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【みみ #44】「聞こえるけど聞き取れない」を漫画化


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きょこさん


■工場での会話が聞き取りづらくて悩んだ日々
聴力が正常であり音は聞こえているのに、聞き取れなかったり聞き間違えが多かったりするAPD(聴覚情報処理障害)。海外では「聞き取り困難」という意味の「LiD(Listening difficulties)」という呼び名が主流になってきたため、日本でもLiD/APDと表記されるようになってきた。


イラストレーターのきょこさんは学生時代から友人の話が聞こえづらかったり、教師の話を聞くよりも教科書を読むほうが授業を理解できたりすることはあったものの、自身の聞こえ方に疑問を抱いたことはなかった。


だが、成人後に工場で働き、悩むように。機械の音で話し声が聞き取れず、作業中の指示を理解することも難しく思えたからだ。


当初、きょこさんは「覚えが悪くて、記憶力や理解力が低い私のせい」と自分を責めた。そんな時、目にしたのがLiD/APDに関するネット記事。「私もそうなのかも…」と思い、疑問を持ちながら働き続けた。


そうした生活の中で、育児のストレスもあいまってうつ状態に。だが、「自分の好きなことをしよう」と語るYouTuberの声に救われた。


母親なんだから、やりたいことは我慢…。10年間も、そう思ってきたきょこさんは背中を押されたように感じ、憧れていたイラストレーターの道へ進んだ。



■「聞き取り困難」を漫画で発信
イラストレーターとして活動する中で、ふと頭に浮かんだのはLiD/APDのこと。私と同じで、知らずに悩んでいる人はきっと多いはず。そう思い、LiD/APD研究の第一人者である小渕千絵教授に取材。『マンガ APD/LiD って何!?: 聞こえているのに聞き取れない私たち』(合同出版)を制作した。



取材時には、自身の聞こえも検査。ごく短い音を聞き取る、雑音の中で音を聞き取るなどの検査を受けた結果、LiD/APDの症状があると告げられた。


この時、きょこさんは自身に発達障害があったことも初めて知ったそう。「私は社会不適合な落ちこぼれじゃない。原因があるなら仕方ないと思えました」


LiD/APDの症状には個人差がある。きょこさんの場合は、耳より目から得た情報のほうが記憶しやすく、大人数よりも1対1で会話をするほうが聞き取りやすい。ザワザワしている居酒屋は苦手で、声が小さい人の話は聞き取れないことがある。


この特性を、ひとりでも多くの人に知ってもらいたい。そう考え、きょこさんはクラウドファンディングを行い、自身の漫画を学校の図書室や放課後デイサービスセンター、児童支援発達施設、地域の図書館などに寄贈。大人と子ども、両方に届くよう努めた。


きょこさんいわく、小渕教授の研究データによると、子どものLiD/APD当事者は聞こえに関する困りごとを親に伝えることが難しいケースも多く、親子間で認識の差が広がりやすい傾向にあるそう。


「LiD/APDのお子さんは先生や親御さんに『話を聞いてない』『やる気がない』と誤解されがちなんです。正しい知識をもって接してほしいなと思います」


そう訴える一方で、きょこさんは親が子どものLiD/APDを受け止める場合、必要以上に問題視しないことも大切だと考えている。


障害とは、その人の困り感の度合いによって生まれるもの。本人が困っていないことで親が過剰反応してしまうと、子どもがLiD/APDである自分を卑下することに繋がる可能性もあるのではないか。


そんなきょこさんの配慮に触れると、我が子の様子を見ながら必要な対策を親子で一緒に探していくことの大切さを痛感する。




■適切な配慮を気軽にしてもらえる社会を目指して
LiD/APDは、診断できる機関や医師が少ない。現在、検査は数ヶ月待ちの状態。当事者ニーズに基づいた診断と支援の手引きは発表されているが、医師によって診断方法は異なることもあるそう。中には、検査のために複数回の通院が必要なケースもあり、社会人の当事者が医療に繋がるハードルは高い。


ただ、当事者の発信によってこの特性の認知は少しずつ高まってきている。将来的には、特性を打ち明けるだけで症状が伝わり、適切な配慮を気軽にしてもらえる社会になってほしい。そう、きょこさんは願う。


適切な配慮は当事者の年齢や状況、症状によっても異なるが、例えば学校であれば、授業前に目で見て分かる資料が貰えたり、ボイスメモの許可が下りたりすること。会社であれば、口頭ではなくメールやメモで指示を貰え、聞き取りづらい電話対応が免除されるなどの配慮がなされることだ。


「ひとりで悩まなくてもいいし、気軽に助けてもらえると思えることも当事者にとって心の支えになります」


きょこさんいわく、LiD/APDを疑う時は、まず耳鼻科で聴覚検査を受けるのが望ましいそう。学校や会社の健康診断では見つからない難聴もあるため、医療機関で検査を行うことが重要とのこと。


「APDだと診断された場合は、自分が何にどう困っているのかを振り返ることも大切。私の漫画も参考にしつつ、対策を見つけてほしいです」


なお、LiD/APDは2018年に当事者会が開設され、現在はオンラインとオフラインの両方で当事者同士が繋がれる交流会を開催している。きょこさんいわく、当事者会では実際に行っている対策や病院の情報を聞くこともできるそう。


「人間だからできないことがあるのは、当たり前。自分を責めないでほしいし、聞き取り以外の部分で得意なことや素敵な部分はあるから自信を持ってほしいです」


聞こえるのに聞き取れない、LiD/APD。「難聴」とは違うこの特性がより多くの人に届いてほしい。





ここまで読んでくださった皆さまに‥


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