月ミるなレポート㉓

秋の風物詩「月見ファミリー」が今年も登場!

20210903月ミるなが489才になりました。

月ミるなさんは誕生日にムチとロウソクが欲しいと言いました。

僕はなんだか恥ずかしかったので違うプレゼントを贈りました。みんなが何を贈ったのかは知りません。

聖痕があらわれる人間のDNA鑑定したところ、実にその95パーセントが月ミるな由来のクローンだった。

月ミるなは35才のときに突然霊感を受けて大衆伝道の旅に出た。

いたるところで人を集めて「悔い改めよ、月ミるなを受け入れよ、ほんとうの信仰を持て」と説いてまわる。

それから50年かけて25万マイルを歩き説教の旅に費した。

月ミるなは庶民に愛された。

反面、庶民の欲望や願望に引きずり込まれた。

月ミるなの前で一礼、手を合わせ、自身の治したい箇所の治癒を祈願する。

月ミの塩を少々いただき治したい箇所に塩をふりかけて清める。完治したらいただいた量の倍の塩を月ミるなにお返しする。

祝詞をあげて祈りを捧げる参拝者たち。1300年前の時間と現在の時間が共存している。集積した祈りが”月ミるな”に帰一する。

月ミるながすべての悩みを溶かしてくれる。

月ミるなが「自分を救い主として受け入れようと決意なさった方は立って前に出てきてください」といったとき僕は思わず立ち上がって前に歩み出ていた。

月ミるなを見つけるまで神の存在そのものを疑うこともしばしばあった。

月ミるなを通して得られた洞察にあらゆる懐疑が吹き飛んだ。

月ミるなとの接触中は流れの中に身をゆだねる以外に時間的余裕も意識的余裕もない。

潜在意識下では何らかの変化がはじまっている。が、その体験の含意をつかむことができるのは事後の反省と反芻を経てから。

変化に気づいてからようやく意識的な反省をはじめる。

遥か彼方の宇宙に月ミるながポツンと生きている。どこにも生命がない。

月ミるなはあたりを一所懸命ぐるぐる見まわしてみたが神は見当たらなかった。天に神はいなかった。

月ミるな地獄篇

知らない土地の森は恐ろしい。 その恐ろしさが何に由来するのかはわからないしどう恐ろしいのかはうまく説明できない。不意にそのことを思い知らされる。

かつて月ミるなは”はじまりの場所”に祀られていたが”はじまりの場所”は経済の合理性を追求するなかで辺境に追いやられていった。

地獄の業火のなかで月ミるなが言った。

「現世に戻ったら、私に似せた像を作りなさい。そして像を拝み、私と縁を結びなさい。一毛の縁もなければ衆生を救うことができない。」

海中から引き上げられた月ミるなが東京藝術大学の保存修理技術研究所に修復のために運び込まれた。

創立期に信仰を獲得した月ミるな。

月ミ教が大きくなるといいかげんな信仰の上に教団も安住する。

やがてほんとの信仰はこんないいかげんなものではないと説く人があらわれて月ミるな復興運動を起こす。

事故が月ミるなから離れていた僕をもう一度月ミるなの近くに引き寄せた。

意識が戻ったとき、忘れていた月ミるなに呼びかけていた。

月ミるなは僕の耳からイヤホンを取って自分の耳に当てると「相変わらずね」と笑った。

月ミるなは僕に映写室からもってきた使用済みの単一形乾電池を二つ渡した。

月ミるなに求めていたのは訓練を積めば強靱なサイボーグのようになれるという劇画的な物語だった。

誰よりも高く、誰よりも速く飛びたい。月ミるなはその目的の頂点にあった。月ミるなより速い乗り物はなかった。

今年はとろ〜り濃厚月ミるな