【日本経済新聞要約・考察】第8回 期待の新星ブティジェッジ撤退、米民主党内分裂深刻に
※本要約・考察は2020年3月2日の日経新聞の記事をもとに書いております。
〈要約〉
初戦のアイオワ州党員集会で勝利をおさめ、新星として期待されていたピート・ブティジェッジ氏が1日、撤退を表明した。「非白人」の有権者から支持拡大が伸び悩み、第3戦以降は票を集めることに苦しんだ。
3日のスーパーチューズデー(14州の予備選などが集中する序盤の天王山)を前に、穏健派候補者の撤退は同じ穏健派のバイデン前副大統領にとっては追い風となる。
ブティジェッジ氏は初戦のアイオワ州に選挙資金や人的資源を集中し、初戦で勝利を飾ることに成功し、2戦目のニューハンプシャーでも2位につけたものの、第3戦の西武ネバダ州党員集会、第四戦の南部サウスカロライナ州予備選で2位以上には入れず、南部サウスカロライナ州予備選では黒人有権者の3%の支持しか得られなかった。加えては、カリフォルニアやテキサスで行われた世論調査では上位争いに関わることができていなかった。ブティジェッジ氏の撤退声明時の「トランプ大統領の打倒に向けて米国民を結束させる手助けをする。2021年1月に新たな民主党の大統領を誕生させるよう全力を尽くす」の発言も穏健派の候補の絞り込みを意識しているのかもしれない。
〈考察〉
今回のブティジェッジの撤退に関する記事では「追い風となるか穏健派支持」「ブティジェッジの今後」そして「穏健派当選のシナリオ」について着目することにした。
1. 「追い風となるか穏健派支持」
第5回日経新聞要約・考察で言及したように、現在の民主党候補者選びでは穏健派と左派での分裂が起きている。投票割合を見ると1位のバイデン氏(27.8%)に次いで2位のサンダース氏(24.8%)に次いで、ブティジェッジ氏(16.7%)とウォーレン氏(10.3%)という選挙構図が存在していたが、本日の撤退によって大きく変わる。
一見分散しているように言える投票割合だが穏健派と左派で見るとバイデン氏とブティジェッジ氏での票割れの影響が見える。サンダース氏とウォーレン氏の代議員の総数は64である一方、バイデン氏とブティジェッジ氏の代議員の総数は74となり10代議員しか差はない。穏健派と左派の存在が対立する中でブティジェッジ氏は戦略的な撤退をせざるを得なかった。3月3日は総数1617人の代議員の取り合いとなる。民主党代表に選ばれるためには1991人の代議員が必要となる中、穏健派で候補者を絞るのは党内対立においては必要不可欠だ。
しかし、面白いことに、民主党予備選有権者13,000人に対して行ったアンケートによるとブティジェッジ支持者のうち21%はサンダース氏を支持すると答え、バイデン氏とウォーレン氏は19%ずつ支持を得る結果となった。(https://morningconsult.com/2020-democratic-primary/)。穏健派であるにも関わらず、支持者の40%は左派候補者に流れる可能性がある。その場合、ブティジェッジの撤退の効力も限定的となってしまう。
今回のスーパーチューズデーの結果によって今後の候補者選びの不透明感も薄れていくのではないだろうか。
2. 「ブティジェッジの今後」
今回の撤退により、上記の穏健派と左派の構図は大きく動くことになるだろう。そして、今後の民主党候補者選びの鍵となるのはサンダース氏でも、バイデン氏でもなくブティジェッジだ。ブティジェッジ氏がどの候補者を推薦するか、そして副大統領として再度選挙活動をするのかが見所となるだろう。
Morning Consultのアンケート結果を見てわかるように、ブティジェッジ氏の支持者層の第二選択肢は分裂している。そんな中ブティジェッジ氏が大手寄付者へのカンファレンスコールでは「the right thing to do, when we looked at the math」(計算すれば正しい選択肢だ)と発言している。その背景にはこの穏健派と左派の構図は大きくあると考えられ、今日明日にもバイデン氏を推薦する動きに出てもおかしくないだろう。Morning Consultのアンケート結果を見てわかるように、ブティジェッジ氏の支持者層の第二選択肢は分裂している。そんな中ブティジェッジ氏が大手寄付者へのカンファレンスコールでは「the right thing to do, when we looked at the math」(計算すれば正しい選択肢だ)と発言している。その背景にはこの穏健派と左派の構図は大きくあると考えられ、今日明日にもバイデン氏を推薦する動きに出てもおかしくないだろう。