【こころ #1】気分が落ち込んだり、憂鬱になる。毎日の生活に張りがなく趣味や娯楽も楽しめない。不安を感じたり、集中力も続かない。自尊心が下がる…
山田 悠平さん
気分が落ち込んだり、憂鬱になる。毎日の生活に張りがなく趣味や娯楽も楽しめない。不安を感じたり、集中力も続かない。自尊心が下がる。心だけじゃなく、食欲に波ができたり、睡眠リズムが整わず、疲労感が抜けない。
誰でも一度は何かしら経験したことがあるのではないか。果たして、これは病気だろうか?
実は上記はどれも「抑うつ」の典型的な症状例である。ただ、それを知っていれば病気かなと思い、知らなければ疲れているのだろうと思う。そんな分かれ道があるかもしれない。
山田さんは、中学高校で不登校気味ではあったものの、大学3年のゼミが始まるなど環境が変わる過渡期に、それまでには感じたことのない疲労感を感じ、食べられず、眠れなくなった。
当時、大学の先輩がうつ病を患っていたこと、さらには「うつは心の風邪」というキャッチコピーが目についていたこと(注:製薬会社による抗うつ薬キャンペーン)から、「敷居なく」精神科医療の扉をたたいた。「抑うつ」と診断された。
“本来の”風邪であれば早めに診察にかかってよかったと思うものだが、山田さんは「早めに行ってよかった印象はない」とはっきりおっしゃる。精神科にかかった後は複数の薬を処方される『多剤併用』を経験するなど、「医療は良いイメージばかりではなくえらい目に遭った印象もある」。
なぜか。
精神疾患は「違和感を自身の中で過去と比べてみたり、(医者との間でも)レントゲンのように客観的に把握でき共通言語にもなる手段がない」。にもかかわらず、診療報酬との関係で診察時間が数分程度と限られることもあり、「コミュニケーション量が絶対的に足りない」。それが「(患者には)不安を喚起させるし、受けたい医療を受けられているという感覚が阻害されやすいし、ときに医療不信を招く」。他方で、国内の精神科病院に新しく入院に至る患者さんのおよそ半分が自身では望まない形で実施される非自発的入院だそうだ。
精神科での治療は薬物治療が中心だ。山田さんはこれまでに診断名もいくつか変わり、入院経験をふまえて「自分の症状を薬で治すかどうかさえ向き合うような期間があってもよかった。」と振り返る。医療受診での積み重ねが、病気に向き合う気持ち自信をどこか失わせていく状況もあったようだ。そんな当事者としての経験を他の当事者とも集まって共有し、言葉にして社会にも発信していこうと、山田さんが2016年に立ち上げたのが精神障害当事者会『ポルケ』だ。
「周囲はよかれと思って医療に福祉にと言うが、医療は“治す”、福祉は“働けるようになる”という、どこか一律的に決められたゴールが設定されてしまっている。そういったメインストリームにカムバックしなければいけないと囚われると、しんどさを生んでしまう」と話された。
山田さんは、当事者がそうした有形無形の抑圧から離脱して自身を俯瞰し、自分らしさや当事者主体を再考したり、支えるために、「当事者同士のつながり、エンパワーメントが必要だ」という。そのための具体的な取り組みを『精神障害当事者会ポルケ』で展開をしたいと考えている。
▷ 精神障害当事者会ポルケ
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