
【こころ #90】「書けない自分」を責め続けた
⭐ ファン登録のお願い ⭐
Inclusive Hubの取り組みにご共感いただけましたら、ぜひファン登録をいただけますと幸いです。
このような障害のある方やご家族、その課題解決に既に取り組んでいる研究開発者にインタビューし記事を配信する「メディア」から始まり、実際に当事者やご家族とその課題解決に取り組む研究開発者が知り合う「👀ミートアップ👀」の実施や、継続して共に考える「🤝コミュニティ🤝」の内容報告などの情報提供をさせていただきます。
🔽 ファン登録はこちら 🔽
ゆめのさん
日本の識字率(※文字の理解や読み書きができる人の割合)は、ほぼ100%。世界的にも識字率が高い国のひとつだと言われている。
だからこそ、文字を書くことが難しい「書字障害」の人や読み書きに困難が生じる「発達性ディスレクシア」の当事者は、ひとりで悩みを抱えてしまいやすい。漫画家ゆめのさんも、そのひとりだった。
書字障害や発達性ディスレクシアは、学習障害(LD)の一種だ。ゆめのさんの場合は読書や文章を組み立てることは好きなのに、子どもの頃から文字を覚えられなかった。漢字テストは大の苦手。黒板に文字を書く時は遅く、書き間違えもあったため、強いプレッシャーを感じた。
作文を書く時は、“書ける文字”しか使えない。自然と内容が制限され、書きたいことが書けなかった。

当時は、発達障害という言葉が認知されていない時代。周囲からのサポートはなかった。ゆめのさんは「何かの病気なのかも…」と思うも、最終的には「私の頭が悪いせいだ」と、できないことがある自分を責めるようになった。
できないことがあると、人生選択の幅は狭まる。20代の頃はアルバイトで生計を立てていたが、接客業をする中でも書字障害に悩まされた。領収書に名前を書く、スタッフへの引継ぎを書くなど当たり前のように発生する“書く業務”に対応することが難しかったのだ。
書けない私は劣っている。他人に知られたら恥ずかしい。そう感じ、“書きの困難”は、ひとりで抱えた。
やがて、生活に行きづまって心が不調に。メンタルの病気を疑い、ネットで当てはまる症状を検索する中で、「発達障害」を知った。私に当てはまる。そう思い、専門病院へ行くと、「注意欠如・多動性障害(ADHD)」と「自閉スペクトラム症(ASD)」であることが判明した。
ADHDとは不注意や多動性、衝動性などの特性がみられる発達障害の一種。同じく、発達障害の一種であるASDは、コミュニケーションの困難や興味の偏りなどが見られる。その病院では、長年悩んできた“書きの困難”が「書字障害」であることも判明した。

ようやく生きづらさの原因が知れたゆめのさんは自分と似た想いをしている当事者に届くよう、書字障害を題材にしたコミックエッセイを製作。同作は大きな反響を呼び、様々なメディアで取り上げられた。
その中で偶然知り合ったのが、ディスレクシアの世界的な研究者として活躍する専門家。「読み」の困難も抱えている可能性があると言われ、検査を勧められた。普通に読書もできているから大丈夫だろう。そう思っていたが、検査を受けてみると、発達性ディスレクシアであることが判明。自覚がなかった分、驚いた。
「読書って人によって読み方が様々だから、“本当は読むことが苦手”と気づきにくいのかもしれません」
日本では人口の約7〜8%(1クラスに2~3人ほど)がディスレクシアであると言われている。ゆめのさんのような「自覚がない当事者」も一定数いるだろう。言葉で伝えづらい読み書きの困難を抱えている人は、一般的な認識以上に多いと考えられる。
ディスレクシアに関する知識だって、正確に広まっているとは言いがたい。「文字が視覚的に認識できない人」と思われがちだが、実は字と音を結びつけることが苦手であったり、音読よりも黙読が苦手であったりと症状には個人差がある。
フォントや紙の材質、色などによって読みやすさが変わるかも個人差が大きく、科学的な効果には諸説ある。実際、ゆめのさんは字と音と結びつけるのが苦手なタイプで、フォントの違いなどで読みやすさは変わらないという。
「ディスレクシア=文が理解できないわけじゃない。その事実も広まってほしいです」
そう話すゆめのさんは漫画で自身の特性を発信したことによって気持ちに整理がつけられ、読み書きが困難なことを家族や友人に言えるようになった。市役所で手続きが必要な時には職員に特性を説明し、サポートを得たこともある。
「字を書き直せるので、漫画はデジタルで描いています。デジタルとアナログのいい部分を取り入れて、自分に合うやり方を見つけられたらいいなと思います」
自らの特性を積極的に伝え、時にはデジタル機器も使いながら、できる限り読み書きする場面を減らしていく。それが、ゆめのさんが辿り着いた“特性との向き合い方”だ。
テスト時間の延長が認められたり、問題を回答する際に代筆が認められたりするなど、今の教育現場ではディスレクシアの子に合理的配慮が行われるようになってきた。そうした社会の変化をゆめのさんは嬉しく感じており、さまざまな特性を持つ子が自分のスピードに合った環境で学べることが当たり前になってほしいと願っている。
ただ、社会としてはゆめのさんのように何のサポートも得られなかった大人のディスレクシアの孤立にも目を向ける必要があるだろう。
「読み書きが必要な場面から逃げなければならなかったことで、人生の選択肢が狭まった」というゆめのさんの言葉は、大人のディスレクシアが感じている歯がゆさを代弁しているようだった。
そうした生きづらさを社会全体で解決するにはまず、「文字を読めない・書けない人もいて当たり前」という常識を自分の中に根づかせたい。
同じ悩みを持つ同士に「仲間はここにいるよ」とエールを送る、ゆめのさん。彼女がXで発信する“心を詰め込んだ漫画”は、あなたにどう響くだろうか。
ここまで読んでくださった皆さまに‥
⭐ ファン登録のお願い ⭐
Inclusive Hubの取り組みにご共感いただけましたら、ぜひファン登録をいただけますと幸いです。
このような障害のある方やご家族、その課題解決に既に取り組んでいる研究開発者にインタビューし記事を配信する「メディア」から始まり、実際に当事者やご家族とその課題解決に取り組む研究開発者が知り合う「👀ミートアップ👀」の実施や、継続して共に考える「🤝コミュニティ🤝」の内容報告などの情報提供をさせていただきます。
🔽 ファン登録はこちら 🔽