怒らない男が激怒したエピソード3選①
昔から、怒っている人を小鹿に、もとい小馬鹿にしたり、おちょくって火に油を注いだり、相手が真剣であろうがなかろうが、いつでもふざけて遊んでしまう人間だった。今は随分とマイルドになったが、許されるギリギリのラインを攻めて楽しむという悪趣味な性格は健在である。逆に、相手にも同等の熱量でおちょくり返してもらって、その応酬を楽しめれば最高だ。
一事が万事その調子だから、人に何を言われてもあまり怒りを感じることがない。そりゃまあ嫌味や皮肉を言われて気分がいいことはないし、罵詈雑言を浴びせられて黙っているほど人間ができているわけでもない。ただ、心の中はあくまで冷静で、この局面をどう乗り越えようか、こいつをどんな手でやっつけてやろうかと脳内で知恵をフル回転させているのである。
しかし、エムグラム性格診断において温和で我慢強く、情緒が安定した性格と評判の自分でも、まれに怒りが爆発することがある。思い返したところ、ここ5年ほどで3つのエピソードが頭に浮かんだ。せっかくなので、ひとつずつ振り返ってみたい。
1. コ○ミスポーツの運営
概要
【激怒対象】コ○ミスポーツの運営
【激怒理由】杓子定規で理不尽な対応
【激怒レベル】★★★☆☆
はじめに
筆者の息子は3歳からコ○ミスポーツのスイミングに通っている。ひよこから始まり、20級、19級…と順に進み、1級でバタフライ25mの基準タイムをクリアするとミッションコンプリート。ベストスイマーなるクラスに昇格し、以後は50mのタイムトライアルを延々繰り返していくことになる。
ビート板?聞いてないよォ
このベストスイマーになるタイミングで、足でも挟めるプルブイ兼用のビート板を用意する必要があったらしい。事前に説明はなく、ベストスイマー昇格後の初回にコーチから息子に直接伝えられたのだ。
この時点で、まずハテナである。普通、1級のテストに合格した時に次回は新たにビート板が要ります、と話があってしかるべきではないか。それがなかったために、この日はあわてて施設の備品を借りることになった。
まあいい。良くないが。スクールが終わった後、その旨を息子から聞き、2人でネットを物色してarenaのビート板を購入した。値段は3000円そこそこだった。実はこの行動に少し問題があったのだが、この時点では気づいていなかった。
ちょ、待てよ!
そして翌週のスクールである。見学中はすっかりビート板のことなど忘れており、ベストスイマーの練習はやっぱりキツそうやなーなどと思いながら、プールの様子をのほほんと眺めていた。
練習が終わると、息子がなぜか半ベソで帰ってきた。何かイヤなことでもあったのかと思って聞いたところ、コーチにスクール指定のビート板でないとダメ、新しく買い直しなさいと言われたようだ。買ったばかりなのにと反論したが、ルールだからの一点張りで聞く耳を持たなかったという。
ハァ――――――――――!?そんな話いっさい聞いてないし!事前の通達も説明もなしにコ○ミ製やないとあかんってお前なめとんのか!しかもあろうことか「買い直せ」やと!?おいくら万円したおもとるんやこのフンコロガシが!!
モンペと言う勿れ
こんなアホな話がまかり通ってたまるか!と激怒し、帰宅後すぐas soon asマッハでスクールに電話をかけることにした。餅つけ、ペッタンペッタン。もとい、落ち着け。まずはこちらの主張を整理しなくては。
こちらの主張
ベストスイマーに昇格するとビート板が必要なこと、かつスクール指定でなければならないこと、いずれも事前に説明がなかった。しかしながら、こちらで用意したものは指定外につき使用不可と言われ、購入しなおすことを求められた。事前に説明がなかったのはそちらの不手際ではないか?少なくともこちらの落ち度ではないのに、一方的に再購入を求めるのは理不尽に過ぎる。
もっと言うと、3000円そこいらするビート板をすぐ買い直せとのたまう無神経さ、ルールだからと一切をはねつける柔軟性のなさ、杓子定規な対応には一言二言三言四言五言申し上げたいのだが、それは今後のやりとり次第であろう。
対決の時
心は熱く、頭は冷静にと自分に言い聞かせ、おもむろに電話をかけた。ぷるる、ぷるる、がちゃ、はいコ○ミスポーツでございます。燃えさかるマグマを内に秘めつつも、あくまで紳士的にコトの経緯を説明した。しかし、相手は事務のバイトにつき即答できないということで、コーチに確認後、折り返してもらうことになった。相撲に例えると、肩すかしである。
何を言われようとも絶対にこちらからは折れない!ひ…退かぬ!媚びぬ省みぬ!という確固たる決意を新たに、折り返しの電話を待った。待った。待った。そしていよいよ運命の瞬間が訪れる…ぷるる、ぷるる、がちゃ、はいこちら葛飾区亀有公園前派出所。
「連絡不行き届きですみません!ビート板はそのまま使っていただいて構わないので!」
ええええええええええ!!!!!あ、あっさりすぎん??振り上げた拳のもって行き場が…頭ぽりぽり。一瞬で気勢をそがれてしまい、物腰やわらかく承知いたしました、ありがとうございますとお礼を伝えて電話を切った。
おわりに
すんなり要求が通って拍子抜けだったが、こちらサイドに反省点を探すとするならば、ビート板を買う時、水着と同様に指定の用具があるのでは?という想像力が働かなかったことだろう。もともと自前で用意するのはゴーグルぐらいで、それも特にこだわらなければ受付で購入できる。なぜネットで買う以外の選択肢が浮かばなかったのか、自分でも謎である。
また、息子が聞き逃していただけで、本当はスクール指定だと伝えられていた可能性もある。だとしたら、それこそモンペであろう。いや~、ジェントルマンで良かった!スラム団地民の血が騒いだが、それを理性で抑えるのが成熟した大人というものだ。こういう時に本質的な品格が問われるのだな。はっはっは。
②へ続く。