見出し画像

【め #40】新しい活躍の場はブラインドeレーサー


⭐ ファン登録のお願い ⭐

 Inclusive Hubの取り組みにご共感いただけましたら、ぜひファン登録をいただけますと幸いです。

 このような障害のある方やご家族、その課題解決に既に取り組んでいる研究開発者にインタビューし記事を配信する「メディア」から始まり、実際に当事者やご家族とその課題解決に取り組む研究開発者が知り合う「👀ミートアップ👀」の実施や、継続して共に考える「🤝コミュニティ🤝」の内容報告などの情報提供をさせていただきます。

🔽 ファン登録はこちら 🔽



いちほまれさん


 ダムの現場。国家公務員として大規模インフラを管理する技術職だったいちほまれさんが、明るい外から暗い中に入ると、「まわりの人はスタスタ歩けるのに、自分だけ足元が怖くてなかなか進めない」自分に気づいた。

 調べてみると、暗い所で物がよく見えなくなる『夜盲』に行きつく。最初は「病気とは思わず、対策できるものと思った」が、近くに同じ症状はいないし、Xで調べればネガティブなつぶやきも多い。医者に行けば、「(病名である『網膜色素変性症』が)国の指定難病だから医療費助成の申請をするように」と言われ、深刻さが増していった。


 今、そこから14年が経った。いちほまれさんの視覚は、「中心部分は見えているが、視野狭窄が進み、モノを拾おうとすると見えない」状況だ。

 「進行はすごく緩やか」だったのだが、仕事への影響はそうはいかなかった。大規模インフラを管理する立場として、事業者に安全を促す立場が、「自分の足元がおぼつかない」。残業や出張はつきもので、単身赴任や災害対応まである。結果的に同じようには技術職を続けることが難しく、退職を余儀なくされた。


 そうして実生活でも車の運転をやめなければならない中で、ゲームをきっかけに知ったのが「eスポーツ」だった。

 実は、そんないちほまれさんは現在、eスポーツを通じて障害者が自分らしく・やりがいをもって社会参加する支援を行う株式会社ePARAが立ち上げた、バリアフリーeモータースポーツチーム「Racing Fortia」に所属するブラインドeレーサーとして活躍している。「いちほまれ」は、プレイヤーネームだ。



 ”オリパラ”と言われるように、スポーツでは通常、健常者と障害者は同じ形で競わない。しかし、eスポーツは「健常者と一緒に戦うことが主流」で、業界としても障害者のみならず高齢者にまで裾野を広げようとしている。

 なぜ、健常者と同じルールの上で戦うことができるのか。理由は、競技「環境を整える自分なりの工夫」が可能だからだ。

 例えば、健常者がeスポーツを最大限楽しもうとすると、目の前から左右に広く3画面を並べたりするのだが、視野狭窄のあるいちほまれさんは、狭い目の前しか見えない。そのため、いちほまれさんは、目の前に小さいモニターを設置し、左側に他の車が来れば左のLEDランプが点滅し、コース上に危険な状態が発生した場合に追い越し禁止となるイエローフラッグが出れば黄色のLEDがつき、車体が縁石を踏めばシートの振動デバイスが反応してコースを外れそうなことがわかるように工夫した。

 「車の改造と同じ感覚ですよ」と話すいちほまれさんの運転環境は、障害に応じてカスタマイズされている。



 環境を工夫することで健常者と同じ立場に立つ。これは、ゲームだけの世界で終わりだろうか?就労の世界にも活かせないのだろうか?

 いちほまれさんは、現在の仕事に不満があるわけではないが、「やはり昔の技術職に戻りたい」。病気から眼精疲労が強く出るなどの影響でフルタイムで働くことは難しくても、積み重ねてきた技術資格が宝の持ち腐れになる。

 かつては気に留めなかった点字ブロックも、改めて視覚障害者の視点で見ると、道路・河川・空港など大規模インフラにおけるバリアフリーの改善点も見えてきた。

 いちほまれさんに限らず、キャリアの途中で視覚障害を患った方にとっては、環境が変わっただけで、自身のスキルは何ら変わらない。そこを再び活かす環境を工夫したい。


 そのためには、いちほまれさんのような存在を広く知ってもらうことも欠かせない。

 しかし、地方に移住したいちほまれさんは、「2年経っても、白杖をもっている方に全然出会わない」。まだまだ偏見があるのか、例えロービジョンであっても、白杖を持たないリスクを承知の上で外出する人もいると耳にしたことさえある。

 いちほまれさん自身も、白杖をもってスマホを使って電車待ちをすれば、白杖=全盲という印象から怪訝そうに顔を覗き込まれた経験や、「山登りに行くんですか?」と聞かれたことさえある。それほど、視覚障害者の存在も多様さも知られていないのだ。


 障害者が表に出ない、健常者が多様な障害に気づかない、仕事や生活の面で障害者への固定概念が変わらない、また障害者が活躍できない、こんな循環を止めないといけない。

 だからこそ、まずは、いちほまれさんにブラインドeレーサーとして活躍してほしい。でも、eスポーツは始まりだ。同じように、その人の特性を踏まえ、環境さえ整えられれば、もっと能力やスキルを活かせる人がいる。想像を広げ、循環を逆回転させたい。


 循環を止める方策は人それぞれ。いちほまれさんの場合はそれが運転だった。共通の趣味を持つ仲間たちと一緒に車を走らせる。変わったのは、オンラインでeスポーツのフィールドに変わったことだけだ。舞台は変われど、これまでと違う形で喜びを見つけている。

 そして最近は、過去には持てなかった新しい夢もできた。それは、現在参戦している福井県内のトップeレーサーによる「福井県 E-MOTORSPORTS リーグ(FKI-ZERO)」で優勝することだ。視野狭窄のある自分がより良い走りができることできっと、障害に対する社会の認識は少しずつ変わっていく。そう信じていちほまれさんは今日も、自宅の車内でハンドルを握る。






ここまで読んでくださった皆さまに‥


⭐ ファン登録のお願い ⭐

 Inclusive Hubの取り組みにご共感いただけましたら、ぜひファン登録をいただけますと幸いです。

 このような障害のある方やご家族、その課題解決に既に取り組んでいる研究開発者にインタビューし記事を配信する「メディア」から始まり、実際に当事者やご家族とその課題解決に取り組む研究開発者が知り合う「👀ミートアップ👀」の実施や、継続して共に考える「🤝コミュニティ🤝」の内容報告などの情報提供をさせていただきます。

🔽 ファン登録はこちら 🔽




⭐ Inclusive Hub とは ⭐


いいなと思ったら応援しよう!