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【しんけい #22 & 横断 #16】当事者家族の経験から情報格差を解消する


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南光 開斗さん


 南光さんは、法政大学現代福祉学部福祉コミュニティ学科に在籍しながら、主に社会資源の情報を通じて難病患者とそのケアラーの「選択肢の情報格差の解消」を目指す共創型情報プラットフォーム『Infora』の立ち上げにひた走っている。


 よく「スタートアップはソリューションの質よりも課題の質を先に高めろ」などと言うが、課題の質を高める鍵は、その課題が「自分ごと」であるかどうかだ。即ち、自分が痛みを感じる具体的な課題が見えているかどうか。

 その点で、南光さんが取り組む課題の原点は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)のお母さまと過ごしたヤングケアラーの日々にあり、圧倒的に「自分ごと」だ。



 お母さまがALSを患ったのは、南光さんが小学校5年生の時。発病からわずか1年足らずで寝たきり状態となり、その後、気管切開をして呼吸を続けながら、現在では指先まですべてが硬直し、僅かに力が残っている眼球のみ動かす形で二択の質問に答えられるかどうかという状況だ。


 発症直後から、「もともとかなり仲が良かった家族の中から怒鳴り声が聞こえるようになった」と南光さんは振り返る。

 ALSは、身体の動きが奪われるだけではなく、感情のコントロールも障害されることがあると言われる。例えば、感情を抑制できず、まったく関係のない感情が出てきたり、小さい感情が爆発したりする『感情失禁』や、怒りの表出が強く出たり、想いやりや気遣いができなくなる『情動制止困難』が知られている。これらは、あくまで病気の症状なのだが、周囲はどうしても患者の人格と誤解してしまったり、分かっていても苦しくなってしまうことがある。

 南光さんをはじめ家族が身体ケアをやろうとしても、お母さまの癪に障ることがあって感情が昂ると筋肉が硬直してしまい、ケアができない。そんな繰り返しの中で、意思伝達が難しいままに「互いに怒り合い、それを誰かが止めに入る毎日だった」


 この状況をどうすればいいのか、これからどうなるのか、とにかく”情報”が欲しかった。

 もちろんネットは普及していたが、自治体関係の情報は出てきても、NPOや民間の製品・サービスの情報は分散していた。導入した意思伝達装置も、お父さまの知り合いがたまたま知っていた程度の情報入手経路だった。

 当事者会に頼る発想自体はあった。ALS当事者会は全国に支部をもち、南光さん一家が暮らす兵庫県にも存在した。しかし、南光さん一家は県の中でもかなり田舎の方に暮らしていて、支部がある神戸まで車で3時間もかかる。「お尻も動かせない母を連れていくことはできなかった」

 何より、「ALSを発症し、日々できることが減っていく姿しか見えない中で、闇に包まれていく感覚だった。徐々に、より良くしようという発想が失われ、諦めていってしまう」日々の中で、”情報”の格差は広がっていくばかりだった。


 そうした中、中学に進んだ南光さんは、2年生の時に自律神経の働きが悪くなる『起立性調節障害』を発症してしまう。

 必ずしもお母様のケアが原因ではないが、新しい環境の中で、勉強も部活も成果を出すとともに、家に帰れば胃ろう(口から栄養を摂取することが難しい人が、直接胃に穴を開けて栄養を注入する医療措置)などのお母様のケアを夜遅くまでやっていた。そして、次の日はまた朝早く起きて朝練に向かう日々。

 いつの日か、朝になかなか起きれなくなり、不登校になった。それでも、南光さんの心の中心はお母さまだった。「そうなってからの方が、ケアに集中できた部分はある。母との時間が長くなればなるほど小さな感情の変化もわかるようになり、平和な時間だった」


 その後、レスパイト入院やコロナの影響もあってお母さまのケアの負担がなくなる中で、南光さんは改めて「やれることを頑張ろう」と自ら高校を選び、勉強にも生徒会活動にも力を入れていく。そんな集大成として地域内で「野外映画祭」を成功させたことで、大きなことをやる自信と、人を巻き込んでインパクトを出すことが得意なことに気付く。

 その時初めて、「辛いことだらけだと思ってきた過去を、母や他のALS当事者のためになる企画に変えられないか」と思い立つ。そして、福祉とまちづくりをテーマにした東京の大学に進学し、他の学生やALS患者にも積極的に出会うようになって育ってきた企画が、冒頭でご紹介した、主に難病患者とそのケアラーの「選択肢の情報格差の解消」を目指す共創型情報プラットフォーム『Infora』だった。



 「発信と講演にめちゃくちゃ力を入れてきました」。メディアやイベントには必ず顔を出し、企画を発信し続けてきた。その結果、南光さんのドキュメンタリーが製作・放映され、実績を認めてくれた大学からは学長と対談する機会も与えられた。学内でも有名になると、「今まで誰も来なかった仲間の募集に応募もあった」。地方でも講演をすれば、それを聞いた高専生も手を挙げた。

 ちょっと前までは、一個人の企画だった。でも、「数か月前から仲間が増えて、技術者として高専生も入ってきて、外部のプログラムにも採択されて伴走もしてもらえる。まずはプロトタイプを完成させて、年内にはクラウドファンディングを実施し、正規版をリリースしていきたい」と話す南光さんの顔つきは、もう事業を進める起業家そのものだ。



 「これが本来の自分だった」。何か良いことがあれば、実家に帰るたびにお母さまに報告する。当初はALSであることを外に言いたくなかったお母さまも、今では「喜んでくれる」。

 さあ、お母さまへの想いから始まった事業は、ここからだ。
 「具体的なビジョンもプランもあるが、学生主導で、実際にプロダクトをつくって販売した経験もない。WebデザインのUI/UXにどれぐらいかかるか、情報ツールキットを開発するには何から始めればいいか、まだまだ解像度が粗い。圧倒的に経験値が足りない部分をどうグッと進めるかが課題です」


 自分ごとの課題を抱え、自らも辛かった日々から再生し、そして多くの人に課題感を伝えて仲間を集め、さらに羽ばたこうとしている。こんな学生起業家を見て応援したいと思わない人がいるだろうか?ご支援いただける方は、是非ご連絡ください。




ここまで読んでくださった皆さまに‥


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