ピンチをアドリブで乗り越える技 98/100(CLICK)
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
先日、「表現する技術」というテーマで、企業向けワークショップのテストを行ったのですが、そこで私のワークショップでは必ず行っている「CLICK」というゲームが意外に好評だったので、今日はそれをご紹介しようと思います。
ルールはシンプルなのですが、バリエーションは様々あり、そこから得られるものも多岐にわたる面白いゲームです。
そこには、ピンチに陥った時に役立つ、色々な要素が詰まっています。
私がロンドンで共同主宰していたインプロ(即興)の劇団は、オックスフォード大学卒業生である、演劇学校の同級生と立ち上げたのですが、これは彼がオックスフォードのインプロ部で学んできたゲームです。
発祥は不明ですが、ネットで調べても出てこないので、おそらくオックスフォード大学で発明された独自のものだと思います。
それを、私たちがやり込んで、さらに進化させたものが、今私がワークショップなどのウォームアップ・アイスブレイクとして行っている、「CLICK」です。
まず、指パッチン
はい、パチパチパッチンのアレです。
音、鳴らすことできますか?
できなくても問題ないです。
この指パッチンをクリック(CLICK)と呼びます。
複数名で輪になり、一つのクリックをパスして回します。
ボールというには小さすぎますが、クリックという、ハリポタのクリッチのようなものだと思ってください。
その小さな物体は、指でクリックをすることによって、受け取ることができ、また、クリックすることによって投げることが出来ます。
クリックしてキャッチし、クリックして投げます。
音を鳴らすことができない人でも問題ありません。
なぜかというと、クリックを正確に相手にパスするためには、「パスするよ」「キャッチするよ」というアイコンタクトが必要だからです。
アイコンタクトがあれば、指パッチンのジェスチャーをするだけで、音は鳴らなくても、コミュニケーションは成り立ちます。
あ、ちなみに、今の季節は湿度が高いから鳴らしやすいですよ。
次は、少しハードルを上げます。
クリックの飛行速度に気を配って、その正確性を意識してください。
素早くパスすれば、相手に素早く届くでしょうし、ゆっくり放物線を描いてパスすれば、相手も放物線を描いてキャッチしなくてはいけません。
次のレベルは、これをみんなでランダムに歩きながらやります。
さらにアイコンタクトが求められます。
しっかりと周りの状況に目を配ることができていないと、クリックをキャッチすることができません。
みんなが、視線を避けていると、受け取ったクリックをパスする相手が、なかなか見つからないという状況になります。
常に周りの状況を把握する訓練になるんです。
慣れてくると、このクリック、部屋の端から端まで思いっきりパスすることもできます。
一人でドリブルすることもできます。
床や壁にバウンドさせてパスすることもできます。
秘密のノートみたいにこっそり渡すこともできます。
マイムで、弓矢のようなものを出して、その先にクリックをくっつけて射ることもできます。
想像力次第で、クリックをパスする方法は無限にあります。
また、指パッチンのリズムに気を配ってみるのもいいでしょう。
みんなで心地よいリズムを奏でるのも面白いです。
目には見えない、クリックという何かを、仲間とパスし合うのは、やってみると意外に面白いですし、色々と工夫を凝らせば、あらゆる学びにつながります。
文章で読んでもピンとこないかもしれませんが、やってみると、色々な気づきがある筈です。
まずはお試しを!
もちろん、壁や床を使えば一人でもできますよ。
映画『大脱走』のスティーブ・マックイーンのように。