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【横断 #33】症状があっても未診断の人がいるんです


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りょうこさん


 北海道の自然豊かな地域。いつも歩く沢を登れず、頻繁に転ぶようになる。太ももから腰回りの痛みに襲われる。それから少しずつ日常生活を送ることが困難になり、車椅子生活になった。
 現在、筋力の低下は全身に見られ、握力も1kg程度。一方で筋緊張が上がって身体が硬直し身体の動きを阻む症状に10年以上悩まされている。慢性的な拘束性換気障害があり1日の大半を人工呼吸器を使って過ごしている。
 こうしたりょうこさんの症状は現在、「免疫性神経筋疾患の可能性が高い」ことが分かっているものの、具体的な病名は分かっておらず経過観察中だ。



 自身の症状に診断を求める過程は、「孤独ではないけれど、暗闇にたたずんでいる感じでした」


 当初、足元がおぼつかず身体に痛みが走ったので整形外科に行くも、原因はわからない。それは他の科を回っても同様だった。急激に筋緊張が上がる発作に襲われるようになり、大学病院で脳波を見てMRIを撮ってみても、何も出てこない。「精神的な症状では?」と精神科に行けば「精神疾患の可能性は薄い。何らかの難病では?」と言われる。精神科と神経内科の行き来を繰り返した。結局、何らかの難病であると分かるまで、受診した精神科は10か所以上、脳神経内科は7か所にも及んだ。
 ずっと診断が下りないことで、「自分の伝え方が悪いのではないか」と自分を責めた。さらに、病名を答えられないことで周囲は病気ではないと考え「甘えている」と考える人もいた。かつて受診した病院では「こんな症状は見たことがない」「診断がつかない即ち精神疾患」と突き放されたり、詐病を疑うような言葉を投げかけられたことさえあった。すでに過去の出来事とはいえ、身体の苦痛を幻想のように扱われ理解されなかった頃に受けた心の傷はまだ癒えていない。


 その後、北海道内のみならず本州の病院まで足を延ばした。
 針筋電図という検査の結果でALSの診断が付いたこともある。しかし試しに行った免疫療法で症状の軽減が見られ、何らかの免疫の異常が深く関与している可能性が高まりALSは否定された。
 一方で免疫療法により身体の硬直はやわらぎ、筋力もわずかながら上がり握力も3kg~5kgに。そうした結果を受けて何らかの免疫の異常が原因で起きる神経筋疾患であることにようやくたどり着き、定期的な治療とケアを受けられるようになり、現在は病気や障害を抱えながらも生き生きした生活を送ることができている。「今が一番幸せです」


 しかし未だに診断名が無いことで、通院先の脳神経内科以外で、理解を得る手立てが無いのが課題だ。急なケガや肺炎など、普通の人でも起こり得る不調の際に救急病院を受診しても、また何も分からなかった時のように、突き放されてしまうことも少なくない。


 また病名が分からないということは、予後も不明であるということに他ならない。
 「先の見通しは立たない。何が正しいと導いてくれる人も前例もなく、誰かに相談したくても、誰も適切な答えが分からない。(症状と)どう生きていくか悩みながら自己決定していくしかない」
 病名という道しるべは周囲のためにも必要だと感じている。
 以前、『ALS(筋萎縮性側索硬化症)』の見解が出た時のこと。訪問看護師さんに伝えると、「しっかり支えていきますからね」と目の色が変わった。診断がなければ周囲もどうしていいかわからない。「診断があることは、プロに明確な役割を与えることにも気づかされた」
 いつの日か診断が確定することを心から望んでいる。


 りょうこさんは診断を求めるこうした過程をブログに綴ってきた。
 そうした中で気付けば、「私も診断がついていない」というメッセージが届くようになった。かつて病院で「こんな人は見たことがない」と言われた自分と同じように、診断が付かずに苦しむ人が全国にいることに気付かされた。
 ただ、「診断がついていない人」が多くいたことは即ち、「周りの人に伝わりづらい/伝えられない人」が多くいることも意味していた。


 「未診断で困っているという情報が世の中に広く知れ渡らないと、患者も胸を張ってそれを口にできない」
 りょうこさんは2年前、理解が得られにくい病と生きる当事者と支援者による会『ゆるふプロジェクト(#ゆるふプロジェクト)』を立ち上げた。思い切って外に発信することで耳を傾けてくれる人も増え、「いま大きな手ごたえを感じている」


 りょうこさんから、自身が直面してきた環境を批判する言葉は一つも出てこなかった。病院や医師や支援職にせよ、周囲の家族や友人にせよ、「(診断がつかないといった)聞いたことがないことには、拒否感があるもの」。だから、誰も悪くない。
 だからこそ、まず、そういう人もいることを知ってほしい。「診断つかないなら、病気じゃないんじゃない?」と考えがちな風潮を、「診断つかないことも、大変なんだよね」という意識へと変えていきたい。その上で、診断書がない中でも、病院にせよ職場にせよ、どういったサポートができるのかを考えてもらえたら、もっと嬉しい。


 恥ずかしながら、Inclusive Hubもこれまで、既存のカテゴリーありきで多様な心身の不自由にまつわるストーリーを発信してきたように感じる。今回「未診断」を知り、それを世の中に伝える一助になりたい。





ここまで読んでくださった皆さまに‥


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