【こえ #34】何度がんが見つかっても笑顔
河合 利恵さん
河合さんと向き合ってお話をさせて頂いた後に頭に浮かんだ言葉は「泰然自若」。落ち着いた素敵な笑顔の奥に、何があっても動じない心が透けて見えた気がした。
まだお若く、何年も前に咽頭がんを患ったわけではない。告知を受けたのはわずか2年半前の2021年4月。喉がいがらっぽく咳が出るのは季節の変わり目の寒暖差のせいだと思ったが治らない。大病院に診てもらって「がんではなく、のどにカビが生えている」と言われるも、服薬を通じて取り除かれたカビの向こう側にがんが現れた。
母方ががん家系だったからか「へー、私もかー」程度で落ち込むことはなかったという。数カ月入院して放射線と抗がん剤治療を経て退院するも、2022年1月には再発してステージ4に。「手術しないと半年生きることはできない」と言われ、咽喉頭(鼻の通り道の突き当りから食道の入口まで)とそこから連続する頸部(首)の食道を摘出した。
手術を経て、(個人差はあるが)首にはU字の傷が入り、がんが胸との境界線まで及ぶと胸の真ん中にさらに縦に傷が入る。食道を切除した後は、小腸(空腸)をお腹から切り離して、切除した食道のところに移植する。そのままでは血流が来ないので、空腸の血管と首にある血管を縫い付ける。また、食道と併せてがんが広がった咽喉頭も同時に切除すると、息の通り道である気管を切断して喉から直接体外に出る気管孔を新たに形成する。
(初めてお聞きした方には特にわかりづらい説明であることを謝罪しつつ)河合さんは、そんな手術を二度にわたって行った。そのせいだけでもないが、「(新たに形成した)気管孔から痰が多かったり、(手術した)首回りが痛かったり痺れたり、『こんにちは』と五語続けて話せることもあれば話せないこともある」。同居する高齢のお父様との生活を気遣いながら発声訓練を続けたり、ヨガにも通うことで首の動きを改善させている。
発声できないことは「常にじれったいですよ、話そうと思っても大したことじゃなければ口をつぐんでしまう」。そのため、術前に就いていた接客業は迷惑をかけると思って自ら辞職を申し出るも「話せなくてもいいから続けてほしい」と慰留され、「いらっしゃいませ」などのカードをたくさん作って「どうにかなった」。
ご自身の家系のご病気を見てこられたことや、大きな手術を経験しても少しずつでも環境を取り戻したりお仕事が何とかなったりしたことが「泰然自若」につながったのかと思った矢先だった。
「検査で今度は食道にがんが見つかったんです。明日病院に行って入院日や手術日が決まります。進行性じゃなさそうで、今回は内視鏡手術で済みそうです」。ご自身より周りの方が動揺しておられるそう。「でも、悩んでも治らないでしょ」と微笑まれた。
どこまでも「泰然自若」。退院されたらまた筆談でお話ししたい。
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