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海沿いのカクテルの売り子だって、誰かがやらなきゃいけないんだ。それをやるのが君だって、いいじゃないか。[短編ストーリー#2:プエルトリコ]

プエルトリコの本島からフェリーに乗ること1時間。美しいビーチで有名なビエケス島という小さな島がある。
到着した、宿にチェックインをしたところでかなりおなかがすいていたので、近くに食べるところがあるかどうか検索してみた。

「中心街からは離れているけれど、フードトラックならひとつありそう!」

ということで向かったのは、なーんにもない道にぽつんと立っている、Gracias, De Nadaというお店。スペイン語で「ありがとう、どういたしまして」という意味だ。
(余談だが、最近のGoogle Mapはフードトラックすらも掲載されていてすごい)

一軒家のガレージに泊まっているトラック。その手前にはテーブルが4~5個並んでいて、私たちのほかに1家族がおいしそうにハンバーガーをほおばっていた。
メニューの看板を見ると、超アメリカンな感じ。バーガー&ホットドッグ。

トラックの中に立っている夫婦らしき二人に声をかけて、バーガーとオニオンフライを注文する。スペイン語なまりの返答が返ってくるかと思いきや、思いっきりネイティブ英語だった。

― アメリカから来たんですか?

コーラを持ってきてくれた奥さんに、声をかけてみた。

「そうなんです。もともとはノースカロライナ州に住んでいたの。だけど、5年前くらいからこっちに引っ越してきました」

ー すごいですね。何かきっかけはあったんですか?

「もともと島での生活はあこがれていたけれど、なかなか実際に引っ越そうとはならなくて。でも、家の地価がどんどん上がっていって、ご近所さんがつぎつぎに引っ越していって。私たちの家の家賃も上がることになったから、もうこれは神のお告げね、ということで決断できたの」

ー 最初からこのフードトラックをやってるんですか?

「はじめは、二人とも市内のレストランで働いていたんだけれど、数年前に夫が友人と一緒にこのフードトラックを立ち上げたの。夫もその友人もシェフなんだけど、『もう高級料理を作るのはやめにして、バーガーでも作らないか』っていう話になって。

私は今でも夜は別のレストランで働ているんだけど、昼間はここを手伝っているわ」

ー お二人とももともとはどんな仕事をしていたんですか

「ずっとレストラン業界よ。私はもう学生アルバイトのころからずっと。」

ー なんでレストランなんですか?

「シンプルに、食事が好きだから。美味しいものも好きだし、それを一緒に家族や友人と食べるという時間も好き。だから、大好きな食事にかかわれる仕事をしたいから、レストランで働く。単純な理由だけど」

ー 夫婦で島に引っ越してきてフードトラックなんて、素敵です。あこがれていても、なかなか勇気が出ない人がほとんどだと思うので…

「夢見てるんじゃなくて、誰かがやるしかないのよね(笑) Someone's gotta do it. 
夫とは仲が良いし、楽しいわ。本当はレストランの仕事をやめてフルタイムでこれをやりたいんだけれど、お金がね…もう少ししたらできるように頑張ろうと思ってます」

***

なんか、ご飯食べに来ただけなのに、良い話が聞けた…そうじんわりしていたら、ハンバーガーが届いた。と、そこで、私たちが世界一周をしているという話を聞きつけた旦那さんと今度は会話が進んだ。

「なんで世界一周してるんだ?」

と聞かれたので、私たちの想いやプロジェクトの話をした。

そうしたら、すごく共感してくれて。

「僕がいつも言ってるのは『海沿いでカクテル売ってるウェイターだって、誰かがやらなきゃいけない』ってこと。それをやるのが君だっていいんだよ、別に。Someone's gotta be the waiter selling cocktails by the beach, and it can be you.  やってみればいいんだ」

アメリカのごく一般的な夫婦が、プエルトリコの島でハンバーガーを焼いて売っている。なんにもない山の道路沿いに、普通の一軒家とフードトラックが1台。犬が一匹、庭には鶏も数羽。車で5分のところには、海。
この島での生活が、この上ないくらい幸せだとのこと。

お腹も心もいっぱいになるランチタイムでした。


What makes you happy? あなたにとっての幸せは?

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お礼に、こんなものもプレゼント。好きな出会いに、Gracias!

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