『Silent Love』
視力を失った音大生と、声を失った青年のラブストーリー。
決して派手な映画ではない、設定も少し現実離れしているけれど、それが全く気にならない。
細く伸びていくガラス管を澄んだ水に満たされつづけている、そんな感覚をずっと味わっていました。集中が途切れず、目が離せなかった。
主演の二人を始めとする俳優陣の繊細な演技がなければ成り立たない、その意味で本当に観る価値のあった、出会えてよかった映画でした。
山田涼介、ひと言も喋らないんです。なのに全身から伝わってくる感情や不器用さや、友達との信頼関係。
こんなにいい俳優さんだったなんて知らなかった。アイドル時代も、生まれつきのセンターで天性のスターなのかと思っていたら、全く恵まれない状況からがむしゃらな努力だけで成功していった人物だということを、今回調べて初めて知りました。
俳優自身の人柄や深みがあってこそ魅力的な役が作られるのだということを、ひしひしと感じた。
浜辺美波さんは二人の男性に愛される役どころで、それがすべてなので、彼女に魅力がないと映画が崩壊するのですが、これ以上にない美しさと透明感でずっと見惚れていました。
目の見えない演技も、意志の強い話し方も、すべてが凛としていて『美丘』の吉高由里子と少し重なりました。
私がこの映画を観に行ったのは、
「主題歌負けしていないか?」という自分の問いに対する答えをただただ知りたいがためで。
Mrs. Green Appleの「ナハトムジーク」が、あまりに素晴らしい歌であり、音楽だったから。
この歌がなければ観に行っていなかった。
何が凄いって、こんな静かな繊細な世界の片隅の映画に(喧嘩のシーンは激しいけれど)タイタニック並みの壮大な主題歌を合わせてきて、それが映画と一ミリもずれていない。
一ミリもずれていないのに、万人に向けた人生の応援歌になっている。
「主題歌負けしていないか?」という問いの答えは、
少し負けているかもしれない。
なぜなら歌詞が本当に深くて、音があまりにドラマチックで、映画のその先を行っているから。
大袈裟な、と言えてしまいそうなほど。
なのに不思議なほど、一ミリも違和感がないんです。
その事実だけで、本作の音楽を含めた作品としての素晴らしさが証明されている気がします。
そこへきて、音楽が久石譲さん。さらに古田新太が出ている。もう観ない理由がありません笑
夜に包み込まれていく印象なので、レトショーをお勧めします😌