生布です。
作者はこのように自家菜園にものめり込み、収穫した作物を食べること、さらにはそれらを用いて保存食を作ること、そしてそれらを布づくりにも活用することに、このうえない喜びを感じていました。
作者はそんな自分に対して、ふと、いったい自分は何がしたいのだろう、どこに向かっているのだろう、と立ち止まって考えました。そして思い当たったのは「タリ族」になる、ということでした。
テレビや本で目にするような、未開の山奥で原初の暮らしを営む少数民族たち。作者は子供の頃から彼らの原始的なものづくりや狩猟採集の技術、自然の植物や動物と深く関わりながらの生活に、憧れを抱いていました。
それまでは彼らのその姿を漠然とかっこいい、と感じていた作者でしたが、ここに来て自分の目指している生き方や向かっている方向に彼らの姿が重なること、そしてそこには自分にとってとても大切な何かがある、ということに気づきました。ただ、彼らと全く同じことをするのではなく、自分のできる範囲で、自分なりのやり方でその方向に向かってみたい、と思うようになっていました。
そして作者は、姪っ子が幼いころに自分につけた「たりちゃん」というあだ名から、「タリ族」というオリジナル少数民族を妄想的に立ち上げ、今、この現代日本に生きるかっこいい少数民族「タリ族」になることを目指して、日々研究と修業を重ねています。
どうやら、作者がつくりたいと思う布、目指している布も「タリ族」にヒントがありそうです。「タリ族」には見本も正解もルールもありません。そしてもちろんその「タリ族の布」にも答えはなく、自分で築き上げていくしかありません。しかし作者はこの時、火起こしでようやく火種が生まれて煙が上がってきた時のように、自分の目指している布のかたちが少しずつ、うっすらと見えてきた手応えを感じていました。