ピンチをアドリブで乗り越える技 86/100(スピーチ3 -原稿)
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
昨日に引き続き、スピーチに関するお話し3回目です。
昨今のスピーチは、壇上を左右に行ったり来たりしながら話す、欧米のスタイルが主流となっているかと思います。
でもこれって、日本語でのスピーチ、いや、日本的なスピーチとして相応しいかの検証をしていきたいと思います。
まず、なぜ左右に歩き回るのか?
元々は壇上に演台があり、その後ろで話すというのが、普通であったと思います。
しかし、これは演者と観客との間に障害物というか、一種のバリケードを作ってしまうので、距離が遠く感じられる、という弊害があります。
また、演台の後ろに立つというのは、一種の威厳を表すことが出来ますが、親しみやすさが失われてしまいます。
今でも、各国政府関係者の正式発表の時は、演台が用いられますよね?
大学などの講義でも、使う人が多いと思われます。
見た目だけでなく、演台を使うと、ジェスチャーに困りません。手を台に置くことができるので、手持ち無沙汰な感じを覚えずに済みます。
また、下半身が隠れるので、演者側としても安心感が生まれ、胸部から上をどう見せるかだけを、気にしていれば大丈夫です。
これは、着席で前に机が置かれている時も同じです。
もちろん実用的な側面も重要です。
台本や、パワポのためのパソコン、水、資料などを置いておくための場所として、演台や机が必要な場合もあるでしょう。
しかし、これを多用していると、どうしても目線が台本に行きがちで、下がってしまいます。
この台本に目線が下がる問題を、撤廃した人物として衝撃的だったのが、アメリカのオバマ前大統領です。
左右に設置した透明なアクリル板に、スピーチ原稿を投影させ、観衆の方を常に見ながらスピーチをする姿は印象的でした。
良し悪しではなく、なぜ使うのか?ということを考えなくてはいけないと思います。
次に、テック業界で主流になってきたのが、左右を歩き回るスタイルでしょうか?
これは、発表を単なる記者会見と捉えるのではなく、一種のステージパフォーマンスとして捉えた結果だと思います。
原稿は暗記している場合がほとんどなようですが、なかには、小さなイヤホンをつけておいて、そこからセリフをもらうというパターンもあるようです。
可能なスペースがあれば、どこか演者の目に入る位置にテレプロンプターを設置するというパターンもあります。ニュースキャスターが読み上げるような、あれです。
余談ですが、昨今は役者のオーディションもリモートなことが多いです。自宅で自分の演技をビデオに撮り、それをプロダクションに送ります。
今までは、対面のオーディションばかりだったので、セリフは必ず覚えていなくてはいけなかったのですが、この手法が主流になってからは、台本を印刷してカメラの周辺に貼ったり、テレプロンプターのアプリを利用したりして、オーディションテープを撮る役者も多いです。
その時に、目線がいかにもカンペを読んでいるように見えないように、気をつけたりするのですが、今でも重要なオーディションはちゃんと暗記をして挑みます。
ちゃんとセリフが頭に入っている演技と、カンペを見ながらの演技には、やはりどうしても大きな違いが出てしまうからです。
以前お話しした通り、狂言師には能の演目の中で、7−15分程度、延々と一人語りをしなくてはいけない、間(アイ)という役割があります。
もちろん、ただひたすら暗記をして、一字一句間違えないようにしなくてはいけません。型も決まっていて、ほぼ微動だにせずに語らなくてはいけないので、カンペを置く場所もありませんし、イヤホンをつけるわけにもいきません。
面(オモテ)と呼ばれる仮面をつけることもたまにあるので、その時は仮面の裏にカンペを貼っておきます。
と、いうのは、もちろん嘘で。
目からの距離が近すぎて焦点が合わないし、暗すぎます。そして何よりも、面というのは非常に大切なものなんで、そんなものを貼るなんて考えられません!
それでも、いつかもし、近い将来、コンタクトレンズ型のスクリーンが開発されたら、是非それを利用したいと、みんな密かに思ってると思います。
たぶん
また左右に動き回るスタイルについて話せてませんね…明日に持ち越します!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?