ピンチをアドリブで乗り越える技 23/100(リトル・ミラクル)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


空間が読めてくる

19/100で、傾聴する解像度を高めるためのエキササイズをご紹介しました。

外に出て、慣れ親しんだ道、例えば自宅から駅の道のりを、歩いてみて下さい。
その時、幼い子供のような気持ちで、目に入るすべてのものを新鮮に見て色々と発見しながら歩いて下さい。
もし心動かされたら、しっかりとそれに向き合って下さい。

https://note.com/the_corridor/n/ne0977e52cc6f

これ、どうですか?試してみましたか?

今日は、このエキササイズの目的からお話しします。
そういえば、イギリスの演劇学校では、エキササイズや授業の目的は教えてくれません。
聞くと、毎回はぐらかされます!

慣れるまで結構歯がゆいのですが、これは頭でっかちになることを避けるためだと思われます。「これを学ぶ」と事前に知ってしまうと、深いところに刺さっていなくても「分かった気になってしまう」危険性があります。

同様の理由から、メソッドやエキササイズの名前、ラバンとかマイズナー、スタニスラフスキーまで、特に固有名詞を教わることなく、内容だけ習う、という話は以前したような気がします。

また話がそれましたが、「新鮮な目で見て歩く」エキササイズの答え合わせでしたね。

どうですか?何か発見はありましたか?

知ってるはずの道のりにも、新鮮な気持ちで注意深く観察することによって、新しいものが見えてきませんでしたか?

このエキササイズの目的は、詰まるところ、それだけ、です。

見慣れた風景も、新鮮な目でみることによって発見があります。注意深く、オープンな目で見れば、この世界はあらゆる表情を見せてくれます。

これは、台本を読み込むときも同じです。17/100でお話しした深化です。同じ台本でも、何度も違った角度から新鮮な気持ちで読み込むことで、最初は気が付かなかったことが見えてきます。

これって、音楽も同じじゃないですか。お気に入りの曲を何度も繰り返し聴いていると、聞こえてなかった音が聞こえてくる。あの感覚と同じです。

日常的に、物事を新鮮な目で見てみる癖をつけておくと、みる解像度が上がって鍛えられます。

これこそ、ピンチに陥った時に一番大事なツールかもしれません。

自分ごとから離れて周りに傾聴をすると言ってきましたが、その実はこの解像度にあります。
状況がクリアに見えていなくては、解決策も出てきません。独りよがりで出てきた解決策は単なるマスタベーションかもしれません。(7/100参照)

ほら、だんだんと話がつながってきましたね。
点と点が線となって、面となっていきます。

でも、まだ100回連載の4分の1にも到達してないんですよね…大丈夫か?

今日はもう一つ、8/100でご紹介した『ヘリコプター理論』と同じライフ・スキルの授業で学んだ、私が日常的に使うものをお教えします。

特に急いでいるわけでもなく、いつものように駅の改札を通り、ホームに着く。すると、ちょうど列車が入ってきました。乗りたかったやつです。

すごい!

奇跡です!

これを、『リトル・ミラクル(小さな奇跡)』といいます。

ただタイミングが良くて、列車が来ただけ、そうかもしれません。でもこれって奇跡だ、と思う方がお得だということです。
「たかがそれ如きで…」はい、それだけのことです。
でも、その状況を普通のこととして流してしまうのではなく、傾聴し、受け止め、ラッキー!と思う。これが大切だと習いました。

日々、『リトル・ミラクル』を発見できるようにしていると、傾聴する癖がつくし、豊かな気持ちになります。
冒頭の、新鮮な目で歩くだけのエキササイズにもつながる感覚ですよね。

イギリスの演劇学校では、なぜこの手のことをあらゆる角度から教えるのでしょうか?

ひとつには、表現者として傾聴し、深化しすることの大事さを学ぶ、というのがあると思います。

もうひとつは、役者として生きる日々って困難に陥りやすいからかもしれません。スランプになったり、絶句したり、そんなピンチな状況はいくらでも起こります。そんな時に、マイナス思考に陥らずに、目を開けて、プラスに捉える癖をつけるためだったのかもしれません。

まあ、正直それでもマイナス思考になることはありますよ!でも、演劇学校で教わったことに助けられてると思うときも多いです。

そういえば、『キャンセル・アンド・コンティニュー』っていうのもありました!

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