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【こえ #17】「もともとモノづくりが好きだった」青年のそれまでのエンジニア人生は順風満帆とは言えなかった…

荒木 瑞己さん


 第16話でご紹介した竹内雅樹さんとともにSyrinxで次世代の電気式人工喉頭(EL)を開発するエンジニアが荒木さんだ。電気式人工喉頭(EL)とは、あご下周辺に当てて振動を口の中へ響かせ、口や舌の動きで振動音を言葉にして発声することを補助する器具である。


 既にその開発に取り組んでいた竹内さんに出会ったのは、約3年前。

 「もともとモノづくりが好きだった」青年のそれまでのエンジニア人生は順風満帆とは言えなかった。

 「高等専門学校(高専)の在学中にメンタルやっちゃって」。屈託のない笑顔を見せる青年から出た言葉は予期せぬものだった。「その後大学に進学するも休学を挟んで2年ぐらいで辞めて、その後はメンタルと付き合いつつ毎日どうしようもなく、モノづくりと関係がないアルバイトもしてました」。

 そうした中、モノづくりのためのコワーキングスペースを提供するDMM.make AKIBAと縁あってつながり、そのコミュニティを通じて竹内さんと、そして彼が取り組んできた次世代の電気式人工喉頭(EL)と出会う。当時、竹内さん率いるSyrinxはダイソン国際エンジニアリングアワード(James Dyson Award)で日本国内最優秀賞を受賞した頃で、さらなるエンジニアリング改善に取り組もうとしていた。

 Syrinxに誘われ、「竹内さんは、私に居場所をくれた」。


 電子工作もプログラミングも得意じゃなかったが、高専で経験したメカ設計が活かせた。何より「次世代の電気式人工喉頭(EL)というプロダクトが純粋に面白く、ワクワクした」。

 しかし、取り組み続けた今でも課題は多い。

 第16話でもご紹介したハンズフリーに加えて、例えばノイズ。電気式人工喉頭(EL)をあご下周辺に当てた時に喉の中に伝わっていかなかった振動が外に漏れてしまう。押し付ければノイズは減るが、使う側は苦しくなるし、押し付ける適切な箇所や強さは使用者によって異なる。

 例えばロボットみたいな発声。現状の振動子を使う限りは高い(周波数の)音が出ず、特に女性が元の声を発することを不可能にしている。結果的に、現在の電気式人工喉頭(EL)では低音のロボットみたいな声しか出ない。

 例えば抑揚。どういう言葉を発するかで抑揚が決まるが、それを機械側で予知することは難しい。何をセンシングすれば抑揚を察知して、周波数の高さを変えられるのか。

 どの課題も壁は高い。それでも「自分が作ったもので誰かの生活が大きく豊かになる実感はあります」。もちろん現状では「到底満足できるものができていないことはわかっている」。それでも「声を出せたり、意思表示が少し楽になったり、当事者の方にとっての希望の光になれる」と確信している。だからこそ「もっと頑張って改善しないといけない使命感がある」。

 今は、製品のプロトタイプを当事者に“貸し出している”状況だが、「最終的には製品として世の中に出したい」。「当事者の方々が求める満足度やそのためのハードルは高いものも低いものもある。それをどこに設定するか、何かしら妥協点を決めて世に出したいんです」と繰り返し仰った。


 ずっとお話をお聞きして、感じた。今や当事者の方々も荒木さんに居場所をくれたのだと。その場所で好きだったモノづくりを必死でやろうとされている。

 荒木さんが参画するSyrinxの取組を支援してくれるエンジニアの方を募集しています。ご協力いただける方はこちらまでご連絡ください。


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