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【しんけい #12】意思伝達を拓く無二のウェアラブルスイッチ
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清原 美由紀さん
これまで「しんけい」のカテゴリーでは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や脳性麻痺などの病気により声を出したり体を動かしたりできずにコミュニケーションが難しくなる方々を支える支援者や『意思伝達補助装置』の存在をお伝えしてきた。
患者さんが意思伝達補助装置を使って意思表出を図るには、前提として、PCディスプレイ上の文字を視線入力やスイッチで選択する必要がある。
しかし、ALS患者さんの場合、最終的に目も開けられなくなってしまう『完全閉じ込め症候群(Totally Locked-in State: TLS)』という状態になるケースがある。第6話でご紹介した山本さんのようにそこから瞼を開いてコミュニケーションを取れる支援者もいるが、誰にでもできるものではない。
また、脳性麻痺の患者さんであれば、自分の意思とは関係なく、体が勝手に動いてしまう「不随意運動」のせいで、スイッチをうまく使いこなせないケースもある。
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こうした背景から意思伝達を諦めざるを得ない患者さんの課題をテクノロジーで解決したのが、清原さんが取り扱う『ニューロノード』だ。
ニューロノードは、体を自由に動かせなくても、筋肉内で発生する微弱な電流である筋電位というシグナルを精緻に捉え、それを「スイッチ・オン」に変換できる「世界で唯一のウェアラブルスイッチ」。
現代では障害のある方向けにも数多くのソフトやアプリが出ているが、それを操作できなければ意味がない。しかし、ニューロノードがあることで、それらを操作する「マウスを手に入れることができる」のだ。
さらに、ニューロノードはワイヤレスでiPhone/iPadにも接続可能であり、また利用に際して介助者によるフィッティングの負担もないため、利用者の環境に左右されず手軽に使うことができる。
スタイリッシュで福祉機器っぽくないデザインでスマートウォッチのように装着することもできるし、目の表情筋から捉えることもできる。前述した目を開かなくなったALS患者さんでも「眼球さえ動けば、YES/NOまでは意思表出でき」、不随意運動に苦しんできた脳性麻痺の患者さんさえも操作を可能にする(ハイパーリンク※音楽が流れます)。
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このニューロノードは、実は日本発ではなく、オーストラリアと米国に拠点を置く「コントロール・バイオニクス」社の製品。ALSでありながら世界的な理論物理学者として偉大な業績を残し、晩年は意思伝達装置を利用し、合成音声を使ってコミュニケーションを取っていたスティーブン・ホーキング博士との出会いから、生まれた。
コントロール・バイオニクス社はその革新的な技術を市場からも評価され、オーストラリア証券取引所への上場も果たしているが、同じ製品に対する扱いでも「日本とのギャップが大きい」と清原さんは話す。
ニューロノードは、海外では保険で全額カバーされている一方で、清原さんが日本でニューロノードに出会った頃は、障害者等の失われた身体機能を補完または代替するための「補装具」費用の支給を受けることができず、患者にとって極めて高額な製品だった。その一方で、既存の意思伝達装置はどれもその補装具費支給制度の対象になっており、その補助金を理由に患者やご家族に押し売りするような業者の存在も横目で見てきた。
そんな中でも、極めて高額にもかかわらず実際に購入してくれた人がいたことで「製品の良さはすごくよくわかったし、何より患者に会い続ける中で必要とされていることもわかっていった」。清原さんは、患者にどうにか製品を届けようと、当初在籍した製品の販売代理店から販売元のメーカーに籍を移してまで販売価格を引き下げ、レンタルできる仕組みも構築し、前述の補装具費支給制度の対象にもなるように環境を整えた。
その結果として、「子供に初めて投資した」と話すお母さんがいた。障害のある子供をもつ親御さんは「その子の塾や習い事から成人式の着物まで、一般の子供に比べて親としてお金を使ってやってあげられことが少ない」。そんな「子供の成長にお金を出すことが嬉しい」気持ちも救い上げた。
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清原さんは現在、地道に体験会を開くなど、製品への支持を広げる活動を続けている。その先は、「ニューロノードを使ってこんなことができるようになった」と親同士が話せるコミュニティもつくっていきたい。「障害のある子やご家族が引きこもりにならないように発信を続けたい」という想いがある。
個人向け以外でも、ニューロノードを使えば、例えば、病院のリハビリであれば、患者さんがどれだけどこに力が入っているか、「モバイル筋電図」として見える化できる。それがウォッチ形式で手軽にでき、データも蓄積できることは、回復を支援する医者にとっても有益であるため、病院向けにも広げていきたい。
こう書いてくると、清原さんはいかにもヘルスケア業界で経験を培ってきたように見えるかもしれない。しかし、清原さんがこの業界に入ったのは50歳を過ぎてからで、製品の対象となる患者さんを何も知らないまま「最重度の患者さんのところに一人で行かされ」、その繰り返しの中で「どの患者さんには何がいいか、肌でわかるようになっていった」。
誤解を恐れずに言えば、清原さんは、襟がピシッと立った白シャツを颯爽と着こなすような女性起業家のような素敵な女性だ。「サラリーマンの男性がスーツを着て福祉の現場に営業に行く。怒られるかもしれないけれど、そこからひっくり返しますよ」と話してくれた。
恐らく、清原さんがひっくり返そうとしているのは、そんなシーンに留まらないだろう。革新的な製品が生まれ、それが熱意をもった人によって市場に届けられる。障害のある方向けの製品・サービスにもっとそんなシーンが生まれてほしい。清原さんと話しながら、その想いばかりが頭をよぎった。
ここまで読んでくださった皆さまに‥
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「👀ミートアップ👀」の様子はこんな感じ
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「🤝コミュニティ🤝」の様子はこんな感じ
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