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【あし #20 / て #4 / しんけい #21】車椅子モデル、それ以上に模範である


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樹希さん


 樹希さんは、「車椅子モデル」をしている。しかし、樹希さんをその一言で表現してしまうのは、何か違う。

 「モデル(model)」の語源は、「小さな測定機器」や「尺度」という意味をもつラテン語に由来し、後に「模範」といった意味でも使われるようになったそうだ。

 樹希さんの歩みは、私たちが「自分だったら、どうだろう」と考えさせられる尺度になる、そして模範になる。そんな気がする。


 大きな交通事故だった。懸命な治療で一命はとりとめるも、樹希さんの意識は半年間もの間、戻らなかった。意識を回復しても、「一生寝たきりで、食べることもできず、植物状態になる可能性が高い」と告げられた。


 お母さまは、「それまで元気だった子が、突然180度一変してしまったことが受け入れられなかった」。毎日、樹希さんにリハビリを施しても、同じ状態が延々と続く。樹希さんの人生を「諦めようかと思ってしまう場面に何度か追い込まれた」。でも、やはり「どこかで諦めたくない思いもあって」。

 樹希さんも、ずっと同じだったのかもしれない。そうした繰り返しの中で、二人三脚で踏みとどまり続けた。


 そんな中で、それまでは目が開いていても部屋の一点を見つめるような虚ろだった樹希さんの眼に「突然生命力が戻り、瞳の輝きが変わり始めた」。そこから身体の部位が少しずつ動き始め、つながり始める。うなずくこともでき、意思疎通までが可能になっていった。

 既に気管切開もしていて、人工呼吸器を取ることは生涯できないとさえ言われていた樹希さんは、リハビリを経て、ついに声まで取り戻す。今では歌まで歌えるようになった。意識がない頃から「耳だけは聞こえているから」と言われ、お母さんがイヤホンに流し続けたのは、樹希さんが昔から好きだったEXILEだった。

 同様の症例を数多く見てきた医師にとって、こうした光景は「奇跡」だった。


 しかし、そこから順風満帆だったわけではない。入院生活から在宅介護に移ると、「車椅子に乗る、変わってしまった姿」として、外の社会と関わりをもつことになる。誰にも見られたくない、家族以外と関わりたくない、外出したくないと、樹希さんは心を閉ざし、ひきこもった。

 救ってくれたのは、SNSだった。SNSを通じて、「障害を抱えていても笑顔で生きている方がこんなにいる」と知ったことで、かつて入院して諦めそうになった頃のように、やはり「このままの人生でいいのか」という思いが湧きあがった。

 「一歩でも何か前進できることはないか」と、隠れていた生活からインスタを始めてみると、たくさんの見知らぬ人から1500件もの応援コメントが届いた。「社会ってこんなに温かいんだ」と驚き、それがきっかけで、樹希さんは閉ざされた殻から脱出していく。


 そんなSNS発信を続ける中で知ったのが、障がい者専門芸能事務所『アクセシビューティーマネジメント』が主催するモデルオーディションだった。まさに、さらに「自分が出る側になる機会」と応募し、見事合格した。

 同社の臼井さんは、合格理由をこう説明してくれた。「樹希は、他の所属モデル・俳優に比べて、重度です。現在の体の動きから、モデルや俳優としても未知数。でも、本人の取り組む姿勢と、本人の思いや考えを伝えてくれる保護者のサポートを見て、むしろ”障害が重い”先駆者としての姿を見せてくれるんじゃないかと感じたんです」



 樹希さんは今でも「孤独で辛くてきつくてしんどい」リハビリを続けている。その合間で週1回のスクールレッスンを受け、来月にはファッションショーにも出演する予定だ。

 「体の動きが良くなれば、もっと良い写真が撮影できて、もっと良い仕事ができる」。いま、そんなリハビリと仕事の両輪が回り始めている。事務所も「身体能力もコミュニケーション能力も、この1年で目に見える進化があった」と驚き、その後に付け加えた言葉が印象的だった。「不思議なことに、頑張っている人には、それが外に見えていなくても、仕事や問い合わせを引き寄せるんです」



 大事故に見舞われ、かつて「180度一変してしまったことが受け入れられなかった」お母さまは今、「こうなることが決まっていたのかなと思うぐらい、毎日充実している」と話してくれた。

 何度も心折れそうになりながら、時にはEXILEに、時にはSNSの見知らぬ人の声に、そして今は新しい仕事のチャンスに、諦めない姿勢を押してもらった。そんな樹希さんとお母さまは、「失ったからこそ、前を向いている。障害者だからかわいそう、車椅子だからかわいそうがまだまだある社会を変えていきたい」


 樹希さんの歩みを、障害の話と考えてはいけない。大きな困難に直面したときに、少しでも背中を押してくれるものを大切にとらえて、そこからもう一度前を向けるか。目標をもつことで努力との両輪をどう回せるか。それがさらなる後押しや大きな一歩を引き寄せる。

 やはり、樹希さんは、車椅子モデルではない。私たちに「尺度」や「模範」をくれる存在だ。だからこそ、車椅子モデルとして成功することを願ってやまない。



樹希Instagram
樹希TikTok
障がい者専門芸能事務所 アクセシビューティーマネジメント






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