月ミるなレポート㉗
今世紀最大の月ミるな
地球のそとの壮絶で美しい宇宙を
月ミるなは知ってる。
地球はあまりに古く、小さく、
歴史のつくりあげた生の形式に
しばられている。
地球の文化は月ミるなに
地球型のおとなになる事を強制した。
月ミるなは宇宙服をぬぎすてて
太陽系をこえて宇宙の彼方へ去っていった。
月ミるなてゃになりたい!
火の使い方を覚えた月ミるなの
マシュマロを焼く姿におもいをめぐらせる。
初期の月ミるなは「うー」とか「あー」しか
言えませんでした。
複合的発音ができるようになった月ミるなはよくしゃべりました。
悪魔は真っ黒な服…
天使は真っ白な服…
もうすぐ白い天使の人がやってくる…
そしたらお別れ…
道しるべに撒いたパン屑…
鳥どもについばまれた…
餓死寸前の状態で深い森を…
さまよいつづける…
夢の中であった、ような…
さすがのるなさんも…
ドーナツを目の前にすると…
一滴の涙がこぼれた
月ミイヤイヤるな
やがて産業革命がおきて
月ミるなはベルトコンベアーで
生産されるようになった。
ふえつづけた月ミるなは大気とまざりあって地球全土をおおう空間になった。
あらゆる価値や秩序が倒錯し転倒した。
醜怪なものが美しいとたたえられ、
邪悪なものが善とされた。
虚妄が実在に、確実なものが不確実になり、
ついには時間と空間が入れかわった。
超時空要塞月ミるな
月ミるながコンポタの蓋を開ける音がして
冬になった。
地球から夏がなくなって70年が過ぎた。
ほとんどの人はほんとうの夏を知らない。
ぼくたちの若いころに戦争なんてなかった。
月ミるながリズムを線におきかえて
模様と輪郭が発達した。
電話と電球が距離と時間を超え始めたとき
ひきかえせ…と月ミるなの声が
かすかにきこえた。
月ミるなゆらゆら遊具
月ミるながあつさ1センチの鉄の帯で寝台にしばりつけられたままこちらを見てる。
4歳年上の恋人をかみ殺した月ミるな。
唇をとじてしまえば上下4本の牙があるとはとても思えない。
固くむすばれた月ミるなの魂を癒やすことができると思うのは傲慢である。
月ミるな先生
月ミるながスマホをなぞると昼には昼の夜には夜の大きなお友だちが次々にあらわれた。
月ミるなそれ自体が。言動。望憶。行為。儀礼。反問。共同。孤独。現象。
月ミの前にだれも立つな、と言いたい。