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【横断 #14】「地域の居場所づくり」のモデル事例


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奥 結香さん


 奥さんは2018年、大分県竹田市で「地域の居場所づくり」を行う『みんなのいえカラフル』を立ち上げた。竹田市は、高齢化率50%、人口わずか2万人ほどのまち。にもかかわらず、開所1年で0歳から102歳まで、延べ4500人を超える人が訪れた。

 奥さん曰く、まず、地元に貢献してきた80歳のおばあちゃんが応援してくれ、一緒に始めたことで「初速がついた」。そして、当初は有料にしたお茶やお菓子も、「よく来たね、これもあれも食べな」と話すおばあちゃんの姿を見て無料にした。そしたら、「気付いたら誰かが持ってきてくれて」、お菓子などを買わずに全面的な寄付も求めずに多くの方に訪れてもらえるようになった。



 地域の方が広く集まるようになった成果は、人数だけではない。訪れる方には、高齢の方、子育て中のお母さん、障害のある方など多様な方がおられる。「その間口が広い故に、例えば(障害者のある方がいたとしても)イコール障害者の施設と見られない」ことも大きな成果だった。



 さらに、そういう背景からか、発達障害のあるお子さんを抱えるお母さんから「自費でもいいから療育を受けさせてもらえないか」という依頼も来るようになる。それに応えて、奥さんは2020年、『みんなのいえカラフル』に、放課後等デイサービスと児童発達支援を提供する『アソビバTeto』を新たに併設した。

 奥さんが、福祉事業と地域の居場所づくりを併設したことのメリットを教えてくれた。経営的な側面もあるが、何より「障害があっても、(そういう括りではなく)一人ひとり、AちゃんBちゃんと受け入れられる」し、放課後等デイサービスの利用は制度上18歳までだが、「卒業後もそのまま一市民として居場所に遊びに来て、地域の人と変わらずに関わって、関係が終わらない」



 こんな素晴らしい取り組みを進める奥さんは、そもそも、どうやって「地域の居場所づくり」を始めるに至ったのか。


 原点の原点は、実は高齢者介護をやりたくて入った専門学校での実習だった。「気が乗らないまま」重度心身障害者の施設に行き、「自分がそれまで生きてきた価値観だけで、彼らの生きる意味は何?と思ってしまった自分に強いショックを受けた」

 しかし、重度の障害があっても全力で笑ったり泣いたり、排便一つとっても「一人ひとりしっかり生きている姿」を見て、「自分はそんな風に生きているか?」と思うようになり、「実習中に、ここに就職しようと決めた」

 奥さんは正直に話してくれた。「できる・できないで人を判断するものだと思い込んでいたんです。その前提に立つと、できない人が生きる意味あるのか?って。でも、そういう社会ってみんな生きづらくて、大きい恐怖を抱える社会。それを変えたいと思った」


 その後、奥さんは教員免許を取るなどして、色々な障害児支援の現場を回る。そんな中で発達障害関係の研修の講師が言った「自閉スペクトラム症の方は一人で海外にいるようなもの」という言葉が、奥さんの次のキャリアを拓く。自分もそういう孤独な世界観を少しでもわかろうと、青年海外協力隊として、マレーシアにおける障害児支援の現場に飛び込んだのだ。

 当然だが、言葉が通じず、日本語のように細かいニュアンスが伝わらない。表出する言葉が限られる中で、目線や表情を一生懸命追う。でも、そこに写真が一枚あるとコミュニケーションが全然違う。そんな日常に「子どもと一緒の世界観」を感じた。

 障害児支援については、インクルーシブ教育を掲げるマレーシアだが、地方の支援学級を巡回すれば、まだまだ人権的な扱いが遅れていたり、何より「障害に対する根本的な見方がずれている印象」をもった。「この子たちが学校を卒業したらどうするの?」という質問に答えられない先生達を見て、「地域全体で考えないといけない」ことを痛感する。

 そこで、奥さんが開催したのが、地域の学校や福祉施設を巻き込んだフォーラム。互いの取り組みを紹介し、共に勉強する機会をつくった。「学校でも施設でもみんな一生懸命に働いているのに変わらないのは、仕組みの問題」と感じると同時に、「自分がやりたいことはこれかな」と気付いた。

 こうして「帰国したら地域に焦点を当てて活動しよう」と思ってたどり着いたのが、冒頭でご紹介した、奥さんが活動を展開する大分県竹田市であり、そこに生まれたのが、前半でご紹介した居場所づくりや福祉事業だった。


 さらに奥さんは2023年、同じ竹田市内に新たな交流拠点&共生型デイサービスとして『Haru+(ハルタス)』も立ち上げた。併設ではない形で新たに始めることで、居場所づくりと福祉事業による相互作用の「再現性を確認しているところ」だ。

 奥さんは両方に取り組む意味をこう話す。「本当に困っている人は、ふらっと相談したい。だから、できるだけ多くの開所日が大事。そのためには、福祉事業でバランスを取る必要がある」


 一方で、同様に取り組みたいと相談を受けることも多いが、「福祉事業に一個人からチャレンジするのはハードルが高い。そこに補助金やその情報がちゃんとあって、挑戦者が増えるといい」

 その点で、奥さんにとって竹田市の存在も大きい。「行政に課題を言えば、それに合う補助金も提案してくれる。だからこそ、その期待をへし折らないように、居場所づくりに留まらず、地域の困ったことには柔軟に応えている」


 奥さんのキャリアや現在までの活動の歩みは、「出会う人が困っていて、それが社会的に理不尽だと思えば、それに応える。その繰り返し」だった。「仕方なく経営者って感じだけど、性に合わないと思いながらやっている」とも苦笑いして話してくれた。

 同じような想いをもつ方は全国各地におられ、なかなか踏み切れない方も、既に取り組んでいる方もおられるだろう。でも、それが奥さんのように発展していくには、各地で地元の方や行政など多くの支えや連携が必要だ。
 これは当たり前のことだが、まだまだ地域では当たり前になっていない。奥さんや竹田市の例を参考に、同様の連携や発展が多くの地域で広がっていくことを願う。




ここまで読んでくださった皆さまに‥


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