しょうの

写真と詩と、日記を少し。

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最近の記事

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犯せない領域の中に探す 甘やかな面影 終えない心の中に溶けた眼射し たとえばこの日に出会ったのは 硝子瓶の中で細やかに息をする光の泡 世界に透けて揺れる水面や 淡くなる茎の色 隣の部屋から微かに聴こえてくる 時計の秒針の眠そうな響き

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      泣いていたのは私だった 時間が逆流するかのごとく 記憶は巻き戻っていく 巻き取られたこの数年のことを 息苦しく 息苦しく 見つめていた 遠くで感じた胸を締め付けられるような嗚咽 私だった 私の呼吸だった 息を吐き 吸い また吐いて その間から漏れていたのは 取り戻した時間に嗚咽して安堵している 私の呼吸だった

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        それぞれの記憶で測っている あの距離    あの距離       あの距離 風になびく髪の味 哀しく膨れ上がる腹痛 薄暮に眩暈 影の色は薄く薄く追う人の姿を平らくする もし音が消えて 叫ぶ声が色として見えてくるのなら あなたの残した声は街を染め抜き 長い眠りに沈む夜は こと 賑やかになるのだろう

        • 10

          錦の帯がこのこころに射し込んで 連れ立つ波のむこうに ささやかな幻影を架けた 暗い砂浜の しっとりとして 彼女の肌にも似た 墨色のかおり 暮れもせず 開けもせず ただ光らないで射している帯の色を いつか向けられた言葉の答えとして 水の中に沈めた

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          知ることが恐ろしい 鮮やかな木漏れ日が肌を染め抜き 重なるほどに 透明な陰が胸を締めつける 識ることが忌わしい 空の明るさに 己の濁りを確かにする 風の歌は梢の戦慄き しなる枝枝に命の重さを見る 去ることが誇らしい 切りたての爪は うすはりのような月の貌 星々を隠す雲を待ち侘びている 問うことが恥ずかしい まだ心はそこにあると 揺れる葉の向こうから 嗤われているのが分かるから

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          閉会しない螺旋階段の海で ただひとつの音を探す 耳を澄まして 耳を澄まして 冷たくなった願いを 焚火にかざす 閉ざされた扉と囲われた塀 茂みの隙間から漏れる灯 あなたの内なる傷痕と わたしの見せかけの矜持が 視線を交わす 色褪せた溜め息が 開かない扉を叩き続けて 擦り減った靴底から 溢れ出す嗚咽が 涙の谷を満たすまで

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          マルシェからの帰り道 腕いっぱいのリラの花を抱えて 鼻先に薫る瑞々しい季節

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          渇いた音の流れが 影の隣を滑り降りていく 凍えた光の群が 耳の奥に眠った時間の夢を歌う 底へ底へと降りていく あたたかな皿は 彼が全部食べてしまったから 毛皮だけを撫でて 濡れた傷口の数だけ 白い石を並べよう

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          満月の翌日 明日を占うように歩く道 光よりもたしかな姿が 一瞥して俯こうとした視線を捉える なんのために なんのために なんのために 理由を並べて ありったけ どうにかこうにか より良い明日を迎えたいがために 視線を縫いとめたものたちが せめて美しいかったよと 心の中に優しく留まるように

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          眩しさに抱かれて 翳りながら燃える空で 満たされていたい この上もなく何気ない世界から 痺れるような哀しみと 焼かれるような失意と 目も眩む激憤とを束ねて 地平線の炎に焚べて弔う 燃え残ったささやかな灰は 雲をはこぶ風が攫っていく わたしたちは回りつづける 世界の少し外れた場所で 奪われた時間が祈りに溶けて 深い谷間に豊かに降り注ぐ日まで

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          きっといまも 燃えている 空の終わりへ向かおうとする 光のかたちを 惑わそうとするように 濛々と煙をあげて 燃えている

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          そこに立てば 識ることになる 目を閉じれば 感じられる 陽の光の 熱さ 眩さ 吹き徹る風の 厚さ 冷たさ 真昼の街のきらめきと 音をかき消す音の烈しさとを #風景写真 #詩 #つぶやき #ショートショート #ポエム #現代詩 #自由詩 #私の作品紹介 #短編

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          降りつもり 折り重なって 横たわる 吸い取る音の いくつかは 閉ざした口元の もう漏れることのない言葉#landscapephotography #landscape #snow #snowyday #poet #poetry #雪景色 #現代詩

          細雪 [日記]

           新年の読み初めになんとなく『細雪』選んだのは、ソラリという青空文庫がダウンロードできるアプリと、大学院の時に同じ研究室のY君からある日突然手渡された『陰翳礼讃』の影響が色濃い。谷崎潤一郎は永らく私自身の課題であり、勝手に因縁を感じていた(そういう作家は何人かいる)。  『陰翳礼讃』を読んだ時の衝撃は忘れられない。美しいものと不潔なものとの境がわからなくなって、本の中にある翳りと湿り気と僅かばかりの据えた匂いを放つあれやこれやが、非常な艶かしさでもって心の奥の方にスーッと一

          細雪 [日記]

          骨董商の町医者 [日記]

          近所の整形外科に行った。確か口コミサイトで評判が良かったはず……と、うろ覚えでかかったのだが診察内容としては病院としては自分には難しいところだった。 しかし、診察室や待合室は面白いもので溢れていた。 ガラスケースに陳列された昔の薬袋や壺。重厚な木製の細かな抽斗が付いた箪笥。籐の籠、たくさんの振子時計、お能の面、色紙に描かれた夢二の絵(もったいないことに日焼けしていた)。ノリタケの花瓶はパーティションで区切られた隅の方で、窓に降ろされたシェードから漏れるささやかな光に煌めい

          骨董商の町医者 [日記]

          願い事をした日 [詩]

          願い事をした日 叶わないと知った日 俯いて揺れる髪の糸 指を滑るさらさらという音 柔らかくて白い首筋 襟の奥にのぞく 翠色の影 うすく滲む甘い血のごとく 浮かんでは消える おもかげ、まぼろし 願い事を聞いた日 叶えてあげたいと思った日 19.avril 2016 

          願い事をした日 [詩]